TURNSが企画した、埼玉北部でのお試し移住体験企画。第2段は、「さすらいのコーヒー焙煎士」という名前で活動しているフリーランスの珈琲屋さんに、1日出店いただいた体験ブログをお届けします。
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「埼玉県北部」と聞いて、どんな印象をお持ちになりますか?どんなまちがあるのか、名産品は何なのか、有名なお祭りは、出身有名人は誰か…。
正直、僕は現地へ行くまで、何一つイメージが思い浮かびませんでした。悪く言えば無知、良く言えば色眼鏡のない場所との出会い。結論から言えば、田舎の大らかさと都会の賑やかさがうまく同居した、移住向きな地域だと感じました。そんな現地での体験記をつらつらと書いていきます。
まず簡単な自己紹介を。”さすらいのコーヒー焙煎士” という肩書を名乗り、首都圏を中心に様々な場所でコーヒーを淹れたりイベントに出たり、コーヒー豆を売ったりということを生業としています。18歳まで秋田県横手市という豪雪地帯で育ち、大学進学を機に上京。以来、東京都調布市に12年以上住んでいます。音楽、料理、ロードバイク、飲酒が趣味で、特にお酒とは相思相愛の仲(笑)
というわけで、今回は名所などに行くことは極力控え、もし実際に住んだら足繁く通いたくなる場所を探してきました。
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人情味ある、熊谷のお店と人々。
初日に向かった先は熊谷市。熊谷駅を降りてアテンドいただく大橋さんとご挨拶。自己紹介もそこそこに、まずは何か昼食を食べましょうとのご提案。
大橋さん「うどんとフライのどちらかにしようと思うのですが」
夏井 「フライ…?」
大橋さん「そうか、フライ知らないですよね!このあたりで昔から食べられてる…」
夏井 「フライで!」
食べ物への興味関心が人一倍強いので、知らない郷土料理には目がありません。フライ一択。
ここでいうフライは、小麦粉と水で作ったモチっとした生地にキャベツや豚肉などを挟んで焼き、上にソースとマヨネーズ。生地感の強いお好み焼きのような食べ物でした。
溢れ出るB級感に、ビール欲を抑えるのが大変…。
昼食後は駅周辺をふらふらと散策しながら、カフェ巡り。「ホシカワカフェ」で飲んだケニアのコーヒーに舌鼓を打ったのち、駅前のビル内にある「プレイスコーヒー」へ。“地域の魅力が集まるカフェ”をコンセプトに掲げており、ここを拠点に活動する地域の方も多いそう。「そこに行けば誰かに会える」という場所があるのは、これから移住する人にとってもありがたい存在だと思います。
プレイスコーヒーさんを後にして、熊谷市内を100円で巡る「ゆうゆうバス」に乗り約10分。手島停留所からほど近くにある本日の滞在場所「THE PUBLIC」に到着です。ここの運営をされている尾崎さんと櫻井さんにご挨拶して、少しの休憩と荷ほどきをしながら、しばし雑談。
話を聞いてみると、なんと櫻井さんは “旅するフリーランス女将” という名で全国各地を旅しているとか!さすらいのコーヒー焙煎士が言えたものではないですが、旅するフリーランス女将とは…
世の中には本当にいろんな仕事があるんだなぁと感心しました(笑)
「THE PUBLIC」 は古民家をリノベーションして作られた複合施設。週末はカフェ営業もされてます。
それから熊谷駅まで戻り、大橋さんとはここでお別れ。
熊谷初日の夜は、大橋さんお勧めの居酒屋「甲子園 第二球場」さんにて晩酌。店内は活気が溢れ、威勢が良くて優しい兄ちゃんと女将さんに、”哲っちゃん” の愛称で親しまれている大将が賑やかさに華を添えます。お酒も肴も安くて種類が豊富!近くに住んでいたら間違いなく通っていますね。
一人でしっぽりやっていたら、3席離れたところに座るおっちゃんに声をかけられて話が弾み、僕がジョッキを空けたらレモンサワー(濃いめ)を次から次へと作り始めてくれる始末。おかげでしっかり楽しく酔わせていただきました。
宿に戻って寝る頃には既に熊谷が大好きになっていたのは言うまでもありません。
お会計を済ませ帰り支度をしていたら、哲っちゃんからお手紙のサプライズ!僕こういうのに弱いんです。このお手紙は今回の旅のお守りとして、最後まで取っておきました。
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二日目の朝は、地元食材をふんだんに使用した豪華な食事で朝からいい気分。細部までこだわり抜かれていて本当にいい宿です。「THE PUBLIC」、熊谷に行った際は是非とも泊まってみて下さいね!
