紀伊半島地域暮らし体験ツアー
「起業について学ぶツアー」開催レポート

202211月〜12月にかけて行われた『紀伊半島地域暮らし体験ツアー』。第2回目となる『起業について学ぶツアー』が12月2日(金)〜4日(日)の3日間に渡り、2泊3日で開催され、紀伊半島への移住に興味をもつ7名が参加されました。
首都圏や関西地方からの参加を中心に、一時帰国中のアメリカ在住の方もいて、年齢層も19歳の大学生〜50代までと幅広く、将来的に地域と関わりをもち、自分で何かをしたいと考えているメンバーが揃いました。 

今回のテーマは「古民家リノベーション×起業」。奈良県と和歌山県で、古民家をリノベーションして宿泊施設を経営する移住者を訪ね、リアルな声を聞くとともに、実際に宿泊施設に泊まったり、食事をしたりと、盛りだくさんの体験を通して、紀伊半島で暮らすイメージを膨らませる機会となりました。 

参加者それぞれに、移住への確かな手応えを得た3日間のレポートをご紹介します! 

 

1日目:奈良県吉野町 

 集合は近鉄大和八木駅。バスに乗り込んで、まずは奈良県のほぼ中央に位置する吉野町の東の端にある国栖地区へと向かいます。50分ほどかけて、徐々に風景は街から里山に移り変わり、昼食をいただく『くにす食堂』に到着すると、吉野町を案内してくれる『ゲストハウス空』オーナーの澤木久美子さんが出迎えてくれました。澤木さんと一緒にランチメニューのスパイスカレーをいただきながら、参加者同士で自己紹介をして、ツアーに参加した目的などを語り合います。 

『くにす食堂』も築100年の古民家をリノベーションした建物で、オーナーの糟谷さんも愛知県からの移住者。地域のお母さんたちがつくる添加物をなるべく使わない身体に優しいメニューや、自家焙煎したコーヒーを提供する食堂はいつも予約でいっぱいの人気店です。途中、糟谷さんの移住体験談も聞くことができ、美味しい食事とともにお話に聞き入りました。 

▲奈良県吉野町にある『くにす食堂』に到着

▲澤木さんにご挨拶して、参加者同士も自己紹介

▲昼食にいただいた『くにす食堂』のスパイスカレー

▲『くにす食堂』オーナーの糟谷さんも移住者 

お腹を満たした後は、バスで吉野川沿いを走り、今度は吉野町の西の端にある貯木場や製材所が集まる上市エリアに向かいます。10分程度のハイキングを楽しみ『吉野宮滝万葉の道・高滝』などにも寄り道。真っ直ぐに密集して育つ杉の森林を眺めながら気持ちの良い空気を堪能しました。 

▲吉野町の森林に寄り道。林立する杉の間に現れる落差15mの『高滝』 

20分ほどかけてバスが到着したのは、吉野川の左岸にある製材団地『吉野貯木場』にある『吉野中央木材株式会社』。専務取締役の石橋輝一さんが、吉野町の基幹産業である吉野杉・桧の製材について、積み上げられた原木や工場内を案内しながら、吉野の林業について説明をしてくれました。 

▲『吉野中央木材株式会社』専務取締役の石橋輝一さん 

「吉野の林業は500年程の歴史があり、吉野川の上流にある吉野林業地域では古くから植林が行われていました。江戸時代に日本酒の酒樽に使うと、酒に色がつかず木の良い香りがつくと重宝されたことで発展したそうです。吉野町は山から伐り出した木の貯木場として昭和初期に整備され、吉野の良質な木を製材することで付加価値が付き、建築材としても広まっていきました。吉野の木は、目が細かくまっすぐで節がなく、色ツヤがいいと評価されますが、それは密植といって、一定の面積に他地域の3〜4倍の木を密度高く植林し、日を当てない吉野林業独自の植林法によって、じっくりと時間をかけて育てられるからです。杉は自ら枝を落とし、桧は枝打ちすることで節のない木になります」

▲自然乾燥中の吉野杉の材木を見学しながら説明を受ける 

「木のよい香りがする」「年輪が細かくてキレイ」と見て、触れて、香りを嗅いで、五感で吉野杉・桧を感じられた参加者のみなさん。さらにこの後は、工場内へ移動して原木から梁材へと製材する様子を見せてもらいました。 

