
「Rethink Creator PROJECT」は、これからの地域に必要とされる「自ら考え、発信できるクリエイター」を、“学び”・“挑戦”・“実践”の機会を提供しながら日本中に創出していくプロジェクト。ひと口に「地域の魅力」といっても、外からの視点では均質的な価値観に当てはめてしまい、本質はなかなか見えてこないもの。「Rethink」とは、身近なことについて視点を変えて考えることで、日常の中にある魅力や価値を再発見すること。「Rethink Creator」は、身近な暮らしの中にある魅力を見つけ、クリエイティブで発信できる人材を意味する。
毎年開催されている「Rethink Creative Contest」は、クリエイター自身が暮らす地域の魅力をアピールするポスターを制作する〝挑戦の場〟。題材は日常の身近なコト・モノ・時間などクリエイターが自由にチョイスする。ビジュアルの完成度はもちろんのこと、アイデアの切り口や面白さを評価するので、デザイン制作が得意な人も、そうでない人もクリエイティビティを発揮できるコンテストとなっている。
2024年に行われた「Rethink Creative Contest」では以下のようなテーマで作品が募集された。
◆ コンテストのテーマ ◆
あなたの地元の
「当たり前だと思っていたこと」
「意外と知られていないこと」
「ちょっと残念なこと」
を、見方を変えて魅力的に伝えてください。
全国から920作品が集まった中、今回は昨年12 ⽉に結果発表された「最優秀賞」「特別審査員賞」の受賞者の中から3名にインタビュー。受賞の感想と、このプロジェクトに対する思いについてお話を伺った。
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最優秀賞
「すいかみかんばくわんね?」
山村悠月さん
作品テーマ地域 熊本県熊本市
今は高校の学科でデザインを勉強しています。私は福岡に住んでいるんですが、祖母が熊本出身で、小さい頃はよく熊本の家に遊びに行っていたんです。そんな中で、祖母が勢いよく熊本弁をしゃべると、祖母以外の家族は何を言っているのか理解できない、という場面がよくありました。今回は、祖母の「すいかみかんばくわんね?」という言葉に家族のみんなが「スイカ、ミカン??」となってしまった瞬間を題材にしています。一瞬訳が分からなかったけど、意味が分かると思わず『クスッ』と笑ってしまうような実体験をポスターに込めました。
学校では、物事をいろんな視点から見て、何が求められているかを考えるというデザインの授業もあり、そこで習ったことを生かしながら、熊本をどう表現したらいいかを考えました。
受賞についてはメールをいただいたのですが、そのあと公開されたウェブサイトではじめて自分が最優秀賞だと知ってとても驚きました。いい経験になれば、ぐらいのつもりだったのでまだ信じられません。自分の作品とは全然違う表現をしている方々の作品をすごいなって思いましたし、それを参考に、もっといい作品が作れるようになりたいなって思っています。
今回の制作を通して、熊本の出来事や人のあたたかさを思い出し、また訪れてみたくなりました。
山村 悠月
・出身地 福岡県久留米市 ・在住地 福岡県久留米市
・年代 10代
・経歴
現在高校2年生でデザインなど美術を学べる高校に通学しています。まだ経験が浅く、あまり公募にも参加できていません。なので、個人での作品の応募はRethink Creator PRPJECT が初めてでした。Rethink Creator PRPJECT で制作した作品は、パソコンのソフトを使い制作しましたが、そのような制作の仕方が初めてだったこともあり、操作方法などを調べながらの制作となりました。
自分の制作した作品が、最優秀賞を受賞した喜びを忘れずにこれからも、沢山の作品を作りたいと思います。
・インスタグラム https://www.instagram.com/yuz_uki0523/profilecard/?igsh=MXV2c2dhNmU5NWJidQ==
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特別審査員賞
「でかい顔してすみません!」
栗林真菜さん
作品テーマ地域 愛媛県
私は松山出身地で、現在も松山でタウン誌の仕事をしています。大学時代に地域貢献のゼミに入っていたこともあり、「Rethink Creative Contest」のコンセプトには初回からとても共感していますし、他の方の受賞作品を見てるいると、その地域に行きたくなりますね。
