埼玉県に移住したひと、まちを盛り上げるべく活動するキーパーソンを紹介する埼玉ものがたりの連載。
今年度、自然・アウトドア、子育て・教育、場所やコミュニティづくりの3つのテーマと、比企地域、秩父地域という2つの地域の合計5つのカテゴリに分けて、埼玉移住のサポートメンバーを紹介しています。
今回は「場や拠点をつくり、人と地域を繋ぐ」をテーマに、埼玉県内でシェアスペースやコワーキング施設などの人が集まる場所を運営している5名のキーパーソンをゲストに、2022年2月に開催したオンラインイベント『埼玉移住リレートーク』の内容も踏まえてお伝えします。
まちの余白にフォーカスして、場所に新たな役割を与えていく
JR高崎線で東京駅から60分ほど。大宮駅を通りすぎて、車窓の景色に少しずつ緑が増えてくると、北本駅に着きます。北本市は、いわゆるベッドタウンの街並みが広がるまちですが、まちなかには雑木林や畑が点在していて、荒川沿いに行けば昔ながらの里山風景も広がる、身近に緑を楽しめるまち。そんな北本市は『& green』をコンセプトに、シティプロモーションを展開しています。
北本市出身の江澤勇介さんは、まちづくり会社『暮らしの編集室』のメンバーの一人で、北本市役所と連携しながら北本市内の暮らしや日常を楽しめる仕掛けや場づくりを行なっています。
「ケルン」をご案内いただいた、江澤勇介さん
「北本市は “なにもない” と言わることが多いし、自分自身もなにもないと思って育ってきました。だけど、”なにもない” なら自分で作ればいいと思いはじめて、シェアアトリエの運営やマルシェなどのイベント企画をやるようになってから、少しずつまちを楽しめるようになってきました。
今は、空き店舗を活用したシェアキッチン『ケルン』の運営や、北本市役所にある芝生広場で月1回のマーケットを開催したり、北本市・UR・良品計画と共同で行っている『北本団地』の再生プロジェクトなどに携わりながら、まちの余白を見つけて暮らしや日常に還元することを日々続けています。」(江澤さん)
次々と新たなプロジェクトが生まれ、日常や暮らしの楽しさを充実させている江澤さん。北本団地には、2022年春に日常的にワークショップやものづくりが楽しめる『まちの工作室』も新たにオープン予定。今後も目が離せません。
暮らしをちょっと楽しくする仕掛けが、まちに新たな光を灯す
埼玉県北部にある本庄市は、旧中山道の宿場町だった面影を残す商店街や長屋、蔵といった建物が多く、どこか懐かしい街並みと迷路のような路地散策が楽しめるまち。
そんな本庄駅近くの商店街にあった築100年の元料亭の建物を改修し、拠点として活動しているのが『本庄デパートメント』の榎本千賀耶さんと早川純さんの二人。ともに市外からの移住者で、子育てしながら本庄市での暮らしを楽しくする仕掛けを創り出しています。
「私は古い建物や街並みが大好きで。今住んでいる場所も商店街の一角にある長屋を自分たちでDIYしました。商店街には、八百屋さんやお肉屋さん、豆腐屋さんなど古くから続くお店がまだ残っていて、本庄に移住してから『誰がつくっているものか、誰から買うのか』という視点を意識するようになりました。
子どもが生まれてからは、まちの人たちの顔が見える環境で暮らせることの安心感を感じていますね。そんな本庄のちょっと楽しい暮らしを色んな人に知ってもらいたくて、商店街を拠点に色々な取り組みを、無理せず楽しく仕掛けていきたいと思ってます。」(榎本さん)
写真左から、早川純さんと榎本千賀耶さん
「僕たちが運営している拠点『WORK+PARLOR』は、カフェとしてお茶を飲みに来る人も、コワーキングスペースとして仕事をしに来る人も、スペースを分けずに同じ空間の中で過ごしてもらっています。色んな人が気軽にフラっと立ち寄ってもらうことで、そこから新しい出会いや繋がりも生まれる。そんな “まちの玄関口” のような場所を目指しています。」(早川さん)
