佐賀県では、地域おこし協力隊員が安心して活動を続けられるよう、学びと交流を組み合わせた研修を実施している。今回は、県内各地で活躍する現役隊員が集まった『佐賀県地域おこし協力隊研修会』の現場を訪ねた。佐賀県と佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク(以下、SCN)による伴走に迫る。
地方へ移り住み、地域課題の解決や魅力づくりに取り組む地域おこし協力隊制度。佐賀県では市町ごとにユニークなミッションが設けられ、隊員は新しい風を吹かせる存在として期待されている。その一方、隊員は移住者として、慣れない土地で行政や地域住民と関係を築きながら、一人ひとり異なるミッションに向き合う。何かにつまずいた時、相談できる人や違う視点から意見をくれる人は大きな支えとなるだろう。
そこで佐賀県はSCNと連携し、隊員向けの研修や定期情報交換会を継続的に開催。現役隊員の声や現場の課題をくみ取りながら、知識と技術を磨く機会をつくってきた。今年度は基礎研修3回とテーマに特化したスキルアップ研修4回、定期情報交換会が3回、そして、年度末の活動発表会が用意されている。着任まもない隊員には活動の土台を整える場となり、2〜3年目の隊員も改めて気づきを得るきっかけに。また、コミュニティにどう溶けこめば良いか、地域の困りごとをどう見つけるかなど、身近なテーマが多いのも本研修ならでは。正解のない地域づくりに向き合う隊員の手助けにもなっている。
「知識や技術も大切ですが、その一歩手前で、隊員同士の〝ヨコのつながり〟を持ってほしいと思います」と語るのは、SCNの久野裕子さん。研修では隊員同士が言葉を交わす時間を設け、自然に顔見知りになれるよう工夫されている。
「佐賀に来られる協力隊の皆さんに安心して活動してほしい」と、SCNの久野裕子さん。
地域やミッション、年代が違っても、実際に話せば同じような思いを抱えていることがある。先輩隊員の体験や他の市町の事例が活動のヒントになることも少なくない。久野さん自身も協力隊時代、同じ空き家のミッションを担う他地域の隊員と連絡を取り合い、孤独感を乗り越えた。具体的な解決策が出なくても、小さな不安や悩みを吐き出し、「そうだよね」と共感し合うだけで心持ちはぐんと変わる。
会って、話して、気持ちをほぐす。佐賀の研修は市町を越えてヨコのつながりを育み、仲間の輪をどんどん広げていく場だ。そして、佐賀は隊員を〝独り〟にしない。着任後も研修を通して成長と挑戦を支え続ける。そこには、佐賀県とSCNの力強く温かい伴走の姿勢が表れている。
聴いて、語って、いざ実践。明日のヒントを得る研修会
佐賀県の現役隊員は53名。本研修にはその約3分の2にあたる35名が参加した。
「悩みをひとりで抱えず、ここで出会った仲間や地域の人など、話しやすい相手に声をかけてほしい」という、SCN代表の門脇恵さんの呼びかけから研修が始まった。
午前は『対話とファシリテーション』をテーマとしたスキルアップ研修。講師は、九州大学大学院客員教授で、日本ファシリテーション協会フェローを務める加留部貴行さん。佐賀と福岡に二拠点を構え、佐賀では空き家を改修した交流拠点を開くなど『地域の暮らし×対話と学び×社会』を結ぶ活動にも取り組んでいる。講義で示されたのは、地域と関わる上で欠かせないコミュニケーションと対話の重要性だ。住民、行政、事業者など、立場や経験が異なる地域の現場では、それぞれに見えている景色も違う。だからこそ、対話の土台となる相手の話を『聴く』姿勢が大切になってくる。
左・現役隊員が集う『佐賀県地域おこし協力隊研修会』。実践的な学びと隊員同士のつながりを深める 右上・「互いの考えを出し合い、納得解を導いてほしい」と講師の加留部貴行さん 右下・隊員が9卓に分かれて受講。顔を合わせて学べるようテーブル配置も工夫
先回りして結論を出さず、最後まで言葉を受け止める。また、加留部さんはファシリテーションを「しにくい状態を、しやすい状態へ変えること」が重要だと説明した。話しやすくする、考えやすくする、参加しやすくする。こうした働きかけが、人と地域の力を引き出しやすい状態をつくる。加留部さんの言葉に多くの隊員がうなずき、真剣に聞き入る姿が印象的だった。
休憩時間は、通常より少し長めの90分。隊員同士の交流にも時間を使ってほしいというSCNの思いが込められている。ランチやおしゃべりをゆっくり楽しむうちに、初対面だった隊員同士にも自然と笑顔が広がっていった。
左・参加者一人ひとりが主体的に考え、手を動かしながら意見を交わす 右・日頃から地域課題に向き合う隊員たち。仲間と学び合い、自分の現在地や改善点を確認。課題をカードに書いて俯瞰することで、新たな発想が生まれる場面も
