群馬とつながる。わがまちのキーパーソン
【VOL.5 沼田市|星野 学さん】
つながりを力に、挑戦をかたちに。
自身が支えられた経験を新たな一歩を踏み出す人へ

群馬県北部、日本有数の河岸段丘上に広がり、真田家が約90年にわたり居城した歴史から「天空の城下町」とも呼ばれる沼田市。果樹や野菜の豊かな産地であり、雄大な自然に恵まれた観光・レジャーのメッカでもある。このまちで花の事業を営みながら、移住コンシェルジュとして訪れる人と地域の人をつなぎ、新しい出会いと挑戦が生まれるきっかけをつくっているのが星野学さんだ。

お話を伺いました。

星野 学さ
  • 沼田市移住コンシェルジュ/朧月(ろうげつ)代表

埼玉県の花農家に生まれる。園芸専門学校卒業後、同校の職員として3年間勤務。花と庭づくりの道を志して群馬県甘楽町の造園業者で修業を積む。片品村への移住を機に、花の生産と寄せ植え講座を軸に事業を展開。みなかみ町を経て、2023年より沼田市に拠点を移す。講座の開催やマルシェの主催、イベント出店、庭づくりなど幅広く活動する一方、沼田市移住コンシェルジュとして移住者や関係人口の創出に尽力している。

 

花のワークショップから広がった、沼田市でのつながり

「地方に行きつけのお店があったり、顔なじみの知り合いがいたりすると、その土地との距離がぐっと縮まります。もし移住することになっても、気軽に相談できる相手がいるだけで安心感が全然違うと思うんです。僕はそうしたつながりがまったくない状態で来てしまったので、最初は苦労しました。でも、知り合いが少しずつ増え、仲間にいろいろな場所や集まりに誘ってもらううちに、活動範囲も仕事も広がっていきました」

そう話す星野さんが案内してくれたのは、沼田市の目抜き通り沿いにあるお店「N3 coworking & cafe ハートニー」(以下、ハートニー)。この場所で花の寄せ植えワークショップを開催したことが、沼田市での活動を広げる大きな転機となった。

星野さんのワークショップを目当てに地域内外から人が集まり、参加者がそのままハートニーの常連になることもあれば、反対にハートニーの利用者が星野さんに興味を持ち、新たな仕事へと発展することもある。小さな相乗効果を互いに育み続けてきた結果、ハートニーは今、沼田市に関心を持つ人や移住希望者、市内で起業を目指す人たちが集まる相談所のような存在になっている。


星野さんの花のワークショップは不定期開催。ハートニーでは他にも地域の人が主催するさまざまなイベントが開催されている。

「役所や公民館と違ってここはカフェなので、誰でも気軽に立ち寄れるし、お客さんとの距離も近いんです。都心から観光がてらこのカフェを訪れたことをきっかけに、移住した人もいるんですよ」と星野さん。

店内には地域の作家による作品やプロダクトが並び、イベント情報も掲示され、地域住民に限らず多様な人々が行き交う。まさに地域の“ハブ”と呼ぶにふさわしい場所だ。星野さんは移住フェアなどでも、「まずはハートニーに行ってみて」と紹介しているそうだ。

ハートニーは、「地域経済の活性化」をテーマにしたコワーキングスペース&カフェ。ワークスペースに加え、貸切可能なシェアスペースもあり、オンライン会議の会場としても利用可能。時にはイベント会場となり、人と人がつながる場を提供している。

 

目の前の仕事が、次の仕事の種になる。
人を介して広がるネットワーク

現在、沼田市には4名の移住コンシェルジュが在籍し、子育てに詳しい女性や、シニア世代の相談を担うベテランなど、それぞれの得意分野を活かしたきめ細かなサポートを行っている。

星野さんは、主にお試し滞在施設「沼田市移住促進トライアルハウス」の利用を希望する人との面談を担当するほか、沼田市に移住して新たに事業を始めたいという人からの相談に乗ることも多い。そこには、星野さんがこの地で知り合いゼロから事業を展開していった経験が大いに生かされている。


星野さんは日頃、移住コンシェルジュとして沼田市役所観光交流課に寄せられる移住相談に応じている。

もともとは隣の片品村で花農家として独立した星野さん。当時から生産だけでなく、寄せ植え講座や庭づくり、剪定、花壇の仕事など、花に関する多角的な事業を展開してきた。

「片品村の中だけでは市場が限られるため、沼田市やみなかみ町、川場村、高崎市、前橋市にも出向いていたんです。寄せ植えの講座やマルシェでお客さんと親しくなると、『今度、うちの庭を見てほしい』と依頼をいただくことがあります。そこから口コミでまた別の方へ…。沼田市に来てからも、目の前の仕事を一生懸命やると、次の仕事が用意されているという感じなんですよ。僕の仕事のほぼ全てが人からの紹介で成り立っています」


