日常を脱ぎ捨て、自然に囲まれた懐かしの学び舎へ
「自然の中で子どもを思いきり遊ばせたい」
「週末くらいは、日常を少しだけ離れてリフレッシュしたい」
そんなふうに感じたとき、ぜひ訪れてほしい場所があります。
東京から車で約2時間。茨城県北部の常陸太田市金砂郷(かなさごう)地区にある体験交流施設「かなさ笑楽校(しょうがっこう)」です。
廃校になった旧小学校を活用したこの施設では、里山の豊かな自然を舞台にした体験プログラムや地域の恵みを味わう食体験、そして誰もが一度は憧れた「学校に泊まる」という特別な時間を楽しむことができます。
遊んで、食べて、笑って過ごすうちに、気づけばまた訪れたくなる——そんな常陸太田の1日を満喫してきました。

133年の歴史を刻み2008年に閉校した旧金砂小学校。2011年に体験交流施設「かなさ笑楽校」として生まれ変わった。
泊まれる学校「かなさ笑楽校」の1日体験レポート
10:00|プリチェックイン
使い込まれた下駄箱に靴を預け、上履きに履き替えて校舎の中へ。その瞬間から、時計の針がゆっくり巻き戻るような感覚に包まれます。
迎えてくれたのは、同施設の管理・運営を担う“校長”こと本田純平さん。
本田さん「ここは、かつて子どもたちの笑い声が響いていた場所。当時の面影がそのまま残っているので、子どもたちは学校に泊まる非日常感にワクワクし、大人の方にはご自身の学生時代を思い出すようなノスタルジックな時間を過ごしていただけると思います」

校長の本田純平さん。2020年から、本田さんが所属するNPO法人ボディプロダクツが管理・運営を行っている。

旧昇降口がフロント代わり。
本田さんの案内で、さっそく校内を見学。黒板や木製の机・椅子、廊下の手洗い場など、あちこちにかつての学び舎の姿が留められています。
客室は、元教室を活用した和室や洋室など全12室。最大84名まで宿泊可能で、家族利用はもちろん、グループ旅行やスポーツ団体の合宿などにも利用されているそうです。
図書室にはWi-Fiも整備されており、ワーケーションにも最適。体育館ではボルダリング、広々とした校庭ではグラウンドゴルフ、音楽室ではカラオケやeスポーツが体験できるなど、校内中にさまざまな楽しみが詰まっています。
これから始まる1日に、期待が自然とふくらみます。

校内マップと周辺の観光施設を紹介する案内看板。近年ではこの施設を拠点とし、移住の下見に訪れる人もいるという。
11:00|常陸太田発祥、「常陸秋そば」の手打ち体験
まずは昼食に向けて、そば打ち体験からスタート。
ここ常陸太田市は、全国的にも評価の高い「常陸秋そば」の発祥の地として知られるそば処です。
そばの実は「玄そば」と呼ばれる黒い外皮をつけた状態で収穫され、香りが豊かで色が濃いのが特徴。その中でも最高峰の品種といわれるのが、常陸秋そばです。

図工室で楽しむそば打ち体験。そば粉7割、小麦粉3割の配合。
おいしいそばが育つ背景には、この地域ならではの自然環境があります。水はけのよい山の斜面を活かしたそば畑、そして昼夜の寒暖差が大きい気候。こうした条件が、香り高く風味豊かなそばを育てています。
粉に水を加えて生地をこねる作業は、想像以上に力のいる本格的な工程。地元のそば打ち名人のレクチャーを受けながら、少しずつコツをつかんでいきます。

市内には30店ほどのそば屋があり、おすすめを聞いて次回訪れてみるのもよさそう。
12:00|実食。手打ちならではのコシと風味を堪能
打ちたてのそばを茹で上げ、いよいよ実食。
一口すすると、そばのやさしい香りがふわりと立ち、噛むほどに深い味わいが広がります。
「新そばの出回る11月頃は、さらに格別ですよ。色がほんのり緑色で、味も香りも一段と濃くなるんです」と本田さん。
さらに、そば打ち体験では、竹を使ったそば猪口や箸づくりも楽しめます。手作りの器と箸で味わうそばは、きっといつもより特別な一杯になるはずです。