いつも楽しそうな情報を発信している本庄デパートメントのもとには、移住や空き家に関する相談も続々と届いているそう。本庄市が気になった人は、まずは美味しい珈琲とクリームソーダを飲みに、本庄デパートメントの二人をぜひ訪ねてみてください。
自分とまちが繋がる仕事を創り、誰もが主役になれる場所
東武スカイツリーラインの「東武動物公園駅」から徒歩4分。杉戸町の遊休公共施設を活用して2021年7月に誕生した『しごと創造ファクトリー ひとつ屋根の下』は、杉戸町出身で2014年にUターンした矢口真紀さん率いる「choinaca (ちょいなか) 合同会社」が運営しています。
“まちの資源を活かして自分の仕事を創り、まちと関わっていくための実験の場” として、しごとづくり課・ものづくり課・デザイン課の3つのカテゴリーで仕事を生み出すためのプログラムが展開され、メンバーになると拠点を活用してお試し出店ができたり、定期的に開かれるマルシェイベントに携わったり、地域と関わり自分の仕事を生み出していく仲間のコミュニティが広がっています。
写真前列中央が、矢口真紀さん
「都内で仕事をしていた時は、自分が主役になれることなんてなかったんです。でも、杉戸町なら誰もが主役になれるし、自分次第で新たな仕事も創り出していける。地域で自信を持って楽しく活動する人が増えることで、自分も周りも楽しくなって、結果的にまちも盛り上がっていくんだと思います。」(矢口さん)
choinacaは、小さな創業を実践するための講座『月3万円ビジネス(通称:3ビズ)』というプログラムも展開しており、その卒業生は現在260名にもなっているそう。まちと関わりながら自分の仕事を創り出していく3ビズメンバーの輪は、杉戸町だけでなく埼玉県内外に広がり、次々に自分自身やまちに化学反応を起こす人が増えています。
地元民も観光客もフラッと立ち寄れる、まちの拠点づくり
“小江戸” として親しまれ、多いときには年間700万人もの観光客が訪れるまち・川越市。そんな川越市の中心地、蔵造りの街並みの一角にある築100年を超える古民家をリノベーションして生まれたゲストハウス『ちゃぶだい Guesthouse、Cafe&Bar』は、”ちゃぶ台を囲んで人々が集い語らえる場所” として、まちと人を繋げる拠点になっています。
2016年に川越市が開催した、空き家を活用した事業創出プログラム『まちづくりキャンプ』がきっかけとなり出会った3名で運営する『ちゃぶだい』。運営者のひとりである田中明裕さんは、建築士として都内にオフィスを構えながら、自宅のある日高市と川越市の3拠点を行き来し、主に裏方的な立ち位置でちゃぶだいに携わっています。
ちゃぶだいを運営する3人のメンバー。写真左が、田中明裕さん。
「コロナ禍になって、宿泊業として打撃を受けている部分は大きいですが、毎月最終日曜日には『LAST SUNDAY MARKET』として地元の農家さんの野菜やパン・お菓子などが買える “市(いち)” を開いたり、”ものを大切にする暮らし” を提案していこうと、計り売りや靴磨きのワークショップなども定期的に開催して、宿泊以外のお客さんや地元の方にも気軽に立ち寄ってもらえる機会を増やしています。
宿泊機能だけでなく、カフェ・バーだったりイベントだったり、色々な機能を持たせることで、ちゃぶだいを通して川越のまちを楽しんでもらえれば、必ずしも泊まらなくても “まちやど” 的な役割を果たせるし、それが結果的に場所を運営し続けることにも繋がると思うんです。」(田中さん)
場をつくるためには、ひとつの機能に囚われる必要はなく、そのまちや関わる人たちが “これがいい” と思えるものを続けていくことが、大切なのかもしれません。最近では、新たにシェアハウスも創っているとのことで、更に川越のまちを楽しむ人たちが “ちゃぶだい” の周りに集まってきています。
