2026年1月17日(土)・18日(日)、群馬県神流町を舞台に「林業しごと体験ツアー」が開催されました。現地の林業従事者との林業体験や交流を通じて、“森と共に生きる仕事”を肌で感じた2日間。ツアーの様子を写真と共にご紹介します!
群馬県神流町とは?
今回のツアーの舞台となった群馬県には約42万ヘクタール(県土面積の3分の2)の森林があり、木材生産や水源涵養、洪水防磁、生物多様性機能の保全といった様々な役割を果たしています。
中でも、県の南西部に位置する神流町は、森林資源が町の約90%を占める自然豊かな地域。西上州の雄大な山々に囲まれた町は平坦地が少なく、「関東一きれいな川」と評される神流川が流れ、アユやヤマメの姿を見ることもできます。日本で初めて恐竜の足跡化石が発見された場所としても有名です。
DAY1.(2026.1.17)
11:30 藤岡市鬼石町「ライフパレットカフェ」
東京から新幹線で50分の「高崎駅」に集合した参加者は、バスに乗り込み藤岡市鬼石町の古民家カフェ「ライフパレットカフェ」へ。昼食を兼ねたオリエンテーションを行い、2日間の旅程を共にするメンバーが顔を合わせました。
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今回、ツアーに参加した人数は10組12名。大学生から社会人まで、性別や属性は様々ですが、林業や自然に関心を寄せる人たちが集まりました。自己紹介の後は「里山保全ボランティア活動をしていたんです」「チェーンソーの扱いって難しいですよね」「二拠点生活をしながら移住を検討していて……」といった会話が盛り上がり、すぐにカフェ全体が和やかな空気に包まれました。
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昼食は、鬼石地域の食材を使ったランチセット。採れたての新鮮野菜や店主自ら育てた玄米で作った酵素玄米などを堪能しました。
食後のカフェタイムを終えると、いよいよ旅が始まります。
13:40 多野郡神流町「中山神社」
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鬼石町から神流川沿いの国道462号線、通称「十石街道」を通り神流町へ。バスの車窓から見える薄水色の湖面やレトロな街並みを楽しみながら、最初の目的地である大字魚尾地域の「中山神社」へ到着しました。
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ツアー初日である17日は偶然にも、地域で古くから「山の神の日」として大切にされてきた日。地域の林業関係者の皆さんが山の恵みへの感謝と日々の安全を祈願する神事を行うと聞き、ツアー参加者もこれからお世話になる山々へのご挨拶と旅の安全祈願のために同席させていただきました。
神事ではチェーンソーやヘルメットといった林業の現場で使う道具も清められ、普段は体験できない“山の営みのリズム”を肌で感じる体験となりました。
14:45 多野郡神流町「平松林業」
再びバスに乗り込み、「平松林業」さんの土場(※)へ。いよいよ本格的な林業体験が始まります。
※土場=資材置き場のこと
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今回レクチャーしてくださったのは、地域の林業・森林ビジネス従事者による地域団体「あなたと森の物語」の皆さんです。木材の「玉切り」と「薪割り」を教えていただきながら、林業の仕事についてお話を伺いました。
\協力いただいた講師の皆様/
山田美香さん(神流振興株式会社 職員)

今井陽樹さん(合同会社ひのきや 代表)

平松譲さん(平松林業)

高部直人さん(平原林業)

三澤望太さん(神流町会議員・ツリートップ三望)、大村彰宏さん(個人事業主)

岡田典子さん(埼玉県中央部森林組合)

宮下なおさん(個人事業主)

平田慎さん(個人事業主)

伏田光作さん(個人事業主)