今回テーマにした石鎚山は「西日本最高峰の山」としてずっと誇りに思っていました。ポスターを作ろうといろいろと調べていたんですが、実は全国にはそれほど高い順位ではないことを知ってショックを受けたんです(笑)。そんな「知らずにすみません」の気持ちをキャッチコピーに込めつつ、ビジュアルは山の壮大さとインパクトが伝わるような構図にしています。243位と出すのは自虐的ではありますが、そこで想像力を働かせてもらって印象に残してほしいという意図でコピーを考えました。
私は4回応募していて今回が3度目の受賞になりますが、一つのものを同じ角度から見るんじゃなくて、いろんな人の目線や考え方で見て面白い答えを出すというのが、好きな地元のことでもあるので苦にならないですし、毎回とても楽しくやってます。
タウン誌では営業職に就いているのですが、打ち合わせでキャッチコピーを提案したりする場面もありますし、クライアントが「それ面白いね」って言ってくれることも増えました。地域の新しい情報に触れる機会が多い仕事ですが、何かうまい発信ができないかと考たりする練習の場としても、このコンテストがとても役立っています。
栗林真菜
・出身地 愛媛県松山市 ・在住地 愛媛県松山市
・年代 20代
・経歴
地域情報誌の出版・広告業の営業をしており、普段から地方の魅力や広告、キャッチコピーなどに触れる機会が多々あります。制作業はしていないものの、頭にあるアイデアを形にすることにもチャレンジしたいと思い、独学で作成し、コンテストに参加しています。
・インスタグラム https://www.instagram.com/mana_g_mana/?igsh=MWd3dnNjZG12azRncA%3D%3D&utm_source=qr#
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特別審査員賞
「視野を広げる交差点」
イハラさん
作品テーマ地域 宮城県仙台市
普段は地元である仙台市でウェブ制作の仕事をしています。以前は首都圏でデザインしていたのですが、地元に戻っても首都圏の仕事が大半ということもあり、自分が地域の良さを発信したいという思いが自然に湧きました。デザインで地元に貢献したり、自分の視点で地元をアピールできる機会がないかと探していたところ「Rethink Creative Contest」の存在を知り、参加しました。
テーマは宮城県仙台市にある日本一大きい交差点です。「レーンを間違えやすい」「事故が多い」「渋滞する」など問題が多くてちょっと残念な交差点ですが、見方を変えれば、一つの道にとらわれない広い視野を持たせてくれる交差点なのではと考えました。普段ネガティブに見られている面を、ちょっと視点を変えて、いいところとしてアピールしたかったんです。地域それぞれの良さの捉え方は、主観的であっていい。今回で2回目の応募になりますが、個人の視点、そこに住んでいる人じゃないとわからない地域の良さを表現したいと思っています。
このコンテストを通して、私と同じようなクリエイターがどんどん増えているのを見ると嬉しいですし、ワクワクしますね。そういう方が増えることによって、地元の人が地域を発信する仕事が増えていけば良いと思います。
イハラ
・出身地 宮城県仙台市 ・在住地 宮城県仙台市
・経歴
仙台のWeb制作会社で働いています。時々、仕事以外でも自由に制作を楽しんでいます。
◆
人材を育て、つなげる。
これからのクリエイターのあり方も「Rethink」する場
作品制作を通じて地域を見つめ直し、「Rethink」したクリエイターたち。住む人にしか見えない地域の情報を外に向けて発信するとともに、自らも新たな魅力を発見し、さらに地元愛が深まる、という好循環が生まれているようだ。イハラさんのお話にあったように、地域の魅力を発信する地元クリエイターに注目が集まる機会としても意義がある。また、クリエイター自身が、これからのクリエイターのあり方を「Rethink」するという一面もあるようだ。
「Rethink Creator PROJECT」では、全国のクリエイティブ人財を創出するために、コンテストのほかにもさまざまな場を無料で提供している。地域に密着したクリエイターを目指す人、つながりたい人、探している人は是非、チェックしてほしい。