打ったそばは持ち帰りもできるので、旅のお土産にもぴったり。
13:30|里山の静けさに浸る、図書室でのひと休み
おいしいそばでお腹を満たした後は、図書室でゆったりと過ごします。
書架には小学生向けの児童書のほか、小説、哲学書、地域の情報誌や観光ガイドまで、多彩な本が並びます。Wi-Fiも利用できるため、リモートワークに集中したり、ガイドブックを広げて旅の計画を練ったり、思い思いの時間を過ごせます。
里山に包まれた静かな図書室で、本を読みながらゆっくりと流れる時間に身をゆだねる。そんなひとときも、かなさ笑楽校ならではの魅力です。

ブックカフェのような雰囲気の図書室。
14:00|遊び心あふれる宿泊空間
いよいよ客室へ。各部屋の入り口には「○年○組」のプレートが掲げられています。
2段ベッドを備えたスタンダードルームのほか、大人数で過ごせる広めの部屋もあり、どちらもリーズナブルに泊まることができます。
ホテルのデスク代わりにあの懐かしい学習机が置かれていたり、今にもチャイムが聞こえてきそうな校内放送用のスピーカーをあえて残していたりと、遊び心のある演出も。
大きな窓から光が差し込む、明るく開放的な空間です。

宿泊部屋は全12室。間取りや設備はそれぞれ異なり、洋室・和室・和洋室の3タイプから選べる。
14:30|体育館と校庭でスポーツアクティビティ体験
続いて、楽しみにしていたボルダリングを体験しに体育館へ。
ステージ上には3面のボルダリングウォールが設置され、初心者から上級者まで自分に合った難易度にチャレンジできます。
本田さんにコツを教えてもらいながら挑戦してみると、初級ルートは初心者でも意外とスムーズにクリア。少しずつ上へ登っていく達成感があり、大人でも夢中になる楽しさ!


次はスラックラインに挑戦。
細いラインの上でバランスを取りながら体を動かすスポーツで、体幹が試されます。一歩踏み出すだけでも難しく、しゃがもうとするとさらにバランスが崩れてしまい、思わずこぼれる笑い声が館内に響きます。

ラインが揺れるため、体全体のバランス感覚や体幹、集中力が鍛えられる。
さらに校庭へ出て、グラウンドゴルフも体験。シンプルなルールながら、ボールを思った通りの方向に打つのは意外と難しく、コントロールの奥深さに四苦八苦。
それでも、自然に囲まれた開放的な校庭で体を動かす時間は、とても爽快です。

広い空の下でのびのびとプレイ。
16:30|夕暮れとともに始まるBBQ準備
日が少しずつ傾き始め、あたりが柔らかな夕色に染まってきました。「そろそろお腹も空いてきたね」なんて話しながら、お楽しみのBBQの準備を始めます。
夕食は「常陸秋そば定食」などの各種定食やお弁当なども選べますが、今回は一番人気のBBQをチョイス。
キャンプに慣れていないと少し不安なのが火起こしですが、スタッフの方がサポートしてくれるので安心。炭に火が入り、焼き網や鉄板の準備が整うと、いよいよ夕食の時間が近づいてきます。

地元食材を取り入れたBBQ。必要な機材はすべてレンタル可能。
17:00|香ばしい香りに包まれる、地元食材のBBQ
焼き網の上には、鶏・豚・牛のお肉が並び、さらに玉ねぎやピーマン、かぼちゃなど彩り豊かな野菜もたっぷり。茨城県産の食材を中心に、時期によっては地元・常陸太田で採れた旬の味覚も楽しめます。
ジュウジュウと焼ける音と香ばしい香りに食欲がそそられ、箸がどんどん進みます。