▲ノコギリで製材したての木は水分でしっとりしている 

職人さんが原木を「送材車付帯ノコ盤」という専用の機械で、木材の特徴に合わせて電動で回転する大きなノコギリを入れる位置を慎重に見極めながら、丸い原木を角材へと加工していく様子は迫力そのもの。職人さんの手際の良さに感心しながら、ノコギリで切りたてほやほやの木肌に触れさせてもらうと、水分でしっとりしているのがわかり、参加者のみなさんも驚いていました。

▲ノコギリの刃をメンテナスする工房も見学 

さらに、ノコギリの刃をメンテナンスする工房の様子も見せてもらいました。ノコギリの刃の調整は、目立てといって専門の職人さんが行いますが、今では専門業者に外注することが一般的で、機械で自動化されていることも多いといいます。吉野の製材所でも自社で目立てを行っているのは『吉野中央木材株式会社』だけ。普段は見ることができない製材所の裏側を見学し、参加者のみなさんも真剣な眼差しで質問したり、メモを取ったり、吉野の林業の奥深さに触れる有意義な時間となりました。 

すっかり日も暮れて、暗くなってきた頃、参加者のみなさんが宿泊する『ゲストハウス空』に到着。改めてオーナーの澤木久美子さんから、古民家を改装してゲストハウスを開くことになった経緯などをお聞きしました。澤木さんは一級建築士として住宅の設計なども手掛けていて、吉野に移り住む前は神戸で設計事務所を経営しており、吉野と関わるまで宿をひらくつもりは全くなかったといいます。

▲澤木さんが運営する『国栖core』。『ゲストハウス空』とシェアキッチン『こけのもり』を併設 

 「知人に誘われて訪れた吉野町に、縁があって年に数回、通うようになり、拠点を借りたいと思うように。空き家バンクで紹介してもらって家を見に行ったのですが、大きくて立派な建物もたくさんあって3人くらいで借りたらちょうどいいのにと思ったけれど、シェアハウスのようなものはありませんでした。そこで自分で空き家の利活用の取り組みを始めることにしました。1年目はリサーチ、2年目は家主さんに空き家バンクの仕組みを知ってもらおうと、空き家活用の勉強会などを開催。その活動のなかで、家主さんも知らない人に貸すことに不安を感じていることを知りました。自分で空き家を活用して、こんな風に使えばいいという事例を見せるのが早いと感じて、3年目となる2021年に空き家バンクを通して元旅館だったこの家と出会い、自分があったらいいなと思ったゲストハウスをやることにしました」 

▲『ゲストハウス空』のシェアスペースで、テーブルの天板に使った吉野杉について話す澤木さん 

澤木さんは拠点を『国栖core』と名付け、『ゲストハウス空』以外にも、飲食業もできるシェアキッチンとスペース『こけのもり』も併設。このスペースを借り、定期的にカフェや居酒屋を開催する人もいて、人と人がつながる場所にもなっているそうです。さらに、これから吉野と関わりをもちたいと考え、長期滞在を希望する人には、格安価格で泊まれるプランも用意しています。 

「空き家を借りるには家主さんと顔見知りになったり、ちょっとしたご縁がつながったりすることが大事なのです。この場所で少し生活してみると、そんなご縁がつながる可能性が高い。そういう志をもった方を応援する気持ちで、長期滞在者向けの価格設定をしています。ただし、一度はゲストハウスに泊まったことがある人限定で、事前面談も必ずお願いしています。いい空き家がたくさんあるのに、住む人がいないのはもったいない。空き家に明かりが灯ると温かい感じがするでしょう。吉野町の空き家に一軒でも明かりが灯ったら嬉しいなと思って、この活動をしています」

▲吉野町のいろいろな魅力を紹介してくれた澤木久美子さん 

澤木さんの具体的な移住体験とともに、地域の人と移住希望者をつなげる活動内容にも興味をもった参加者のみなさん。「みなさんが、長期滞在したいと思ったときには声をかけてね」という澤木さんの言葉に「また来た時はよろしくお願いします!」と笑顔を見せる方もいました。 