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「玉切り」とは、伐倒した木をチェーンソーなどで輪切りにする作業のことです。「日本伐木チャンピオンシップ」で日本記録を獲得した今井陽樹さんを中心に、安全具の使い方からチェーンソーの扱い方まで、丁寧に教えていただきました。
ヘルメットやイヤーマフ、チャップス(防護ズボン)、防護ブーツは、林業にとって必須の道具といえます。着脱方法や安全に作業するための注意点を聞きながら、実際に今井さんが玉切りをする様子も見学しました。
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最初は緊張気味の参加者たちでしたが、全員が自らの力で玉切りに成功!玉切りした木材は、それぞれのツアー中の椅子として活用することになりました。
その後、薪割りにも挑戦し、木と向き合う時間に没頭していると、あっという間に日暮れを迎えました。実際の作業を通じて、林業の楽しさと大変さ、達成感を知る貴重な体験ができました。
16:15 多野郡神流町「神流フォレストベース」
この日最後に訪れたのは、令和5年に開設された神流町産材「神流杉」「神流檜」のPR拠点「神流フォレストベース」。建物の横には神流川が流れ、対岸には道の駅「万葉の里」があります。
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建物に入る前に、今井さんの案内で近くの林へ。木や土の匂いを感じながら歩いていくと、斜面に一つのベンチがありました。
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「このベンチは、切り株を利用して固定しています。伐倒したスギの木をチェーンソーで半割にして作ったんですよ」と話す今井さん。幹の太さに合わせて切り株を穿ち、伐倒した木を渡して固定したそうです。ベンチは長く丈夫で、参加者全員が座った景色は圧巻です。
続けて、今井さんは「この辺りには、樹齢60年ほどの木が生えています。今ここにいる私たちより、木々の方が年上ですね。この木は、どうしてここに生えていると思いますか?」と問いかけます。
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「答えは、60年前の人たちが山を登り、一つ一つ苗を植えてくれたからです」
今井さんは、林業の仕事は“命を扱う仕事”だと語ります。何十年も前に木を植えてくれた先人たちの想いを受け継ぎ、命として大切に活用すること。伐採後の山へ新たな木を植えることで、山の土砂崩れや洪水を防ぎ、暮らしを守ること。山の命と同様、自らの命も自然の一部として大切に扱うこと――そうした仕事観・人生観について、じっくりお話をお聞きしました。
16:15 交流会
盛りだくさんの1日目が終了し、夜は「神流フォレストベース」で交流会!地元中学生による演奏で歓迎されて始まった宴には、多くの地域の方や林業関係者の方が集まり、賑やかで温かな夜が始まりました。
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夕食には、神流町の古民家宿「川の音」の板長が腕を振るった特製弁当をいただきました。神流杉で燻製したヤマメの一夜干しや、神流町特産のあわばた大豆で作る「みかぼ味噌」の味噌カツなど、地域の美味しさが詰まったメニューの豪華さに誰もが大喜び。地域の方が手作りしたこんにゃくや漬物、鹿肉の煮込み、呉汁なども振舞われ、美味しい料理と温かな気遣いが疲れた心身に温かく沁みました。
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\協力いただいた「あなたと森の物語」メンバー/
平松美樹さん

高部真由美さん(mugiccoぱん)