空き家をシェアすることで、人とまちが繋がっていく
池袋駅から西武池袋線の急行電車で約45分の飯能駅。最近では、ムーミンバレーパーク『メッツァ』などのスポットが続々オープンし、都内から気軽に遊びにいけるまちとして注目を集める場所です。
そんな飯能市出身の赤井恒平さんが、実家の元工場を活用して生まれたのが、シェアアトリエ『AKAI Factory』。赤井さんの “アートに関する場にしたい” との想いに賛同したクリエイターや作家さんが集い、入居者自らがDIYで少しずつ改装しながら、現在は8組のアーティストがそれぞれに製作活動を行なっています。
「AKAI Factoryの他にも、地元の仲間と5人で株式会社Akinai(あきない)を立ち上げ、まちの玄関口として『Bookmark』というシェアスペースの運営も行っています。また、最近はもう一軒、商店街にある古民家をリノベーションして『NAKACHO7(ナカチョウセブン)』という個室型のコワーキングスペースもオープンしました。
まちなかには、まだまだ空き家や空き店舗がたくさんあって、活用できる物件もたくさんあります。持ち主である大家さんの想いもあるので、簡単に使わせてもらえるわけではないですが、まちにこういったスペースが増えていくことで、まちを訪ねてくれる人も増えるし、住んでいる人との新たな出会いも生まれてきました。飯能市は自分のやりたいことを実現するフィールドとして、チャレンジしやすい場所だと思うので、空き家を使って何かしたいと思う人が、増えてくれたら嬉しいですね。」(赤井さん)
自分たちに出来ることを考え、小さくても長く続く仕組みを作りながら、場を運営し続ける赤井さん。2021年の春からは飯能市周辺の暮らしや魅力を紹介するメディア『はんのーと』も運営しているそう。
ぜひ『はんのーと』をチェックしながら、飯能のさまざまな拠点を訪ねてみてください。
記事で紹介した場や拠点を運営する5名をゲストに開催したオンラインイベント『埼玉移住リレートーク vol.1』の様子は、下記よりご覧いただけます!
イベントでは、場や拠点を運営するメンバーならではの意見や想いが飛び交いました。ゲストが共通して話していたことは、暮らしの延長として、自らが楽しむために場をつくったりイベントを企画することが、結果的に周りの人やまちが盛り上がる機会にも繋がっていくのではということでした。
埼玉の人たちはよく “なにもない” と言うけれど、その “なにもない” は、裏を返せば “なんでもできる” とも言い換えられ、それだけまちに余白があることが埼玉県の魅力だと改めて感じました。埼玉でなら、背伸びせずにやりたいことが叶えられて、誰しもが主役になれる。だからこそ、やりたいことがあれば、まず動き出すことが必要なのかもしれません。
何から始めたらいいか分からないという方は、今回登場いただいたゲストの拠点やまちにぜひ遊びに行ってみてください。始め方のヒントがきっと見つかるはずです。
\埼玉で場所をつくることに興味が湧いたら…/
埼玉移住サポーターの皆さんに会いに行ってみませんか?①江澤勇介さん/暮らしの編集室
北本市出身の江澤さんは、カメラマンとして活動する傍ら、市役所と連携してまちづくりを行う「暮らしの編集室」のメンバーの一人として、シェアキッチン『ケルン』の運営や北本団地再生プロジェクトに携わる。また、埼玉県内の公園などを活用し、マーケットイベント『縁側日和』や『NEW HORIDAY』の企画運営なども行なっている。
次々と新たなプロジェクトが生まれている北本市。2020年から開催されている『マーケットの学校』では、市内外の人が関わり、北本市役所前の芝生広場で開催される⽉イチのマーケット『&green market』を実践の場として参加者が主体的に取り組んでいます。北本市が気になった人は、ぜひ一度『&green market』に遊びにきてください!
