地域おこし協力隊リレーTALK Vol.45
​「子どもの頃から大好きだった双海町を元気にしたい」

愛媛県 伊予市 現役隊員
上田沙耶さん

 

活動内容:食をテーマにした地域振興、地域産品の販路拡大や加工品開発、周遊型観光の構築など  

伊予市双海町は、松山市から南西に20キロほど離れた瀬戸内海沿いのまちだ。おだやかな瀬戸内海に映る夕日の美しさは有名で、しずむ夕日が立ちどまる町」というキャッチフレーズで地域おこしが行われてきた。 

「子どもの頃からよく家族で祖父母の住む双海町に帰省していて、『ザ・田舎』という感じのこの町が大好きでした。しかし、過疎化が進むまちを目の当たりにし大学生になったころには双海町のために自分にできることはないかと思うようになりました。」 

海外を一人で旅した経験がある上田さん。旅での一期一会の出会いが人生を豊かにしてくれることを実感し、「双海町に泊まってもらうことで、双海町のよさを味わってほしい」と考えていた。慣れ親しんできた祖父母の家をゲストハウスとして活用したいというアイディアもあったという 

東京都内の大学に通っていた上田さんが4年生になる2020年4月、双海地区の地域おこし協力隊の募集があった。 

「大学卒業後に双海町に行き、いきなりゲストハウスを始めるのはハードルが高いと感じていました。協力隊として活動することで地元の方とつながりができ、私の知らない双海町の魅力や課題を知ることができます。学生という立場ではありましたが、このタイミングで行くのがベストだと思いました。」 

市役所の面接で「子どものころから親しんでいる双海町を自分の手で活性化したい」という思いを語った上田さん。その熱意が伝わり、大学4年生で協力隊に着任した。 

「しずむ夕日が立ちどまる町」というキャッチフレーズで知られる双海町の夕日。

 

先輩協力隊員が築いた地域の方々との信頼関係の恩恵を受ける 

2020年4月、上田さんは伊予市役所の未来づくり戦略室に配属された大学の授業はオンラインで出席し、学業と協力隊の活動を両立させた 

私に与えられたミッションは食を通じて地域を活性化することでした。自分でアイディアを出し、主体的に活動することを求められましたが、行政の担当の方が話しやすい方だったので、わからないことを相談しながら形にすることができました。予算と成果が見合うかを検証してプランを提案することや、関係する部署と意見交換して連携していくポイントなどを相談しながら進めていきました。」 

伊予市にはこれまで多くの地域おこし協力隊が着任している。なかでも双海地区では、任期終了後はほぼ全員が定住しているという。 

「地域をまわって新任のあいさつをしたときも、みなさんフレンドリーで、がんばって!』と声をかけていただきました。これまで協力隊の先輩方が築いてきた地域の方々との信頼関係の恩恵を、新参者の自分が受けているような気がして、とてもありがたかったです。」 

ハモ漁が盛んな双海。地元の漁師たちと販路拡大を模索している

 

オンラインショップの利益で加工品開発へ 

着任当初は「食を通じた観光振興」を中心にしたいと考えていた上田さんだが新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、イベント開催等対面での活動は限られていた。そこで地域の生産者らを会員とした地域団体「ふたみファンクラブ」を立ち上げて、上田さんはその団体の事務局長に就任。最初の1年はオンラインショップで地域にあった既存の商品柑橘や魚介類の加工品などを「ふたみおうち便」として全国に向けて販売を行った。扱う商品の選定、商品説明欄の作成をはじめ受注品の箱詰めや発送作業なども担当した。 

「オンラインショップは初期投資があまりかからないので、スムーズに開始することができました。2年目からは、出品者からの販売手数料を元手に加工品開発に着手しました。」 

そのほか、参加者に地域の産品を送ることで、より地域を感じられるオンラインツアーの開催や、農家の方と新しい柑橘類の加工品づくりに取り組んできた上田さん。漁師の方とはハモなどの魚介類の消費拡大にも取り組んでいる。第一次産業の現場だけでなく、地域の加工業者や鮮魚店とも顔なじみとなったことにより柑橘ジュースやジャムなどの商品開発を行うなど、活動の幅は広がってきている 

「開発した商品はオンラインだけでなく、関東のセレクトショップなどへの販路を開拓したり、地域内外のマルシェにも出店するなどして、積極的にPR・販売しています。また、双海地区と人の魅力を取材してまとめた冊子『ふたみ図鑑』も制作しました。」 

当初からやりたかったという観光振興にも取り組み、「ふたみロマンきっぷ」というモニターツアーを実施した。オープンエアの三輪自動車で町内各地をまわり、食事、パラグライダー、酵素風呂、シーサーづくりなどを体験するツアーだ。現在さらなるツアーのブラッシュアップを図っているところだという。 

左)地元産のグリーンハウスミカンをまるごと入れ、極早生ミカン100%ジュースとゼリーで閉じ込めた「双海まるごとみかん入りゼリー」。 
右)「ふたみロマンきっぷ」のモニターツアーの様子 

 

任期終了後は地域商社とゲストハウスを軌道にのせたい 

新型コロナウイルス感染症拡大による影響はあったものの、悪いことばかりではなかったと上田さんは語る。 

「協力隊任期終了後は双海町で飲食、宿泊、観光などを事業とする地域商社を設立して、生業にしていきたいと考えています。これは地元産品のオンライン販売や加工品作りに挑戦したことから生まれたアイディアです。こうした状況でなければ、当初考えていた観光を中心とした活動だけで終わっていたかもしれません。」 

大学はオンライン授業となったお陰で双海町在住のまま出席することができ、着任1年後の2021年3月に無事卒業することができたという。同3月には祖父母がかつて経営していた飲食店を再開。店の営業は土日曜限定だが、曾祖母から伝わる「中華そば」を再現したこともあり「なつかしい」「また店があいてうれしい」と県内外から多くの客が訪れている。着任前から計画していたゲストハウスも、県の補助金やクラウドファンディングなどを活用して、2022年2月に実現させる 

「ゲストハウスの開業に費用もかかり、借金を背負ってのスタートなので、すべてはこれからだという身の引き締まる思いでいっぱいです。様々な活動も、すべておばあちゃんたちが暮らしている双海町を元気にしたいという思いからスタートしました。私は双海町を思う力、双海町に対する愛という点ではだれにも負けないと思っています。これから協力隊を目指す方には、自分の “愛”を注げる地域を探して、その愛を原動力に活動されることをおすすめしたいです。」 

左)瀬戸内海を一望できる「下灘駅」「日本一海が近い駅」「一度は降りてみたい駅」として人気のスポット 右)再開した飲食店は土日のみ営業。地元の子どもたちも上田さんを応援してくれている 

 

愛媛県 伊予市 現役隊員 
上田沙耶さん 

1998年、愛媛県松山市生まれ。3歳で徳島市、小学校6年のときに横浜市に移り、東京の大学に進学。祖父母の住む愛媛県伊予市の双海町への移住を決意し、2020年4月から地域おこし協力隊に着任。協力隊の活動のかたわら、祖父母が経営する商店の2階で飲食店とゲストハウスをオープンするなど、幅広い活動を続けている。 

 愛媛県伊予市地域おこし協力隊
https://www.facebook.com/iyochiikiokoshi.01 

 

ふたみ図鑑
https://www.facebook.com/futami.zukan 

地域おこし協力隊とは? 

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。具体的な活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々で、任期は概ね1年以上、3年未満です。 

地域おこし協力隊HP:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei

発行:総務省 

 

 

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