参加者は神流町での暮らし方や林業の働き方なども話を伺いながら、それぞれの未来へ考えを深める時間を過ごしました。
会の終わりには、チェーンソーの刃を素早く安全に交換する「ソーチェン着脱」を今井さんが実演。ものの数秒で刃を交換する手捌きに、ひときわ大きな歓声が上がりました。参加者もやり方を教わりながらソーチェン着脱を体験しました。
「こうした競技も道具への理解を深めたり、林業に関心をもってもらうきっかけの一つになりますね」と今井さん。
明日への期待を胸に、楽しい1日目が終了しました。
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DAY2.(2026.1.18)
9:10 多野郡神流町「神流フォレストベース」
2日目の始まりは、「神流フォレストベース」での座学からスタート。
スタッフさんが淹れてくれた神流杉のおが粉と緑茶のブレンドティー「神流杉茶」 でほっと一息ついてから、群馬県林業振興課の富岡さんと神流町産業建設課の加藤さんに、県内の林業の現状や課題、神流町の取り組みなどをお話いただきました。
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群馬県には豊富な森林資源があるものの、林業従事者数は約700名と深刻な人手不足が続いています。そこで、未経験者の就業を後押しする国の制度「緑の雇用制度」だけでなく、一般財団法人群馬県森林・緑整備基金による「無料職業紹介所」の開設や、ぐんま森林・林業就業ナビ「森ワーク」の設置など、様々な支援制度が導入されています。
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特に、神流町では「神流町林業再生プロジェクト」として、森林の整備だけでなく人材の確保・育成・定着や安定供給体制の整備、森林空間や木材資源の新たな活用にも取り組んでいます。
「伝統木造建築に関わる人材育成を行う大工志塾との連携や林業女子会研修の受け入れ、地元の杉や檜のブランド化、森林組合直営食堂の運営など、幅広い分野から林業振興に力を入れています」と話す加藤さん。参加者は真剣な眼差しで話を聞き、具体的な取り組みや支援をメモする姿が見られました。
9:50 多野郡神流町「神流フォレストベース」
座学の後は、外に出て待望の伐倒見学へ。昨日に続き、平松さんと高部さんが講師となり、伐倒の様子を解説しながら実演してくれました。
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まず、平松さんがスローラインの使い方を説明します。スローラインとは、細いロープに重りが付いた道具で、伐倒したい木の枝に投げかけることで木を倒す際の「けん引用ロープ」として使うことができます。平松さんは「作業者が木に登る必要がないため、仕事を安全かつ効率的に進めることを可能にする道具です」と話し、軽々と15mほど頭上の枝にロープを通します。その間に、高部さんが別の木に取り付けたウィンチへロープを通し、伐倒の位置を確認したら準備は完了。チェーンソーを取り出し、伐倒が始まります。
「伐倒の際、最も大切なことは“木がどう倒れるか”を考えることです」と平松さん。一本の木の重さはおよそ800キロ前後、山の斜面では様々な危険が想定されます。蔓の絡まりや木の浮き上がりにより、伐倒者自身にも危険が及ぶことも。平松さんと高部さんが息を合わせ、慎重に作業が進められます。
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今回の伐倒方法は「追い口切り」という手法です。伐倒方向に「受け口」という切り込みを入れ、反対方向から水平にチェーンソーを入れていきます。この時、チェーンソーで木を全て切るのではなく、受け口に到達する前に刃を抜くことがポイントです。切られていない切り株の根元が蝶番のような役目を果たし、受け口が閉じるように木の倒れる方向をコントロールできるようになります。
平松さんがチェーンソーを入れ、高部さんがウィンチで木を引くと、木の重みですぐに受け口が閉じていきます。ほどなくして大木が地面を揺らして倒れると、2人の作業を固唾を飲んで見守っていた参加者からは感嘆の声が上がりました。
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伐倒後は、枝を落として玉切りも実演。参加者からは作業の注意点や心構え、伐倒後の木の処理など様々な質問が出ました。特に「倒れる前は真っ直ぐ生えているように見える木も、倒してみると曲がっていることがわかる」という話に驚きながらも納得する人が多く、曲がっている材木の活用方法や、製材に適した木材を確保することの難しさについても話が弾みました。
その後、参加者は伐倒した木の枝葉を採取。午後のアロマオイル抽出体験に使用する材料を自ら集めました。
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11:20 多野郡神流町「神流町麻生木材ヤード」
伐倒された木材の後を追い、次に向かったのは丸太集積所「神流町麻生木材ヤード」です。
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一般的に、切り出した木材はサイズや品質ごとに等級が振り分けられ、価値に応じた価格が付けられます。神流町麻生木材ヤードでは、すでに納品先と価格が決まった木材が保管されており、長さや直径、曲がり具合ごとに細かく仕分けして積み上げられています。集積所には木材をチップ加工する場もあり、木材ごとに活用方法を変えて出荷されていることが説明されました。
11:40 多野郡神流町「町営住宅」