シェアキッチン『ケルン』/暮らしの編集室
埼玉県北本市中央1-109-105
http://kitamotokurashi.com/
「ケルン」のInstagramはコチラ
②榎本千賀耶さん・早川純さん/合同会社本庄デパートメント
2019年に川口市から本庄市へ移住した榎本さんは、古い商店街の一角にある築80年の長屋をDIYでリノベーションし、1歳のお子さんと夫婦3人で住みながら、土間のある長屋暮らしの日常をInstagramで発信している。2021年6月には、同じく本庄市に移住してきた早川純さんらと共に合同会社本庄デパートメントを設立。カフェ+コワーキングスペース『WORK+PARLOR』を運営しながら、”本庄あたりの暮らしを楽しくする” 仕掛けを企画している。早川純さんは、公務員を経て独立。2021年6月から合同会社本庄デパートメントの一員として、まちづくりに携わっている。
『WORK+PARLOR』では、建築士でありバリスタとしても活動する榎本さんが淹れてくれる美味しい珈琲や、オリジナルシロップで作るクリームソーダが味わえます。コワーキングスペースとしても利用できるので、まずはフラッと立ち寄ってみては?
カフェ+コワーキングスペース『WORK+PARLOR』/本庄デパートメント
埼玉県本庄市銀座2-2-1
https://honjo-department.com/
「本庄デパートメント」のInstagramはコチラ
③矢口真紀さん/choinaca合同会社
杉戸町出身の矢口さんは、2014年にUターンし、地元の仲間と共に「choinaca (ちょいなか) 合同会社」を創業。小さな創業を実践するためのプログラム『月3万円ビジネス(通称:3ビズ)』を企画し、東武スカイツリーライン沿線の市町を中心に埼玉県内外で活動している。2021年7月には、杉戸町の遊休公共施設だった建物を活用し『しごと創造ファクトリー ひとつ屋根の下』をオープン。ここを拠点に、まちと人を繋げる取り組みを仕掛けている。
『ひとつ屋根の下』は、”自分とまちがつながる仕事を創造できる場所” がコンセプト。地域に関わり小さくても自分の仕事をはじめたいと考える人は、ぜひ『ひとつ屋根の下』を訪ねてみてください。きっと、仕事を創り出すヒントが見つかるはずです。
『しごと創造ファクトリー ひとつ屋根の下』/choinaca合同会社
埼玉県北葛飾郡杉戸町杉戸3-9-16
https://www.hitoyane.org/
「ひとつ屋根の下」のInstagramはコチラ
④田中明裕さん/ちゃぶだい Guesthouse、Cafe&Bar
日高市出身・在住の田中さんは、リノベーション会社を東京都内で営みながら、川越市を拠点に活動する「株式会社80%(エイティーパーセント)」の一員として川越市のまちづくりに携わったり、自身が設計をした『ちゃぶだい Guesthouse、Cafe&Bar』の運営メンバーとしても活動中。また、2021年5月からは地元の日高市に新しく誕生したワーケーション施設『CAWAZ base』の運営にも携わっている。
『ちゃぶだい』は、ゲストハウスとして宿泊するのはもちろんのこと、フラッとお茶をするカフェとして利用したり、イベントに参加したりと、さまざまな形で関われる機会があります!毎月最終日曜日に開催される『LAST SUNDAY MARKET』もおすすめ。ぜひ、小江戸・川越の街並みを楽しむとともに、ちゃぶだいにも遊びにきてください。
『ちゃぶだい Guesthouse、Cafe&Bar』
埼玉県川越市三久保町1-14
https://chabudai-kawagoe.com/
「ちゃぶだい」のInstagramはコチラ
⑤赤井恒平さん/AKAI Factory
飯能市出身の赤井さんは、実家の元工場を活用したいと、知り合いのクリエイターや作家に声をかけ、2016年にシェアアトリエ「AKAI Factory」をオープン。また2017年には、地元で活動する仲間5人と共に、株式会社Akinai(あきない)を立ち上げ、飯能銀座商店街の空き店舗を活用し『Bookmark』や『NAKACHO7(ナカチョウセブン)』などのシェアスペースも運営している。
新たなレジャースポットも続々オープンし、最近なにかと注目の飯能市ですが、駅前の商店街は昔ながらの古い建物や味わいのあるお店が残っています。赤井さんが運営する拠点も、すべて駅から数分の場所にありますので、ぜひ散策してみてはいかがでしょう。
シェアアトリエ『AKAI Factory』
埼玉県飯能市柳町25-9
https://akaifactory.wixsite.com/home
「AKAI Factory」のInstagramはコチラ
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