雄大な赤城山を望み、都市の利便性と豊かな食を育む農山村部が溶け合う前橋市。お子さんの教育環境を見据え、このまちに移住したばかりの本多弘和さんに、その決断の理由とこれからの暮らしについて伺った。
本多弘和さん
埼玉県→前橋市(2026年移住)
長崎県出身。福岡で長年過ごし、2014年に東京に転勤。小売・リフォーム業界でDXやウェブマーケティングを担当。シェアハウスでのコミュニティ活動経験を持ち、地域に関わる活動が好きな3児の父。長男が小学校に上がるタイミングで前橋市に移住。
午前11時。
家から15分の赤城山で
家族とスロースタートの
のびのびデイキャンプ
子どもの頃、家族によく自然の中へ連れて行ってもらいました。大人になるにつれて自然から遠ざかってしまいましたが、子どもが生まれたことをきっかけに、「かつて自分がしてもらったことを今度はわが子にも」と思うようになりました。以来、休日に家族でデイキャンプへ出かけるのが、わが家の楽しみになっています。都心に住んでいた頃は、キャンプ場の場所取りもひと苦労(笑)。僕だけ朝7時に行ってテントを張り、家族を迎えに行くということもしばしば。それに比べて前橋では、家から車で15分ほど行けば広々としたキャンプ場や遊び場がたくさんあります。このまちなら、家族みんながのびのび過ごせそうな気がしています。

この日は赤城山中腹の富士見町にある「赤城COCKOBASE」でデイキャンプ。晴れの日が多く、日照時間の長い前橋はアウトドアに好適。
――移住を考え始めたきっかけや、前橋を選ばれた理由について教えてください。
本多さん|もともと妻が高崎市出身で、以前から群馬を訪れる機会が多くありました。そうしたご縁が前提としてあった中で、長男がこの春、小学校に入学するタイミングを迎えました。長男には発達特性があり、特別支援学校への進学を考えていたため、首都圏を中心にさまざまな学校を見学して回りました。その中で出会ったのが、前橋市内にある特別支援学校です。教育環境に魅力を感じ、「ぜひここに通わせたい」と。学校ありきで決めたというのがいちばんの理由です。
妻の実家が近くなる安心感や、自然に恵まれた環境、住まいの広さや生活費のバランスなども含めて、総合的により質の高い暮らしが実現できるのではないかとも考えて移住しました。
当初、妻は冗談だと思っていたようですが、学校や暮らし方のイメージが膨らむ中で、徐々に移住を魅力的に感じていったようです。

「まえばしID」という市独自の仕組みにより、教育・医療・福祉の連携が実現。子どもの成長や支援情報を関係機関で共有でき、安心して子育てできる環境が整っているという。
――その特別支援学校のどんなところに惹かれましたか?
本多さん|一番特徴的なのは、支援学校が独立しているのではなく、一般の子どもたちが通う小学校の校舎とつながっている点です。3兄弟が一人だけ特別な学校に行くのではなく、みんな一緒の学校に通えるのはとても良いなって。実際に見学した際には、先生方や在校生の雰囲気も温かく、安心できる印象を受けました。また、1学年3名ほどの少人数制であることも、大人数が苦手な長男にとっては大きな安心感につながるのではないかと思っています。


――移住と家探し、学校選びはどのような順番で進めましたか?
本多さん|学校探しを始めたのは移住の1年半ほど前からです。最初は都心部の学校を見て回りましたが、どこかしっくりこなくて、次第に群馬にも目を向けるようになりました。そんな中で大学付属の少人数の支援学校に魅力を感じて、前橋にも付属の支援学校があることを知り、「ここが良さそうだ」と感じたことが大きな転機となりました。
その後は、学校を軸に住まいを検討し、毎日の送迎など家族の負担を考えて学校の近くに住むことを前提に家探しを始めました。もともと都心部での暮らしを思い描いて家探しをしていましたが、改めて群馬の物件を見てみると、広さにも価格にもゆとりがあり、家族みんなが心地よく暮らせそうだと感じるようになりました。
長男の学校の合格が決まり、移住を決意したのと同じ時期に、学校の近くに物件が出ている情報をキャッチしていたので、すぐにその家を契約し、そこからは急ピッチで前橋への移住を進めました。さまざまな移住のサポートを受けられたのがありがたかったですね。
――どんな移住サポートを活用しましたか?
本多さん|市の移住担当課に相談に伺ったところ、「移住コンシェルジュ」がいると紹介していただきました。移住コンシェルジュの方には、現在住んでいる地域の自治会長をご紹介いただいたほか、僕たちと同じように移住してきた方々のコミュニティも案内していただきました。
まだ移住前ではありましたが、移住者交流会の餅つき大会に参加して、いろいろな方と知り合うことができました。