和やかな空気のまま、午後の定期情報交換会がスタート。『企画・活動のブラッシュアップ』『情報発信&イベント集客』『地域のつながりづくり』など、6つのテーマごとにグループワークを実施。隊員はそれぞれ興味のあるテーブルにつき、日頃の思いや課題を持ち寄った。各テーブルにはSCNのスタッフが一名ずつ入り、隊員の発言を引き出しながら意見交換をサポート。身を乗り出すようにアイデアを交わしたり、時には笑い声も上がるなど、会場は和気あいあいとした雰囲気に包まれていた。
ここで目指すのは、全員でひとつの正解を出すことではない。自分とは異なる視点や発想に触れ、それぞれの活動やミッションに置き換えながら、次の一歩につながる道すじを探る。相手の話をじっくりと聴き、自分の経験も言葉にする。午前の研修で学んだ『話しやすい場をつくる』というファシリテーションが、早速グループワークに生かされていた。
研修後は各テーブルの成果を発表。周りの隊員たちの発想からヒントを得て自らのミッションに落とし込める本研修は、より良い活動の後押しに
「誰かに会うのが楽しみ」研修で仲間に元気をもらう
この日の研修に参加した感想を2名の隊員に聞いた。いずれも着任一年目で、活動を模索する時期だからこそ、同じ立場の仲間と率直に話せる時間の大切さを実感していた。佐賀市の中山間部で『山の子育て発信』に取り組む大塚健介さんは、今年4月に着任したばかり。午後の定期情報交換会では、『情報発信&イベント集客』をテーマとしたグループに加わった。このグループでは、ターゲット層の設定やアプローチ、SNSから市報まで多様な媒体の活用法などが話題になり、すぐに実践したいアイデアが飛び交ったという。
「対面で話すからこそ得られる学びがあると思います。自分が一番発信したいのは、子育てや住む環境の良さ。それを見た人が『この地域いいな』って佐賀の山間部に足を運んでもらって、移住してくれる人が増えると嬉しいです」と話してくれた。隊員自身が感じる暮らしの良さを、実体験を基に伝えていく。定期的に研修会や情報交換会があることで着任後すぐに同じような悩みを抱える隊員と出会えることが心強そうだ。
神埼市脊振地区でVlogger(ブイロガー)として山暮らしの魅力を動画で届ける活動をする花園聡一郎さんは、研修会に参加するたびに多くの協力隊が佐賀で活躍していることを実感するという。
「隊員が一堂に集まると、仲間がいると実感できます。それぞれの課題や意見交換も非常に有意義ですが、研修に来ると、佐賀県でたくさんの隊員が日々活動されているんだと大きく勇気づけられます」と、花園さん。ほかの隊員の取り組みを知り、自分の活動を振り返るのも良い刺激に。「焦らなくてもいい」と周りの隊員に声をかけてもらったことも大きな励みになったという。
左・左から花園聡一郎さん、大塚健介さん。年代や地域、活動内容を越えて隊員同士がつながれるのも研修会の魅力 右上・2回目の参加となる花園さん。「佐賀は協力隊をすごくサポートしてくれます」 右下・「色んな話題が飛び交い、情報量が多かった」と大塚さん
本研修で現役隊員を見守っていたSCNの久野さんは「人生の新しい一歩を踏み出すために協力隊になった方もたくさんいます。そんな時、仲間の存在はすごく大事で、活動で悩んだり、もがいたりしても、仲間がいるから踏ん張れることもあると思います。研修会には、誰かに会えるのが楽しみで来ている隊員さんも多いですよ」と教えてくれた。
知っている顔との再会も、新しい仲間との出会いも、仲間の輪が広がるきっかけになっていく。隊員を取り残さず、一人ひとりの活動と思いに寄り添いながら伴走する。ヨコのつながりの結び目となる佐賀県とSCNの手厚いフォローアップ体制が、佐賀県で地域のために挑戦したい人を迎え入れてくれる。

「ゆるさがTALK」
佐賀は甘いもの天国だった?! 〝甘いもの愛〟の実態を語る。
住んでみて実感した佐賀の素晴らしいところをお届けする「ゆるさがTALK」。いずれも関東から移住し、それぞれの立場から協力隊に関わるSCNの門脇と佐賀県さが創生推進課の津田が、「佐賀のよかとこ(よいところ)」について個人の感想をもとに熱く語ります。今回は佐賀の甘いもの事情を語りつくします!
門脇 佐賀の人って甘いもの好きな人が多いですよね! 佐賀でのはじめての飲み会の後に〝締めパフェ〟を食べに連れて行ってもらいびっくりしました。
津田 パフェが地域に根付いてるように感じます。果物屋さんが営むカフェで出していたり、飲食店ごとにオリジナルがあったり。
門脇 深夜営業のパフェ専門店や、何十種類もメニューがある老舗の喫茶店も。若い人が多いのかと思いきや、老若男女問わず親しまれていて、スーツ姿の男性も普通にパフェを食べてたり(笑)。私も佐賀に遊びに来た人を案内する時は、パフェを食べに行くことが多いです。
津田 パフェだけじゃなくて、甘いものといえば、佐賀には丸ぼうろや羊羹、地域ごとに美味しいお饅頭屋がありますよね。昔ながらの個人商店で、ふかし饅頭をつくってたり。一人ひとりに〝推し饅頭〟があるみたいですよ!(笑)
門脇 わかります!饅頭の話になると、みんな急に熱量が上がりますよね。羊羹をおつまみに日本酒を飲む人がいたのは驚きでした!

