キャベツ生産量日本一を誇る嬬恋村。雄大な浅間山を望み、世界三大奇勝の一つ「鬼押出し」や数多くの温泉に恵まれた関東屈指の高原リゾートだ。この地に移住し、庭づくりを通じて地域内外の人々と交流を広げている鳥山順子さんに、日頃の活動や嬬恋村の魅力を伺った。

- あさま高原オープンガーデン推進協議会副会長/嬬恋村キャベツ大使
夫の還暦を機に、約17年前に東京都昭島市から嬬恋村へ移住。趣味で始めたガーデニングの腕を磨き、「全国花のまちづくりコンクール農林水産大臣賞」など数々の賞を受賞。あさま高原オープンガーデン推進協議会の副会長として、多様な人々との交流を楽しみながら嬬恋村の魅力発信に尽力している。
オープンガーデンで広がる交流の輪
ガーデニング専門誌にたびたび紹介されてきた鳥山さんの庭は、広さ約600坪。傾斜や起伏のある地形を生かし、自生していた植物に寒冷地でもよく育つ植物を織り交ぜながら、自然の植生に近い景観へと仕上げている。
庭には小川が流れ、夫とともにDIYでつくり上げた橋や、鳥山さん自ら組み立てた小屋、小鳥たちの餌台、道案内の立て札などが散りばめられ、小径を辿れば、森と草花が放つ生命力を全身で味わうことができる。

起伏に富んだ約600坪の庭に、季節ごとの花々が彩りを添える。小屋やガゼボも、自然に溶け込むよう趣向を凝らした手作りの空間だ。
鳥山さんが庭づくりを始めたきっかけは、移住後に「あさま高原オープンガーデン推進協議会」の会長と出会ったことだった。会長も東京・八王子からの移住者で、農業大学で培った植物の知見を生かして花や苗を販売するお店を営んでいた。
鳥山さんはその店に通い、知識や苗を仕入れながら、自分なりに庭づくりに励んでいたという。ある日、鳥山さんの庭を訪れた会長からその美しさを称され、「オープンガーデンの仲間に入らない?」と誘いを受けた。
オープンガーデンとは、個人宅や施設の庭などを期間限定で一般に公開すること。鳥山さんが所属する、あさま高原オープンガーデン推進協議会のメンバーは、鳥山さんが加わった当時の28名から今では40名にまで増え、庭づくりの輪は村内に着実に広がっている。
メンバーそれぞれが趣向を凝らした庭を、マップを片手に訪問しながら庭主から直接話を聞いたり、お茶を囲んで交流したりできるこの催しは毎年夏に開催され、全国各地からガーデニング愛好家や植物好きたちが集まってくる。

オープンガーデンを通して、地域の人々や同じ趣味を持つ人々との交流を楽しんでいる。
「一人で庭づくりに没頭するのも楽しいですが、このオープンガーデン推進協議会に参加したことで、いろいろな人と知り合えました。まあ、面白いですよ。それまで専業主婦として家庭の中に収まっていた私が、嬬恋村に来て初めて外の世界へ羽ばたけたような気がしています」
「私」の庭から「みんな」の庭へ。嬬恋村に広がる交流の輪
庭づくりの腕前と明るい人柄を請われ、鳥山さんは4年ほど前から嬬恋村の地域交流センターにある広大な公共ガーデンの作庭とメンテナンスのチームに加わっている。庭の設計は、長野県諏訪市のガーデナー、ニコラス・レナハンさん。そのデザインに基づいて、村役場職員の男性をリーダーに、鳥山さんら住民有志が植栽や日々の手入れを担っている。村の「顔」となる美しいガーデンを創り上げ、今も自分たちの手で大切に守り続けている。
「とても素敵に仕上がりました。ぜひ多くの方に見ていただきたいですね」と鳥山さん。北軽井沢とも呼ばれる嬬恋村一帯には、庭づくりとそれを愛でるカルチャーが着実に根付きつつある。ガーデン鑑賞を目当てに訪れたり、二拠点目の土地を手に入れて思い切り庭づくりを楽しんだりすることも、嬬恋村と新たにつながるきっかけになりそうだ。


国籍も世代もジャンルも越えて。嬬恋村に根づく交流の風景
地域交流センターでは年に一度、外国人労働者と地域住民が集う「国際交流会」が開催されている。嬬恋村では、タイやベトナム、ネパールなどから来日した多くの外国人が、キャベツ農家やホテル、ペンションなどで働いている。この交流会は、異国の地で暮らす彼らが不自由な思いをせず、安心して過ごせるようにと村長が発案したイベントで、日頃の労いとして食事をふるまったり、参加者全員でゲームを楽しんだりする。2025年は約200名が参加し、鳥山さんはボランティア仲間とともに餅つきなどを行い、交流を深めたそうだ。

