関係人口創出のその先へ。持続可能な地域を目指す山口市の挑戦。
〈TURNSプラットフォーム事例紹介〉

関係人口の創出に取り組んでいる山口市は、TURNSとの共催で202311月から約3か月にわたり、全4回の連続講座『やまぐちローカルビジネススクール2023』を開催した。

山口市は、米などの農作物や、りんご・みかんなどの果樹、養殖クルマエビに代表される海産物の生産が盛んな一方、国内市場の縮小や若年層の首都圏転出などを背景に、事業の継続や成長に悩みを抱えている地域事業者が少なくない。 

こうした課題を踏まえ、厳しい環境下でも新しいチャレンジを試みる市内の人材と、実績豊富な県外のゲストが出会い学び合う機会をつくるため、TURNSと協力して今回のプロジェクトを企画した。企画にあたって重視したのは、山口市の人材と県外で活躍するプロフェッショナル人材をつなぎ、事業終了後も持続可能なコミュニティをつくることだ。

年齢も職種も多様な30名のローカルプレイヤーに加え、各分野の第一線で活躍するゲストも全国各地から結集。地域・業種の垣根を超えて互いに学び支え合う新たなコミュニティを生み出した。 

各分野のプロをゲストに招き、 地域内外の人をつなぐ場を創出 

11月から1月までの約3か月、全4回にわたって開催された『やまぐちローカルビジネススクール2023』には 山口市の陸の玄関口・JR新山口駅に隣接する『産業交流スペース Megriba(メグリバ)』を会場に、地域事業者をはじめ、大学生や起業希望者、行政職員まで幅広い人材が参加。マーケティングや広報PRなど、各分野のプロフェッショナルをゲストに迎え、各回120分、先進事例の共有や受講生同士のディスカッションなどを繰り広げた。 

そのため、各回の講座はゲストによる講話に加え、受講生同士の交流やゲストとのディスカッション、地域事業者とゲストとの対談など、相互に関わり合えるプログラムをふんだんに盛り込んで実施した。 

また、第1回講座の翌日にはゲストとともに山口市内を巡るフィールドワークを開催。新たな商品づくりやブランドづくりに取り組む地域プレイヤーの下を訪ねてその思いに触れることで、講座だけでは得られない五感をフル活用した学びの場を提供した。一部の講座ではゲストが手がけた商品の試食や即売会を実施するなど、楽しく学び続けられる工夫も散りばめた。 

 

キックオフセミナー・事業説明会 ゲスト:村岡浩司さん(株式会社一平ホールディングス) 

 

実践者ならではの学びをシェア 受講生からは驚きの声が続々と 

1027日に開催された事業説明会兼キックオフセミナーには、九州各地の雑穀を使った『九州パンケーキミックス』をプロデュースした村岡浩司さんが登壇。市内事業者の経営支援に奔走する西倉慎顕さんと対談したほか、麹を使ったクラフトビールを造る礒金大樹さん、地元銘菓を承継した渡壁沙織さん、農業の理念経営に励む藤村敏浩さんによるプレゼンでは、「着眼点が素晴らしい!」「事業は骨格さえ作ればぶれないよ」と熱いエールを送った。 

1110日からは本講座がスタート。静岡県を拠点に多彩な商品やサービスを支援するマーケターの桜井貴斗さんは、すぐに活かせるヒントや具体的なノウハウを交え、サウナ施設やカフェのマーケティング事例を紹介。受講生は「マーケティングの本質と、それを地方で実践する意義が分かった」「自分の商品を初心に帰って見つめ直すいい機会になった!」と手応え十分。地元代表として登壇した礒金大樹さんは、自らの事業展開について桜井さんから公開アドバイスを受ける一幕も。 

続く12月1日には、青パパイアのブランディングに挑戦中の岩本脩成さんが登壇。青パパイアを使ったカレーやシロップを味わいながらの交流タイムでは「青パパイアの食感が新鮮!」とその場で購入する受講生が続出していた。岩本さんと対談した渡壁沙織さんは、同じ食品製造販売事業者として共感するポイントが多くあったようで、受講後も互いの商品の特徴を紹介し合うなど交流を深めていた。 

 

第1回講座:マーケティング 

フィールドワーク 

 

同志とのつながりは 持続可能な地域づくりに不可欠 

1215日に第3回講座を迎えるころには受講生同士のつながりも広がり、グループディスカッションの熱量はさらに高まりを見せた。特にゲストの下園正博さんがシェアした商品開発や販路開拓のノウハウは受講生たちに響いたようで、「商品開発にあたってターゲットを絞ってコンセプトを練るという過程がいかに大切か、実例を交えて分かりやすく楽しく学ばせていただきました」といったコメントが上がっていた。

また下園さんのビジネスに取り組む姿勢にも刺激を受けたようで、「背後にあるチームマネジメント論や社員との向き合い方など哲学的なお話も聞けて、充実していました!」と熱量たっぷりに感想を述べてくれた。 

迎えた1月19日の最終講座には、新聞記者や経済誌編集者としての経歴を持つ情報発信のプロ・林亜季さんが登壇。プレスリリースの活用術を伝授された受講生は、「プレスリリースを出すと決めてからニュースを考えるという逆算の思考と手法に目から鱗でした!」「情報発信が長年の課題だったので、最後にピッタリの学びを得ることができて本当に最高でした」と、多くの気付きを得たようだった。 

 

2回講座 ブランディング 

3回講座 商品開発・販路開拓 

第4回講座 広報PR 

 

人材や予算が限られていても、事業を成長させたり、新しいビジネスを生み出したりする可能性はどの地域にも必ずある。それを生かすために不可欠なのは経験豊富な人材や同じ志を持つ仲間とのつながりだ。『やまぐちローカルビジネススクール2023』では果敢に事業に取り組む地域事業者を受講生が応援する構図や、ゲストと受講生がつながり今後の挑戦を支え合う関係が生まれた。

山口市は今後もあらゆる人が、地域の枠を超えて互いに切磋琢磨できる機会を創り続けていく方針だ。 

 

全4回のプログラムとゲスト

キックオフセミナー・事業説明会 ゲスト:村岡浩司さん(株式会社一平ホールディングス)
第1回講座/フィールドワーク ゲスト:桜井貴斗さん(株式会社HONE)
第2回講座 ゲスト:岩本脩成さん(合同会社TABE TE MAMORU)
第3回講座 ゲスト:下園正博さん(株式会社下園薩男商店)
第4回講座 ゲスト:林亜季さん(NewsPicks for Business) 

                   

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