澤木さんのお話を聞いた後は、お待ちかねの夕食の時間。こちらも大阪からの移住者の渡邊さんご夫妻が営む『お食事処 一路』の地元の食材をふんだんに使ったお弁当をいただきました。 

▲大阪から吉野町に移住した渡邊さんご夫妻が営む『お食事処 一路』のお弁当 

さらに、吉野杉の木桶仕込みにも挑戦している美吉野醸造株式会社杜氏の橋本晃明さんから、日本酒の新銘柄『吉野正宗』のプロジェクトについてスライドを見ながらプレゼンテーションをしていただきました。『吉野正宗』は、吉野町の三つの老舗酒蔵が連携し、遊休農地を使って栽培した同じ酒米・同じ条件で、それぞれの蔵の醸造法でつくられた味の違いを楽しむというコンセプトで、地域経済を発展させるために橋本さんたちが立ち上げたブランドです。

▲吉野町の三つの酒蔵が同じ米と条件でつくった『吉野正宗』を飲み比べ 

▲吉野町の米、木を使った樽などを使った酒づくりに取り組む美吉野醸造株式会社の橋本晃明さんのプレゼンテーション 

「地域の酒蔵の役割として、風土に合った酒づくりをして、地域の旗になるようなブランドにできればと『吉野正宗』のプロジェクトに取り組みました。吉野町でつくった米を使った酒づくりは、米どころと同じ方法では成立しません。吉野でできる酒米の特性を活かし、それぞれの酒蔵が工夫を凝らして、独自の味につくり上げることを目指しました。それぞれの酒蔵によって、米の解釈の仕方や醸造方針が違うので、三者三様の特徴がしっかり出た味わいに仕上がりました」 

そう話す橋本さんが、持参してくれた株式会社北岡本店の『八咫烏』、北村酒造株式会社の『猩々』、そして美吉野醸造株式会社の『花巴』の三つの『吉野正宗』を飲み比べながら、澤木さん、橋本さん、渡邊さんご夫妻、翌日に訪問する予定の酒米の生産者の『吉野絆ファーム』の靏井昌幸さん、空き家バンクの職員であり『国栖core』のシェアキッチン『こけのもり』を運営する窪⽥智美さんも加わり、参加者のみなさんとの交流を楽しみました。「吉野町の良いところは?」「家はどうやって探しましたか?」「住んでみて感じていることは?」など、リアルな質問が飛び交い、夜が更けてからも会話が尽きることなく盛り上がりました。

 

▲地元の方や移住者の先輩も参加して、夕食をいただきながら交流 

【国栖core/ゲストハウス空】 

住所:奈良県吉野郡吉野町新子333-1
アクセス:バズ 近鉄「大和上市駅」よりスマイルバス「新子局前」下車徒歩1分/車 針ICより約30km(約45分)または南阪奈道路 葛城ICより約37km(約1時間) 

電話:0746-47-2126
HP:https://kuzu-core.com/

 

2日目:奈良県吉野町→和歌山県かつらぎ

朝食を終えてすぐ、澤木さんの案内で、ゲストハウスの近くにある『浄見原神社』へ朝の散歩へ。朝の澄み切った空気の中、清々しく輝く吉野川を眼下に眺めながら参拝します。宿に戻って一息ついたら次の目的地に出発です。昨晩の交流会にも参加してくれた靏井昌幸さんが運営する『吉野絆ファーム』へとバスで向かいます。 

靏井昌幸さんは、生まれも育ちも吉野町で、JAの職員として営農指導員をしながら、休日に吉野町の耕作放棄地を活用した農作物をつくる活動をしていました。『吉野正宗』の酒米づくりもその成果の一つです。60歳で定年退職をした2022年4月からは本格的に農業に取り組み、タマネギ、サトイモ、キャベツ、ナスビ、ジャンボピーマンなどを出荷してきました。

▲『吉野絆ファーム』の畑を見学 

「野菜の袋に“吉野”というステッカーを貼るだけで売れ行きが変わるほど、吉野産の農作物は人気があるのです。これを活かして特産物となるような吉野ブランドのイチゴをつくろうと開発中です。また、奈良県の人気ラーメン店のトッピング用のニラの栽培を依頼されていて、そちらにも力を入れていく予定です。ニラの収穫の時期には選別や袋詰の作業に人手が必要なので、ぜひ手伝いにきてください。試行錯誤しながら売れる農作物をつくって、若い世代に継承できるような農業に育てていきたい。耕作放棄地は景色としても美しくないでしょう。田畑に緑が茂る景色には価値があると思いますから、頑張って吉野町の農業を盛り上げていきたいです」