国籍や世代、地元住民、移住者などあらゆる垣根を超え、嬬恋村の人々が集う「国際交流会」は、例年11月頃に開催されている。
また、鳥山さんは嬬恋村で毎年開催される日本フィルハーモニー交響楽団や群馬交響楽団を招いたクラシックコンサートの実行委員も務めている。今年は昨年オープンしたばかりの「サーラ嬬恋」を会場に開催される予定で、とても楽しみにしているという。さらに、3年前には村民、移住・定住者によるオールボランティアで「鬼押出し園」一帯を会場としたクラシック音楽の無料イベント「星のプロムス」を企画・開催。星空鑑賞と音楽を掛け合わせたこのイベントには、1,000名を超える来場者が詰めかけた。
「『新しいことを考えて、やってみよう』と動く人がいるから、この村は面白いんです。地元の方だけでは難しいことも、外から来た人なら前職の経験を生かして形にできることもあります。今後は地元の人たちをさらに巻き込みながら、活動を広げていきたいですね」

鳥山さんが知人と企画した「星のプロムス」は、大きな反響を呼んだ。嬬恋村は視界を遮るものが少なく空が広いため、星空鑑賞には絶好のロケーション。
毎月あちこちでマルシェが開催。お店を巡るツアーも
昔から避暑地として人気の嬬恋村だが、コロナ禍を経てリモートワークが普及したことで、若い世代を含む移住者が増えている。首都圏と比べて住宅価格が手頃なことも、移住を後押ししている。地域おこし協力隊として村に入り、任期終了後に自ら起業して定住する人も少なくない。
「そうした方々が、デザイン業やコーヒーショップ、ネイルサロンなどを始めていて、村がどんどん面白くなっています。そのことをもっと多くの人に知ってもらえたら」と鳥山さん。
嬬恋村では暖かい季節になるとあちこちでマルシェが開かれ、地元の人や外から来た人も混じり合いながら、この地ならではの暮らしや食を楽しんでいる。昨年は、鎌原観音堂のある鎌原エリアで村内の店舗を巡るスタンプラリーイベントも行われた。
「嬬恋村の魅力は田舎でも都会でもないところ。草津や軽井沢という有名な観光地に挟まれて目立ちにくいかもしれませんが、実は多様なジャンルの人がいるとても面白い場所なんですよ」
そう熱く語る鳥山さん自身が、誰よりもこの村をいちばん楽しんでいるように感じられた。
朗らかに笑う鳥山さんは、この地でたくさんの仲間とつながりながら、第二の人生を思い切り楽しんでいるようだ。
考えすぎず、楽しむのがいちばん。
未知の土地で豊かな人間関係を築く秘訣
知り合いのいない土地で新たなことにチャレンジしたり、たくさんの人とつながる秘訣は何なのだろうか。鳥山さんに尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「考えすぎず、まずやってみるという姿勢ですね。あれこれ考えていると、『失敗するかもしれない』と足が止まってしまいます。もし失敗しても、『まあいいか』で終わり(笑)。世間を揺るがすような大失敗なんて、そうそうありませんから。何か面白いことが起きるかもしれない、くらいの気持ちで楽しむのがいちばんだと思います」
鳥山さんの夫も、移住当初は現役引退後の時間を持て余していたが、嬬恋村でゴルフ仲間ができたことをきっかけに、今ではこの地での日々を満喫しているそうだ。
「夫婦で、『こんな暮らし方もあったんだね』と話しています」
東京で慌ただしく過ごしてきた日々から、豊かな自然に包まれ、好きなことを好きな人たちと味わう生活へ。鳥山さんの充実した表情そのものが、何よりも雄弁にこの村の魅力を物語っている。
嬬恋村に興味を持つ方へのメッセージ
鳥山さん ガーデンや星空の鑑賞、ジオパーク、マルシェ巡り、音楽、ゴルフ、農家のお手伝いや収穫体験など、嬬恋村にはたくさんの魅力あるコンテンツがあります。その中からまずは一つ、自分の興味のあることを入り口にこの村を訪れてみて欲しいですね。村のことをもっと知りたくなったら、ぜひ地域交流センターに足を運んでみてください。イベント情報をはじめ、移住定住や地域おこし協力隊の案内、テレワークスペースなどもあります。一緒に嬬恋村を面白くしていきましょう。
あさま高原オープンガーデン推進協議会
浅間高原エリアを中心に、庭づくりを通じた交流と地域の魅力発信を目的に活動する団体。会員や地域住民が育てた庭を一般公開する「あさま高原オープンガーデン」を開催し、高原ならではの自然や四季折々の花々の美しさを来訪者と共有している。庭を介した人と人とのつながりを大切にし、地域活性化に取り組んでいる。
Facebook:https://www.facebook.com/asamagarden/