そして最後の〆は、焼きそば。お肉と野菜で十分満足していたはずなのに、ソースの香りに誘われて、ついつい手が伸びてしまうのは「BBQマジック」でしょうか。
大自然に包まれながら、地域の旬を味わう贅沢な時間を楽しみました。
19:30|湯船に浸かり、身体をほぐす
夕食の後は、お風呂でゆっくりと体を休めます。
団体利用も多い施設のため、浴室は広々としており、足を伸ばしてゆったりと湯に浸かることができます。1日遊びつくした疲れも、温かい湯に包まれると次第にほぐれていきます。
20:00|夜のレクリエーション
一日の締めくくりは、音楽室で。
カラオケやeスポーツの設備が整っており、周囲を気にせず思いきり歌い、大画面でゲームを楽しみながら、にぎやかな時間を過ごしました。

高い防音性を備えた音楽室。ピアノも自由に弾くことができる。
21:00|就寝
日中は思いきり遊び、地元の食材を味わい、夜は校舎で仲間と過ごす。こんなにワクワクした気持ちで、ちゃんと眠れるのだろうか…。そんなことを思いながら、里山の静寂に包まれた校舎の中で、いつの間にか深い眠りについていました。
季節を変えて訪れる楽しみ。里山の自然を味わう体験の数々
かなさ笑楽校では、今回ご紹介したプログラム以外にも、里山の自然を満喫できるさまざまな体験が一年を通して用意されています。
通年楽しめるものとしては、地元の竹を使った幻想的な「竹灯りづくり」や、敷地内で集めた自然素材をあしらう「木製フレームづくり」など、旅の思い出を形にするクラフト体験が人気。校庭ではキャンプ泊を楽しめるほか、宿泊者限定の「天体観測」では、都会では見ることのできない満天の星空が特別な夜を演出してくれます。



季節ごとのアクティビティも豊富です。
5月にはたけのこ収穫、7月から9月にかけては、校舎から歩いて15分ほどの浅川での川遊びや、魚のつかみどりが楽しめます。さらには、昔ながらのドラム缶風呂の入浴体験も。
本田さん「魚のつかみどり体験では、捕った魚を地元の人がさばいて、塩焼きにしてくれます。たけのこ収穫では、地元農家さんの竹林でコツを教わりながら旬のたけのこ掘りを体験できます。地元の方と触れ合うことで、この地域のことを知り、また訪れてもらうきっかけになればうれしいですね。今後も地域の自然に触れられる体験を増やしていきたいと考えています」

夏場は浅川での川遊びも人気。
常陸太田の奥深さに触れる入口、かなさ笑楽校
どこか懐かしい里山の風景のなかで過ごした1日。日常から少し離れ、童心に帰るような時間を過ごせたかなさ笑楽校での体験は、五感を通してしっかりと心に刻まれました。
校長・本田さんからのメッセージ
「当校では、夏の川遊びや秋の紅葉、新そばなど、この土地・この季節ならではの体験が楽しめます。日帰り利用も可能ですので、まずは常陸太田を知るきっかけとして気軽にお越しください。『また来たい』と思えるような思い出を持ち帰り、常陸太田を“お気に入りの場所”として心に留めていただけたら嬉しいですね。また、この地域には6年に一度開催される西金砂神社の小祭礼もあります。観光なら、全長375メートルの竜神大吊橋や、806年建立の西金砂神社・東金砂神社を訪れるのもおすすめですよ」

「地域の方とのコミュニケーションを大切にしながら、常陸太田の魅力を伝える場にしていきたい」と本田さん。
訪れる時期や宿泊数によって、また違った常陸太田の魅力に出会えそうです。
一度の訪問では味わいきれない奥深さを感じ、早くも「次の季節」が待ち遠しくなりました。
金砂ふるさと体験交流施設「かなさ笑楽校」
所在地:茨城県常陸太田市下宮河内町820
アクセス:
【東京方面から】那珂インターで降り国道118号より常陸太田方面へ車で30分
【東北方面から】日立南太田インターで降り国道293号より常陸大宮方面へ車で30分
TEL:0294-76-9899(受付時間 9:00〜17:00)
休校日:火曜日
公式サイト:https://kanasahurusato.jp/
インスタグラム:@ kanasahurusato

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取材・文:足立拓哉 撮影:渡部 聡