▲靏井昌幸さんから吉野ブランドの農産物をつくる取り組みについて説明 

靏井さんのお話を聞きながら、畑やビニールハウスを案内してもらい、収穫済みのサトイモの仕分けを参加者のみなさんでお手伝いしました。土を取り除いて仕分けたサトイモはお土産としていただき、みなさん大喜びです。参加者からは「収穫時期に手伝いに来ます!」と名乗りを上げ、再訪の約束をしている方もいました。吉野町で農業をするなら、仕事の機会やチャンスがたくさんありそうなことがわかり、移住した際の仕事の選択肢として一例を知ることができたことは、参加者のみなさんにとっても大きな収穫だったようです。

▲サトイモの仕分けをお手伝い

▲『吉野絆ファーム』の靏井昌幸さん 

畑を後にして、吉野町で最後に立ち寄ったのは、サテライトオフィス・コワーキングスペースの『YOSHINO GATEWAY』。吉野川に面した古い空きビルを改装した、吉野町の人、もの、ことをつなぐ新しい拠点です。1階はイベントができるコミュニティスペースで、イベントのない時は無料解放され、地域の方との交流ができるスペースになっています。2階はコワーキングスペース・シェアオフィスで、吉野町で活動する企業のサテライトオフィスやノマドワーカーのワーケーションなどに使われています。3階も今後、長期滞在者用施設などに整備していく予定で、吉野町に滞在しながら人とのご縁を求める移住希望者にとって欠かせない場所になりそうです。

▲『YOSHINO GATEWAY』はビルをリノベーションしたスタイリッシュな建物

▲2階はシェアオフィスとコワーキングスペース

▲吉野川と山並みを眺めながらワーケーションも 

【YOSHINO GATEWAY】 

住所:奈良県吉野郡吉野町上市254-1
アクセス:電車 近鉄吉野線「大和上市駅」下車 徒歩約10分
電話:0746-42-8111HP:https://yoshinogateway.com/ 

 

\奈良県奥大和地域の移住に関する窓口はコチラ/

奈良県 奥大和移住定住交流センター engawa

〒634-0003 奈良県橿原市常盤町605-5 橿原総合庁舎別館

TEL:0744-48-3019

MAIL:okuyamato-iju@office.pref.nara.lg.jp

奥大和移住定住交流センター「engawa」

 

▲南海電鉄九度山駅の構内にある『おむすびスタンド くど』 

たくさんの体験を提供してくれた吉野町とお別れし、バスに乗り込んで、向かう先は和歌山県。50分ほどかけて、昼食のため高野山の入り口の街、九度山町に到着しました。参加者一同驚いたのは、昼食会場のお店『おむすびスタンド くど』が、南海電鉄九度山駅の構内にあったことです。竃に薪をくべて炊き上げたご飯で、一つひとつ丁寧に手でつくられたおむすびは、和歌山ならではの旬の食材が使われています。
ホームにある店先で購入したおむすびは、古い電車の車両を活用した空間でいただくことができます。懐かしくも新しい『おむすびスタンド くど』は、移住後に自分で何かをやりたいと考えている参加者のみなさんに、刺激とインスピレーションをもたらした様子でした。

 

▲参加者のみなさんがお昼にいただいた『おむすびスタンド くど』のおむすび 

▲古い電車の車両を利用した空間でイートインもできる 

【おむすびスタンド くど】 

住所:和歌山県伊都郡九度山町九度山123-2
アクセス:電車 南海電鉄九度山駅構内 

電話: 0736-20-7553 

HP:https://kudo-kudoyama.weebly.com/ 

 九度山町からさらにバスで20分ほど移動し、和歌山県かつらぎ町にある『お宿 南峰庵』に到着しました。今夜はここで夕食をいただき、宿泊します。『お宿 南峰庵』は、築70年の古民家を改修した、一日一組限定の宿。世界遺産でもある『丹生都比売神社のある天野という地域にあり、「日本の里100選」にも選ばれた美しい田園風景が広がります。オーナーの客殿りこさんは、母の実家が天野にあり、幼少期から度々この地を訪れていたといいます。8年前に母が実家を改装して、『カフェ客殿』をオープンしたことをきっかけに、りこさんもカフェの仕事を手伝うために再び天野に通うようになったといいます。 