そして、いよいよ1日出張カフェの日です。場所は、2月に熊谷市内にオープンしたばかりの「シェアカフェ★エイエイオー」をお借りしました。
小雨が降るあいにくの天気でしたが、昨日お世話になった大橋さんや大橋さんのご友人、昨日プレイスコーヒーで知り合った飯野さんなど、予想以上に多くの方が遊びに来てくれました。
中でも嬉しかったのが、カフェのある商店街のお店の方たちが休憩の合間に覗いてくださったこと。
「新しくお店ができたのは知ってたけど、どういうことをやってる場所なのかよく分からなくて。看板が出てたから入ってみたよ!」と嬉しいお言葉。新しいお店や外から来た人を許容する商売人の優しい心意気を感じます。
皆さんが楽しげに話している光景を見て、いつか故郷の秋田で老若男女が一堂に会しておしゃべりができる場所づくりをしたいという夢を再確認させられました。
出張カフェの終了間際に、水よしの女将さんも顔を覗かせ、こんなプレゼントをくれました。
無事に出店を終えた夜は、エイエイオーのすぐ近くにある老舗ホルモン焼き屋「水よし 本店」で地元の皆さんと交流会!大橋さんがいろんな人に声をかけてくださって、総勢8名の大所帯です。
熊谷がホルモン焼きの町というのは以前から聞いたことがあったので、「せっかく熊谷に来てホルモン食わずに帰れるか!」と東京を発つ前から思っていたことが叶いました。
七輪の煙薫る店内で、まずは癒しのビールを注入。団欒しながら肉が焼けるのを待ちます。
ホルモン焼きで飲む酒がこの世で一番好きな僕からすると、目の前に広がっている光景はまさに極楽浄土(笑)。追加で頼んだ濃いぃ白ホッピーを片手に、楽しい会話とおいしい肴。前日の昼に初めて熊谷に降り立ったばかりなのに、このあたたかさ、楽しさ、おいしさ、酒の濃さ。これ以上ない完璧な夜でした。
飲んでる様子ばかりですが、地元の人と地元のお店を楽しむのも、ちゃんとした移住体験です。笑
楽しい熊谷での思い出にふけって迎えた、3日目の朝。朝食を食べていたら宿のオーナーである加賀崎さんが、忙しい合間を縫って顔を出して下さいました。
今回は、THE PUBLIC 以外の店舗には足を運べませんでしたが、加賀崎さんが手掛ける店舗展開のお話や地域を盛り上げる活動の一端を聞き、熊谷のまちの面白さを再認識しました。
まちの人たちの憩いの場をめぐる。
名残惜しい宿に別れを告げ、今日はさらに北上して本庄市まで移動です。その途中では、いろいろと寄り道を。
妻沼聖天山は、町の人々の心の拠り所で、地域の人たちがお金を持ち寄って宮大工を呼んだりして保存させているそうです。お寺が見たいというよりは、地域密着の結晶を見てみたいという気持ちで立ち寄りました。
昼食は埼玉名物のうどん。恥ずかしながら埼玉が麦の産地ということもここに来るまでは知らず、埼玉の人たちはうどんをよく食べていることも「あぁ、言われてみれば…」くらいの認識でした。
そんなカミングアウトをしつつ食べた深谷市にある「麦屋」さんのうどんはコシが強く武骨な感じで、非常に好みです。
午後になり向かった先は深谷市内の野菜の直売所。地域の人たちの台所になっている場所が見たかったのですが、集荷場に併設された直売所ということもあって、とにかく種類が多く値段も破格。名産の深谷ねぎも、都内で買うより 7割~半額くらい?といった印象です。埼玉は野菜の栽培が盛んとのことですが、それも納得の充実さでした。