出荷された木材は様々なタイプに製材され、建築物へと姿を変えますが、その一例として「神流町麻生木材ヤード」の近くに建つ町営住宅を見学しました。
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神流町の木材を用いて伝統的な工法で作られた建物の美しさに、参加者は「ここに住みたい!」と大盛り上がり。山から切り出された木が社会へ活かされている姿を改めて確認することで、林業の重要性を実感することができました。
12:00 多野郡神流町「道の駅 万葉の里」
たくさんの学びを得た午前が終わり、「道の駅 万葉の里」でお昼休憩。ます重や手打ちそば、特産大豆を使った豆乳プリンなど、神流町らしい食事を楽しみました。
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お土産品などの買い物を済ませた後は、万葉大吊橋を渡って「神流フォレストベース」へ。橋板の中央から下を流れる川が見えるスリル満点の名所も楽しみ、ツアー最後のプログラムへと向かいました。
13:10 多野郡神流町「神流フォレストベース」
参加者にとってすっかり落ち着く場所となった「神流フォレストベース」へ戻り、講師の山田さんによる「木×ものづくり」体験に参加。午前中に伐倒したヒノキの枝葉を蒸留し、アロマオイルを作りました。
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「まずは4種類の香りを嗅いでみてください」と山田さん。参加者はそれぞれの香りを試しながら、香りの印象や自分の好みを確かめました。山田さんは「心身の状態によって、香りの好みや感じ方は異なります」と話し、香りを通じて自分自身を知ることや自らをケアする方法として役立ててほしいといいます。参加者全員で香りを楽しみながら “森呼吸” し、リラックスした時間を過ごしました。
山田さんは美しい自然に惹かれて神流町へ移住を決め、この土地で初めてアロマオイル作りに挑戦したそうです。「森林に足を踏み入れた時の心地よさの一つには、木や草花が出すフィトンチッドという成分が関係しています。今回の伐倒したヒノキから作ったアロマオイルにも同様の成分が含まれていますので、リラックスしたい時などに活用してください」と林業と森林の持つ多面的機能もお話いただきました。
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また、山田さんは美しい自然に惹かれて神流町へ移住を決め、この土地で初めてアロマオイル作りに挑戦したそうです。「森林に足を踏み入れた時の心地よさの一つには、木や草花が出すフィトンチッドという成分が関係しています。今回の伐倒したヒノキから作ったアロマオイルにも同様の成分が含まれていますので、リラックスしたい時などに活用してください」と林業と森林の持つ多面的機能等含めお話いただきました。
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「神流フォレストベース」にはガラス張りの蒸留室があり、実際にアロマオイルが抽出される様子を間近で見ることができます。蒸された枝葉の香りが室内に充満し、心地よさから眠気を感じる参加者も。蒸留されたものの多くは芳香蒸留水となり、上澄みの一部が凝縮されたアロマオイルとして活用されます。
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参加者は芳香蒸留水をボトルに詰め、手書きのラベルを作成。今回蒸留されたアロマオイルを垂らしたディフューザーと神流町特産の「万葉豆腐」もお土産にいただき、ツアーのよい記念となりました。
最後に、神流町の加藤さんは「林業従事者だけでなく、林業の魅力を外部へ発信するための人材も募集しています。それぞれの関わり方で、神流町に関わっていただければうれしいです」とコメント。まさに、“木を切るだけではない”林業の魅力を、参加者へたくさん伝えていただきました。
群馬県林業振興課の渡邉さんは「これまではチェーンソーや刈払い機を使っていただく林業研修を実施していましたが、今回は具体的に林業と関わり暮らすことをイメージできるような幅広いツアー内容にしたため、より林業の奥深さに触れていただけたのではないかと思います」と振り返ります。
参加者からも「林業の技術・経済的な話ばかりではなく、林業に関わる方の想いや哲学に触れられたことがよかった」「森林を中心とする文化・産業が多岐に渡ることを学ぶことができ、多様な関わり方があることが知れた」「地域の方のおもてなしが素晴らしく、実際に移住された方からも話を聞けて参考になった」という声が聞かれました。

ある参加者は「林業って、命や想いと向き合う仕事なんですね」と、自らの仕事観が変化したことを感想に記しました。帰りのバスに乗り込んだ後、参加者が名残惜しそうに手を振ったあの町が教えてくれたのは、森林と共にある豊かな暮らしの在り方だけでなく“生き方そのもの”だったのではないでしょうか。
自然の恵みが巡り、温かな人たちとの交流がある神流町。短い旅の中で触れた自然の美しさや人々の想いが、参加者の道を照らす指針になることを願っています。林業にご関心のある方はもちろん、自然や人との交流がお好きな方は、ぜひ神流町を訪ねてみてください。
文・写真/西涼子
\information/
ぐんま森林・林業就業ナビ『森ワーク』
https://moriwork.jp/
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一般社団法人 群馬県森林・緑整備基金『無料職業紹介所』
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