▲『お宿 南峰庵』の外観

▲『お宿 南峰庵』の広間  

▲2階にはベッドルームもある 

▲書斎を改修したライブラリー 

「カフェの仕事を手伝っているうちに、大好きな天野で私も何かやってみたいなと思うようになりました。天野に宿をつくってほしいというお客様からの声もあり、心を込めたおもてなしができる宿ができたらいいかもしれないと、なんとなく考えていたとき、地域の方から、すぐ近くにある空き家の古民家を紹介してもらったのです。外壁はそれほど傷んでいなかったので、この家ならそれほどお金をかけずに改修できそうだと思ったのですが、中に入ると床は抜け落ち、雨漏りもあり、かなりの予算がかかることがわかりました。でも、ここでお客さまを心からもてなす自分の姿を想像できたことと、画家だった祖父の絵がこの家から見つかったことで、祖父に導かれているような気持ちになり、この物件を購入することを決心しました」 

りこさんが物件の購入を決めたのは23歳。資金を調達するため、「わかやま地域課題解決型起業支援補助金」や「かつらぎ町起業支援事業補助金」への申請に挑戦するも、一度は不採択となり、書類や資料を改善して2度目の申請で採択。地元の方や友人など100人以上の方の協力を得て、2年の歳月をかけて、2021年3月に宿をオープンしました。その後も、併設している蔵を改修するために「ふるさと納税型クラウドファンディング」にも挑戦。地元で取れる野菜や果物、天野米、作家さんの手仕事による工芸品などを販売するお土産屋として訪れる人たちを楽しめませています。 

『お宿 南峰庵』を一通り案内してもらった後は、パワースポットとして人気のある『丹生都比売神社を参拝。里山を散策しながら、ゆっくりと流れる時間を味わいました。

▲パワースポットとしても知られる『丹生都比売神社』 

 さらに、徒歩1分の『カフェ客殿』にも立ち寄り、美味しいスイーツとドリンクを楽しみながら、参加者のみなさんで談笑。りこさんのお母さまにご挨拶したり、カフェに置かれているお祖父様の絵を観たりしながら、リラックスした時間を過ごしました。

 

▲りこさんのお母さまが経営する『カフェ客殿』 

▲『お宿 南峰庵』オーナーの宮殿りこさん 

日が暮れた頃、『お宿 南峰庵』に戻り、夕食の時間です。吉野杉でつくった6種類の縁起箸から参加者それぞれが自分の好きな文様を選んで、席に着くと、料理人が腕をふるった、地元食材満載のコース料理が次々に供されていきます。見た目にも美しく、丁寧に調理された料理を味わいながら、一人ひとりのお客さまに心のこもったおもてなしをしたいという、りこさんの気持ちを、参加者のみなさんもしっかりと感じ取ったようでした。 

▲地元の食材を使ったフルコースの夕食 

【お宿 南峰庵】 

住所:和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野160番地 

アクセス:バス JR和歌山線「笠田駅」よりかつらぎ町コミュニティバス「丹生都比売神社前」下車/車 京都和道路かつらぎ西IC約25km(35分)または紀北かつらぎICより約23km(20分) 

電話:080-1514-4351 

HP:http://nanpoan.xyz/index.html

 

3日目:和歌山県田辺市 

『お宿 南峰庵』で朝食をいただいた後、再びバスに乗り込み、和歌山県田辺市龍神村にある『一棟貸し宿 小家御殿』を目指します。休憩をはさみながら山間部を目指して約2時間の道のりです。龍神村は熊野古道に近く、移住者に人気のエリア。海外から移住する人も増えているといいます。 

