特集|一次産業の未来地図
日本の一次産業は現在、大きな転換期にあります。
頻繁に耳にするのは、担い手不足や高齢化を憂う声。そして、米や野菜の価格高騰、漁獲高の減少、森林の荒廃といったニュース。そんな現代に必要なのはきっと、既存の枠組みに捉われず、生産者も消費者も皆が豊かになる在り方を再構築すること。
他の産業と連動させたり、見落とされていた価値に光を当てたり、業界イメージを刷新したり─。取り上げるのは、未来思考で一次産業に新風を吹き込むイノベーターたち。十年後、二十年後、百年後を見据える先進的な取り組みを特集します。
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巻頭レポート
新潟県・南魚沼市|関智晴さん(株式会社関農園)
土に生きて、世界一を目指す一流を貫くかっこいい米農家へ
日本屈指の米どころとして知られる南魚沼。その中でも、ワンランク上の米作りで注目される旧塩沢町(現・南魚沼市内)にある「関農園」。そのモットーは、“世界一おいしいお米を目指す”。事実、世界最大級の国際品評会で6年連続金賞、またギネス世界記録「世界最高米」に4年連続で選出されるなど、輝かしい功績を誇る。一般的な米農家が、どのようにして現在の姿へと成長したのか、その努力に迫る。
取材・文…西道紗恵 写真…高橋由香
高知県・安芸市|合同会社シーベジタブル
経済、地球、暮らしの「三方よし」豊かな海と未来をつくる海藻栽培
地球温暖化による海水温の上昇は、漁獲高に深刻な影響をもたらしている。それは私たちの生活や生存に直結する問題でありながら、どこかで「まだ大丈夫だろう」と対岸の火事として、目を逸らしてしまう人もきっと多いはずだ。そんな状況を、食文化の創造を通して変えていこうと海洋生態系の回復を目指し、海藻栽培を推し進める合同会社がシーベジタブルだ。目指すのは、海藻がより身近な食材になり、食べることで海が豊かになるという好循環を生み出すこと。海の未来を担う挑戦を追った。
取材・文・写真…藤田和俊
奈良県・吉野郡|津田林業
林業を安全でかっこいい仕事に。人口300人の村を変革の最前戦に
森林が県土面積のおよそ7割を占める奈良県。日本3大美林の一つに数えられ、最高級ブランド木材「吉野スギ」の産地として、国内林業の一角を担ってきた。職人の高齢化や若い担い手不足をはじめ、住宅建材の需要低下といった課題に直面する林業だが、この地では新たな萌芽が出てきている。林業の仕事のやり方だけではなく在り方にも変革を起こしてきたのが、同県吉野郡野迫川村にある有限会社津田林業。先行きの見えない環境の中でひたむきに道を拓いてきた同社が掲げる「かっこいい林業」とは?
文…中野広夢 写真…鶴留彩花
神奈川県・伊勢原市|石田陽一さん(石田牧場グループ)
小さな牧場がつくりあげた都市酪農の理想形
小田急線伊勢原駅から車で約十分、丹沢山系を遠くに見ながら住宅街を抜けると、畑の向こうに緑の屋根の牛舎とジェラートショップ「めぐり」が見えてくる。牧場と「めぐり」を経営する石田牧場グループ代表取締役の石田陽一さんは、石田牧場の3代目。2008年の就農以来、先駆的な取り組みで事業を拡大し、地元自治体や酪農団体の職員が「優れた経営者」「都市酪農界のホープ」と期待を寄せる。事業の核にあるのは「良い土と草で元気な牛を育てること」を追求する“牛飼い”の信念だ。
文…太田有紀 写真…立石祐
広島県・三次市|小川治孝さん(小川モータース)
地域を“資源”として捉える目が一次産業の可能性を広げる
広島県北部の山間にある三次市甲奴町で、自動車屋とガソリンスタンドを経営しながら一次産業にも力を入れている小川モータース。小川治孝さんが本業とは別の挑戦を始めたのは、地域を未来につなぐという目的があるから。「地域にある資源をどう活かすかを考えた答えの一つが農業でした」。そんな信念を持った行動力とアイデアで生み出した事業とは?
取材・文・写真…藤田和俊
第2特集
拡張する一次産業
外からの目、あるいは外の世界の知見が加わることで、従来は発想できなかったような多様なアウトプットが生まれてくる。それは一次産業が本来持つ価値を再発見し、分野の壁を超えて拡張させていく試みともいえる。第二特集では、現在進行形で変化し続ける一次産業の現場を訪ねました。
山形県鶴岡市|山中大介さん(株式会社SHONAI)
全ての地方プレーヤーよ、僕らに続け 世を照らす「希望」となれ
街づくりベンチャー「SHONAI」は、「何もない」「陸の孤島」と言われた庄内・鶴岡で、60億円を超える資金調達に成功し、観光・農業・人材・教育の分野でメキメキと事業を成長させてきた。「希望」とは誰かが照らしてくれる光ではなく、自らが当事者として行動することで生み出す光のことー。そんなメッセージを掲げ、自ら体現してきた「SHONAI」の挑戦に迫った。
写真…本間聡美 文・取材…西道紗恵
千葉県旭市|加瀬宏行さん(Bocchi)
落花生を六次産業化し地域の未来を仲間と切り拓く
昔から当たり前に存在し,永遠に続くと思われていた、地場産物。しかし,環境や社会状況が変化してしまった今、各地でその存続が危うくなっている。落花生の発祥の地といわれる千葉県旭市もその例外ではない。落花生産業の未来を危惧した若者が立ち上げたブランド「Bocchi」は、地域を巻き込みながら、落花生の真の価値を伝えるために奮闘している。
写真…深澤慎平 文・取材…野口ひとみ
鹿児島県阿久根市|下園正博さん(下園薩男商店)
水産業もまちも守るために今あるコトに「一手間」加え続ける
鹿児島県の北西部にある阿久根市。イワシなどの魚を塩水に浸けてから丸ごと干す「丸干し」の日本有数の産地だが、丸干し屋はこの15年で15軒から8軒に減少した。だが関係者も手をこまねいているばかりではない。1939年創業の水産加工業「下園薩男商店」3代目社長の下園正博さんは、新商品開発や複合施設の運営などに取り組み、丸干し文化を守ろうとしてきた。その取り組みは雇用を生み出し、移住者増にも繋がっている。
写真…大庭学 文・取材…横山瑠美
連載ほか
TURNS PERSON
地域の事業者に寄り添う事業承継の形
僕たちのローカルデザイン考
地域おこし協力隊リポート|高知県土佐市
これからの官民連携|「福祉」をアップデート 誰もが主役になれる地域へ
地域おこし協力隊のトリセツ|応募がこない!現状分析と対策
わたしもTURNSになりました|千葉県富津市
読んで、僕も考えた。|井上岳一
よく見ると動いている|アサダワタル
素晴らしきローカル
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