移住前に、移住者交流会の餅つきイベントに参加。移住した人や移住検討中の人たちといろいろな話ができたという。
――暮らし始めて、地域の住み心地はいかがですか?
本多さん|移住して間もなく、町内活動に参加したんです。各家庭で集めた資源ごみを決められた日に家の前に出し、それを町内のメンバーが協力して回収し、4トントラックに積み込んで運ぶという活動です。
その後の会食にも呼んでいただき、公民館で町内の方々と食事をともにしました。壁には昔の写真が飾られていて、そこに写っている壮年の男性が、いま目の前に座っているおじいちゃんだったり、その隣に息子さんが座っていたりする。そんな中で一緒に食事をしながら、この土地に流れてきた時間や、代々受け継がれてきた歴史のようなものを身近に感じました。「なんだかいいな」と、じんわりと温かい気持ちになりましたね。
――そういう地域の活動は、億劫だったりしませんか?
本多さん|僕は逆に好きなんですよね。以前は都内で古い建物をリノベーションしたシェアハウスに住んでいて、シェアキッチンを住人同士で共有しながら、まちの人にも開放し、一緒に何かを生み出していくような活動をしていたんです。マルシェを開いたり、地域を盛り上げようとする人たちの輪に加わったり。
前橋でも、空き店舗や空き家を活用して新しい取り組みを始めている人たちがいると聞いています。そうした動きにも興味はありますが、まずは今暮らしている町内のコミュニティとのつながりを大切にし、足元から関わりを深めていきたいと思っています。


――前橋でのこれからの暮らしについて、どんなことを思い描いていますか?
本多さん|前橋は、思っていた以上に自然が身近なまちでした。山や川、広い公園やキャンプ場など、さまざまなフィールドに家から気軽に足を運べます。この恵まれた環境の中で、家族で過ごす時間をより充実させ、自然と触れ合う機会をもっと増やしていきたいです。
個人的には空き家のリノベーションや農業にも関心がありますが、まずは地域のコミュニティの中で、みんなで楽しめることを少しずつ始めていけたらいいですね。

透明度の高い清流が身近な群馬では、暑い季節に川遊びで涼を楽しむ人が多い。

前橋市内にある「自称日本一小さなスキー場」と謳う「
――これから移住を考えている方に、伝えたいことはありますか?
本多さん|前橋で子どもと過ごしていて感じるのは、やはり都心よりものびのびと遊ばせられる環境があるということです。家から30分もかからずにキャンプ場へ行けて、ほぼ貸し切りのような感覚で過ごせることもありますし、まちなかの児童館やプレイルームも広々としていて、思いきり体を動かせます。
子育て中の方、特にお子さんの発達に少し特性がある場合、人口密集地では周囲との「距離感」に悩むこともあるのではないでしょうか。周囲の視線が気になったり、マンションでは生活音をめぐって気を遣ったり…。そうした悩みを抱えている方にとっては、もしかしたら前橋はとても良い選択肢になるかもしれません。家族も本人も、きっとのびのびできるのではないでしょうか。

移住後は「高崎に住む母に子どもを預けたり、泊まりに行ったりと子育てを助けてもらいやすくなった」と妻のゆりかさん。3人の孫に頻繁に会えるようになり母も喜んでいるという。
本多さんが活用した支援制度
新しい土地での暮らしを検討する中で、前橋市の「移住コンシェルジュ」にも相談。移住コンシェルジュは住まいや仕事、子育て環境など、移住にまつわるさまざまな疑問に寄り添いながら、丁寧にサポートしてくれる心強い存在です。
詳しくは 群馬県移住ポータルサイト をご覧ください。
編集後記
教育環境を最優先に考えた学校選びから始まり、住環境や経済面、家族のサポート体制までを総合的に検討したうえで、群馬への移住を決断された本多さん。最高のアウトドアフィールドである赤城山の懐で、四季折々の自然の変化を肌で感じながら成長していく日々は、子どもたちの感覚や感性を、きっと豊かに育んでいくことでしょう。家族の時間を大切にしながら地域とのつながりを築き、自分たちのペースで、のびやかに前橋での子育てを楽しまれていくのだと思います。
ぐんまトリビア
地元で愛されるほるもん屋
本多さんがキャンプのお供によく購入するという「第一ほるもん」のお肉。豊富な品ぞろえに加え、脂の乗った和牛やプリプリとした牛ホルモンを良心的な価格で提供している人気店。キャンプ前に立ち寄る常連も多いそう。
初・遊園地は「るなぱあく」
本多さんのお子さんたちもお気に入りの、楽歩堂前橋公園内にある小さなお子さまも楽しめる遊園地。入園料は無料。大きな乗り物は1回50円、小さな乗り物は1回10円で遊べる。