山道を進むと『一棟貸し宿 小家御殿』の看板が見えてくる 

▲『一棟貸し宿 小家御殿』の外観。購入した民家にほとんど手を加えずに宿として使っている 

『一棟貸し宿 小家御殿』に到着したのはちょうど昼時。イタリアンの料理人だったオーナーの金丸知弘さんが、手づくりの料理で参加者のみなさんをもてなしてくれました。前菜、自家製フォカッチャ、パスタ、メインのポークと野菜のグリル、スイーツと盛りだくさんのメニューに、全員で感嘆しながら舌鼓を打ち、お腹いっぱいいただきました。 

▲参加者にふるまう料理を準備する金丸知弘さん 

▲金丸さんがつくる料理は本格的なイタリアン 

▲金丸さんを囲んで美味しい料理をお腹いっぱいいただく参加者のみなさん 

食事の後は、金丸さんが東京から龍神村に移住してきた経緯を、わかりやすくまとめたスライドとともにプレゼンテーション。いかに田舎に住むことが合理的で豊かであるかということを、論理的に解説してくれました。 

▲モノマネで冒頭のツカミはOK

「龍神村にある保育園は、へき地保育所という区分で、保育料は東京の1/8なんです。医療を心配する人がいますが、和歌山市の病院まで車で1時間でいけるし、ドクターヘリも来てくれます。田舎には仕事がないというのも間違った情報で、人手不足で仕事ができる人はどこに行っても稼ぐことができます。多品種・多品目の果物や野菜、魚なども新鮮なものが安く手に入りますから、都会との支出の差を考えれば収入だって決して低くはありません。東京が便利だと思い込んでいる人が多すぎるのではないでしょうか?」 

金丸さんは、奥さまと当時13歳の娘さんとともに家族で移住してきたこともあり、学校や子育て、奥さまのご両親を説得した話題などにも触れ、リアルに移住をするためのノウハウを、参加者のみなさんに共有してくれました。 

▲金丸さんが東京から龍神村に移住してきた経緯や、移住後の豊かな生活をプレゼンテーション 

金丸さんは、移住先の候補として龍神村に見学にきたとき、ちょうど空き室があったという市営住宅に今も暮らしています。この市営住宅は、地元の木材の利用と定住を目的として建てられたアトリエ付きの2階建て住戸で、1階を店舗として使うこともできます。金丸さんは料理の技術を活かし、ジャムや焼き菓子などの食品加工品の販売を行うショップとカフェをオープンして経営していました。後に『一棟貸し宿 小家御殿』としてオープンする一戸建ての平屋の家は、カフェのお客さまから処分に困っているという話を聞いて、購入したそうです。残置物の整理をしようとしていたタイミングでコロナ禍になり、カフェを一時クローズして、残置物をメルカリで販売しはじめ、いつの間にかメルカリでの収入が月平均40万円ほどになっていたといいます。 

Amazonの利用者は5000万人、メルカリの利用者は2000万人と言われています。今はインターネットを使えば、全国規模でビジネスができる時代。eBayなどを使えば海外に向けても発信できます。ネットで物販をするなら、在庫を置くスペースが広い田舎のほうが圧倒的に有利です」 

 金丸さんの言葉に、参加者一同「うんうん」と首を縦に振りながら納得。「残置物をメルカリで売るコツは?」「空き家を買うときの注意点は?」など、金丸さんを質問責めにして、お金や仕事の問題も含め、移住のためのヒントや考え方を十分に得られた充実した時間となりました。

▲『一棟貸し宿 小屋御殿』オーナーの金丸知弘さん 

【一棟貸し宿 小家御殿】 

住所:和歌山県田辺市龍神村小家278 

アクセス:車 南紀白浜空港から約50km(約1時間)、紀伊田辺駅から約40km(約50分間) 

電話:080-4972-3760 

HP:https://peraichi.com/landing_pages/view/oiegoten/ 

 

\和歌山県の移住に関する窓口はコチラ/

和歌山県 企画部地域振興局 移住定住推進課

〒640-8585和歌山県和歌山市小松原通1-1

TEL:073-441-2930

FAX:073-441-2939

MAIL:e0222001@pref.wakayama.lg.jp

HP:https://www.wakayamagurashi.jp/

 