左・佐賀市にある青果店直営の有名フルーツガーデン&パーラー「Fruits Garden 新SUN 」にて。佐賀はもちろん、遠方からも多くのファンが訪れます

左・旬の厳選されたフルーツを贅沢に使った「Fruits Garden 新SUN」の絶品パフェ。見た目も華やかで圧倒的な人気を誇る逸品です。右・佐賀特有の人気スイーツ、「まるぼうろ」は蜜と卵のやさしい甘みが特徴。外側は少しサクッと香ばしく、中はふっくら・しっとりとした独特の食感があります
津田 長崎街道は砂糖文化が伝わったことから「シュガーロード」と呼ばれていますよね。宿場町があった佐賀では、昔から砂糖が身近なものだったのでしょう。そんな歴史があったからこそ、お菓子文化も自然と発展していったのかもしれませんね。さらに、小麦や果物など、お菓子づくりに欠かせない農産物が豊富だったことも理由の一つなのかも。
門脇 春に小麦、秋にお米。同じ畑で二毛作ができることにも、県外の人は結構驚きますよね。果物もイチゴ、柑橘類、梨、ぶどう、ブルーベリーなどなど種類も豊富! それから、佐賀は料理の味付けも甘めですよね。醤油や味噌、うどんの出汁も。私は関東出身だから特にそう思うのかも。
津田 私は九州出身なので、甘い醤油の方がなじみがあります。刺身も甘い醤油じゃないと少し物足りない気がしてしまうんです。調味料も甘いですが、以前、移住してこられた方に佐賀の暮らしを聴いたら、開口一番に「スーパーのトマトが甘くて美味しい!」と仰ったことが印象に残っています。確かに、食材そのものが新鮮で美味しいから、驚く方は多いと思いますね。
門脇 海も山も豊かで水まで甘い。野菜もお魚もお肉も佐賀はまんべんなく本当になんでも美味しいです。素材のおかげで、焼いて塩をふっただけで、何でもおいしくできちゃうから料理の腕が上がった気になってしまいます(笑)
津田 お米も美味しいですよね。冷めても甘みがあって。
門脇 うんうん。佐賀は海苔もあるから、おにぎりにするとなお最高です。
津田 移住フェアなどで、他県の方に「佐賀は何が美味しいですか?」と聞かれると困るんですよ。何でも美味しいので、1つに絞れないんです(笑)
門脇 本当にそうですよね。甘いものが好きな人はもちろん、食べることが好きな人にはたまらない県だと思います。
津田 食は毎日の暮らしに直結しています。甘いものや食文化をきっかけに佐賀を訪れて、そのおいしさや暮らしの豊かさを感じてもらえたら嬉しいですね。
門脇 まずは佐賀でパフェを食べてもらえたら、きっと「佐賀って甘いもの天国だ!」って思ってもらえるはずです(笑)
門脇恵
一般社団法人 佐賀県地域おこし協力隊 ネットワーク代表(SCN)
総務省地域おこし協力隊 サポートデスク専門相談員
総務省地域おこし協力隊 アドバイザー
平成26年に佐賀市富士町地域おこし協力隊としてIターン。現在は佐賀県を中心に全国の地域おこし協力隊制度の中間支援をしている。山暮らしをしながら人と人、人と地域を結ぶことを楽しんでいる。
津田史人
佐賀県 地域交流部
さが創生推進課 地域振興担当 主査
令和3年に佐賀県へ中途採用で入庁したタイミングで佐賀市へJターン。同課で地域おこし協力隊の制度を担当している。
Information
東京で佐賀県地域おこし協力隊イベント、今年も開催!
佐賀県の地域おこし協力隊をより身近に感じていただけるイベントを、東京・清澄白河のリトルトーキョーで11月25日、および2027年1月20日に開催予定です。詳細は、ウェブサイト「日本仕事百貨」でチェックしてみてください。
「リントラ!」
地域おこし協力隊経験者のリアルな声をお届け
佐賀県で任期を終えた地域おこし協力隊経験者のリアルな声をお届けするインタビュー番組『佐賀県地域おこし協力隊ラジオ「リントラ!」』の配信を始めました。
生い立ちや地域おこし協力隊時代の話、協力隊任期終了後から今、そして未来の話などをお届けしています。
佐賀県地域おこし協力隊ホームページ
絶賛募集中の地域おこし協力隊情報、現役隊員の活動状況、OBOGのその後の暮らしや仕事まで、佐賀県内の協力隊情報をまるっとご覧いただけます!隊員希望者必見のサイトです。