ようやく降り立った本庄駅。駅周辺の率直な印象は、熊谷が「都会の中の田舎」であるとしたら、本庄は「田舎の中の都会」という感じです。
まずはレンタサイクルを借り、2時間ほど駅周辺をリサーチ。今夜から明日にかけての行動範囲をなんとなく駅の北側!と決めて、商店街や幹線道路周辺を見て回り、今夜の酒場を探します。
そして見つけた駅前の串カツ「沢屋」さん。外観はちょっと高そうな和食屋さんみたいですが、看板を見たら都内ではあり得ないくらいリーズナブル。名物のホルモン焼きとお任せ串カツでしっぽりと焼酎をいただきます。こちらの食べる様子を見て揚げたてを提供してくれる、間違いなく名店でした。
〆に手打ちの二八そばを注文したのですが、これが驚くくらいおいしい!店構えとそばの味からして、もしかしたら店主の方は元々板前さんだったのではないかな?と勝手に想像。真相は聞けなかったので、次本庄に行ったときの楽しみに取っておきます。
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翌日、最初に向かった先は「Café NINOKURA」さん。蔵を改築したカフェで、店内には地域の作家さんが作ったハンドメイド雑貨があったり、二階をフリースペースにして貸し出したりと、地域密着型のお店です。
商売まではいかずとも技術を持っている方って意外と多いので、こういった活動できる場があることは、日々の暮らしが豊かになりそうと感じました。
しばらくゆっくりしてお昼時。候補のお店が「電気館カレー」さんと「モンキー食堂」さんの二つあったのですが、電器館カレーさんは定休日だったので、モンキー食堂さんへ。駅前の「三交通り」の中にあるお店です。いかにも昔ながらの風貌の店内に入ると先客が一組、お酒を飲みながら盛り上がっていました。この周辺に住む人たちの憩いの場なんでしょうね。
お店はご夫婦と息子さんの3人で営業しており、初めて行ったのにフランクな感じが嬉しいです。一品料理も豊富にあるので、食事処としてはもちろんチョイ飲みにも使える、ホッとするお店でした。
他にも行きたかった場所がたくさんありますが、まだまだ回りきれず…。いつかリベンジに来たいものです。
まとめ
今回の移住体験で感じたことは、埼玉という街のバランス感覚の良さです。3日目にアテンドしてくれたTURNSの須井さんと移動中の会話で「埼玉(の北部)は人の多い田舎」という言葉が出てきました。
田舎っぽい牧歌的で柔らかな人付き合いの文化や雰囲気がありながら、人口が多い。人口の多さは街や生活に活気が出ることに加え、僕のようなイベント出店などをしているフリーランスにとっては命綱くらい大事な要素です。
僕の感想として、地方から移住するにしても、都内から移住するにしても、それほど大きなギャップは感じない場所なのではと思います。特に、何かやりたいことがあって移住するという方には絶好の場所といえるかもしれません。
短い滞在だったので、実際の生活において気になる医療のこと、物価や家賃、賃金相場といったお金のことまでは体験しきれませんでしたが、感覚的にはほどよい気がします。ただ、車はほぼ必須ですね。
この記事を書いている今も、今回の思い出が恋しいです。いい街、いい人、いいお店。一見地味な埼玉の底知れないポテンシャルをビシビシ感じた、本当にいい滞在でした!
(体験者:夏井貴洋)