3日間にわたり、古民家リノベーションの宿を営む三人の移住者を訪ね、また地域の資源を活かしたさまざまな起業に取り組む人の姿に触れ、参加者一人ひとりが、「自分なら何ができるかな!」と、移住への考えを一歩先に進めた様子が伝わってきました。「起業について学ぶツアー」ならではの収穫を胸にそれぞれの帰路についた参加者のみなさんが、地方暮らしへと一歩を踏み出し、地域のために活躍する日が楽しみになるようなツアーとなりました。 

自然が豊かで、住む人たちも温かで暮らしやすい奈良県・和歌山県は、移住をしたい人を応援しています。地域とつながり起業をしたいという人も大歓迎。今回のレポートを参考に、移住先の候補地として、ぜひ奈良県・和歌山県を訪ねてみてください。 

文:村田保子

\参加者の声/

吉野町、天野、龍神村と、それぞれ風土も違えば、出会った方の考え方や個性も違って、学ぶことが多かったです。いつか移住したいという気持ちがありますが、どう移住し、どう生活をつくっていくのかぼんやりとしていたなかで、地域のなかで経済的に自立していく方法を、自分で考えていく必要があると感じました。私は大阪からの参加で、和歌山県で働いていたこともあるのですが、龍神村に移住者が多いということを初めて知り、興味をもちました。近いうちに再訪してじっくり深堀りしたいと思いました。

3日間でこんなにたくさんの彩りあふれる生き方に触れられるとは思っていませんでした。お会いした方のお話や活動が、それぞれの方の性格や生き方が反映されていて、この人だからこその場所やビジネスになっていると感じました。東京にいると自分を見失うことが多いのですが、自分がどう生きていくかが、地域とどう根ざして生きていくかそのものだと思ったので、お会いした先輩移住者の方々の活動を参考にして、自分と向き合って移住を前向きに考えていきたいです。

奈良というエリアになんとなく憧れがあり参加しましたが、写真で見たり、想像したりするのと、実際に来て見て体験するのとは大きな違いがあることがわかりました。吉野町の自然の豊かさ、吉野川の雄大さに魅了されました。天野、龍神村、途中に立ち寄った九度山についてもっと深く知りたいと感じました。今回のツアーで得た経験を、自分に合った場所を探すきっかけにしていきたいと思います。

漠然と移住を考えていましたが、周囲にも話せる人がおらず、一人で悶々とした日々を過ごしていました。今回のツアーに参加して、考えを整理できればいいなと思っていましたが、参加者のみなさんと交流するなかで、自分がやってみたいことを話すことができ、他の参加者の方のお話もお聞きすることができて、すごく楽しかったです。将来、動物に関わる活動をしたいと考えているのですが、奈良や和歌山には鶏を平飼いして卵を生産している人もいると聞いて、移住後はそんな仕事にも興味が出てきました。

陶芸をやっていて、アトリエも住まいも手狭になってきて、都心で生きていく限界を感じ、移住を検討しながらいろいろな情報を集めていましたが、情報が多すぎてわからなくなっているところもありました。今回、訪れた三つの宿を見て、古民家をこんな風にリノベーションしているというお話を具体的に聞くことができ、自分だったらどんな物件をどうリノベーションするかなと考えていけば答が出そうだなと、具体的にシミュレーションすることを学ばせていただきました。お金のことなども具体的に聞くことができ、ビジネスをするならものの売り方が大事だということを知ることができ、勉強になりました。

旅行で来るだけでは聞くことができない、深い話を聞けました。地域の人たちとつながりをどうつくればいいか、具体的なお話とともに聞けたことは大きな収穫となりました。どの地域も良い意味でコミュニティがコンパクトで素敵だなと感じました。移住を担当している行政の方ともお話することができて、地域のことや移住に関する疑問をいろいろとお聞きする機会になったことも、とてもよかったです。

大学で街づくりの勉強をしていますが、コロナ禍でフィールドワークなども行けないなか、いろいろな場所をまわることができる機会となって、とても勉強になりました。とくに、吉野町の美吉野醸造株式会社さんの『吉野正宗』のお話は、地元の米や樽を活かし、地域経済を循環させているプロジェクトとして、とても興味をもちました。昔の人がやっていたことをそのままやっても、上手くいくわけではなく、地域の方々の工夫があって、プロジェクトが成り立っていることがわかりました。

 

                   

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