星野さんとパートナーの泉さんとの出会いはお花の講座。

こうした経験から、星野さんは沼田市を「スモールスタートがしやすいまち」だと感じている。空き店舗や空き家が点在し、都市部と比べて初期投資を抑えてやりたいことに挑戦しやすい。また、沼田市が主催する「ぬまた起業塾」の存在も大きい。何かを始めたいと考える人たちが集まる場があることで、志を同じくする仲間と出会い、つながりを広げていくことができるのだ。

「沼田市に関心を寄せて相談に来られる方には、『まずは人と関わること』『自分が何者であるかを知ってもらうこと』が大切と伝えています。地元の人たちは、適度な距離感を大切にしながらも、世話好きの人が多いように感じます。だから先に知り合いをつくることで道が開いていくんです。僕自身も移住当初は多くの人に助けられました。その時にしてもらって嬉しかったことを、今は移住コンシェルジュとして、沼田市に興味を持っている方々に提供しているんです」


「ハートニー」店主の遠西美子さん。「ぬまた起業塾」第一期生である夫が、美子さんが両親から引き継いだ空きビルを活用し、卒業生が集える場として夫婦で立ち上げたのが「ハートニー」だ。

 

起業塾やチャレンジショップも。
沼田市はスモールスタートしやすいまち

「沼田市はスモールタウンだからこそ、何か一つでも得意なことや好きなことがあれば、誰でも活躍できるし、それを仕事にできる可能性も高い」と語る星野さん。そこで、移住をきっかけに起業した人の例を挙げてもらった。

例えば、首都圏のレストランで働いていたシェフが沼田市に移住し、自宅の一角をリノベーションしてお店を開いたり、都心で映像制作に携わっていた20代の女性が、移住後にアップサイクル作家として活動を始めたケースもあるという。こうした移住者の動きに触発されてか、地元の人も会社員からヒンメリ作家に転向するなど、移住者と地元住民が互いに良い影響を与えながら、まちを楽しく盛り上げているという。


「ハートニー」でも小さな一歩を応援。店内には地域の作家や生産者が作ったプロダクトが並ぶ。

また、「ぬまた起業塾」だけでなく、市が支援するまちなかの空き店舗を活用した「チャレンジショップ」もあり、何かを始めてみたい人にとって、沼田市は恵まれた環境だといえる。

星野さん自身も、市内の「ふれあい福祉センター」で開催されるマルシェの運営を任されており、何かを始めてみたい人がいれば積極的に出店のきっかけをつくっているそうだ。


沼田市内の「ふれあい福祉センター」で、川場村の寺院が主催するマルシェが開催され、星野さんはその運営を担当した。

吉祥寺マルシェをはじめ、県外のマルシェにも出店。群馬で育てた季節の草花の販売や寄せ植え体験を通して、花の魅力や育てる楽しさを伝えている。

 

複業時代を先取りする柔軟な働き方と、
自然が近いライフスタイル

星野さんは、沼田市との関わり方の柔軟さにも可能性を感じている。移住や定住という形にこだわらず、それぞれのライフスタイルに合わせて、このまちと多様な関係を築いていける余地があるという。

沼田市は「フルーツ王国」と呼ばれるほど果物の栽培が盛んで、低山ハイキングから本格登山、さらにはスノースポーツまで楽しめる山々にも囲まれている。こうした地域の特性に合わせて、例えば夏はリンゴ農家で働き、冬はスキー場でインストラクターをしたり、宿泊施設で働いたりと、特定のシーズンだけ滞在する「関係人口」も、昔から一定数いるそうだ。

自然や農との距離が近い地域だからこそ、仕事も遊びも大切にしながら、健康的で質の高い暮らしを実現することができそうだ。自分らしい関わり方を探しに、まずは沼田市を訪れてみてほしい。

沼田市に興味を持つ方へのメッセージ

星野さん まずは一度、沼田市を体験しに来ていただきたいですね。観光でも遊びでも山登りでもいいし、マルシェや地元のお祭りなどイベントから入るのもおすすめです。その時にお店の人や地元の人と交流してみると、気質が肌で感じられると思います。その第一段階が気に入ったら、次は地元の居酒屋や温泉など少しディープな場所にも行ってみてほしいです。そこで知り合いやお気に入りのお店ができたら楽しくなりますし、もし移住することになっても、後から「思っていたのと違った」と感じにくくなると思います。毎日住まなくても、いろいろな楽しみ方ができるまちなので、まずは気軽に沼田に触れるきっかけを見つけてもらえたら嬉しいです。


朧月(ろうげつ)

群馬県沼田市を拠点に、草花や植物を通じて暮らしと地域をつなぐ活動を行う。季節の草花の生産・販売をはじめ、寄せ植えやガーデニングの提案、ワークショップの開催など、植物の魅力を身近に感じられる取り組みを展開。地域のマルシェやイベントにも積極的に参加し、花苗や植物を使った作品を通して、人と人が自然につながる場を生み出している。「花を地域に根ざした文化にしたい」という想いを軸に、日々の暮らしに寄り添う草花のある風景を大切にしながら、沼田の自然や季節感を発信している。

Facebook:https://www.facebook.com/878rougetsu/
星野さんのインスタグラム:@manabu.hoshino.87


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