【とくしまSTYLE : 04】
未来の起業家を育てる高専で
学生と共に挑戦し、豊かな人生を築く

神山まるごと高専 学生募集 / 広報 村山海優さん

東京の電通ライブで大きなイベントの企画や運営を行っていた暮らしから、
人口4,000人の徳島県神山町で「神山まるごと高専」の学生募集という仕事を通し、
自分とも仕事とも真っ直ぐに向き合い、楽しみながら本気で生きる、そんな暮らしへ。

全国から注目される神山まるごと高専

標高1000mを超える山々に囲まれた徳島県神山町。JR徳島駅から車で約40分、徳島阿波おどり空港から約1時間のこの町に、日本中の注目を集めている「神山まるごと高専」という学校が2023年4月に開校した。国内で高専が新設されたのは約20年ぶり。しかも、国内の名だたる企業から支援や寄付を受け、全寮制で学費無償化を実現している。


右上)新築された「神山まるごと高専」のオフィス。授業や研究の場をあえて「オフィス」と呼んでいる。
左上)イベントなどで使われる大講堂。校舎には神山産の木材を使用。
右下)学生生活を送る寮の内部。旧神山中学校をリノベーションした。
左下)「ホーム」と呼ばれる寮にある食堂。「日本一、地産地食の給食」を目指して、神山の食のチーム「フードハブ」が手がけている。

デザイン×テクノロジーを通じて起業家精神を育んでいくことをコンセプトに設立され、現在、1期生がこの場での学びを始めている。15才から20才という、多感で吸収力も行動力も抜群なこの時期に、5年間かけて学びを深めると共に、様々なプロジェクトを実践していく。社会の第一線で活躍する起業家講師たちとの出会いも、若い彼らにとって、刺激的で大きな財産になるだろう。

「神山まるごと高専」で、学生募集を主に担当しているのが村山海優さん。この仕事をきっかけに、2022年8月、東京から神山町へ移住してきた。

世界は面白いと思える原体験を作りたい

村山さんには、〝原体験を作りたい〟という思いがある。村山さん自身には、3つの原体験があるそう。1つは、小学1年生から高校3年生まで続けたバスケットボール。その練習の日々は、厳しく苦しかった思い出だ。2つ目は、小さい頃、両親と時折出かけたキャンプ。自然の中に身を置いて、火おこしをしたり料理をしたり、当時は特別に楽しいと思った訳ではないけれど、振り返ると貴重な経験になっていると語る。そして、3つ目はディズニーランド。キラキラした眩しい夢の国で、心が躍った。バスケットの練習に追われる苦しい毎日の中で、キャンプやディズニーランドで味わった非日常体験が強く心に残っているそうだ。それらの原体験が大人になっていく過程で人生を導く指針となり、自己肯定感が養われたことを村山さんは実感している。「世界ってすばらしい。だから、自分の人生もきっと面白くなるはずだ」と思うきっかけになったのだ。

前職は、五感で感じられるリアルな「場」を作りたいと、電通ライブでイベントの企画や運営を担当。ドバイ万博の日本館の企画運営などを行ったが、数十分の体験で伝えることの難しさを実感した。もっと、長いスパンで原体験を提供できる仕事に携わりたいと思っていたところ、まるごと高専の理事やスタッフたちと出会い、話を聞いているうちに一緒にやってみたいと、今に至る。

仕事内容は、主に学生募集。全国から、または海外からもまるごと高専の学生を募集すべく、イベントやプロジェクトを実施している。ただ入学を促進するだけでなく、学生にとっても高専にとっても満足のいくようなマッチングを心がけている。

「学生の5年間を左右すると思うと怖さもありますが、進路を決める中学2年生から3年生の間が、例えまるごと高専に入学しなくても、様々なことに気付き、学ぶ機会になり、それがいつかの原体験になったらいいな」と、村山さんは語る。学生主体のイベントやプロジェクトに、前職のスキルを活かしてアドバイスをすることもある。学生もスタッフも共に高専を作っていく仲間という認識で、入学後のフォローをしたり、伴走したりしている。現在の1期生について、「学生さんたちは怖いもの知らずですごい」と感じているそうだ。

海も川も生活に欠かせない要素


週末は、大好きな自然を満喫。

埼玉県越谷市出身の村山さん。田舎での暮らしに抵抗は感じていないようだ。現在、高専にほど近い築50年ほどの空き家を、セルフリノベーションしながらパートナーと暮らしている。大家さんは、高専の設立に好意的で、ぜひ高専関係者に使ってほしいとの希望だったため、家探しや地域との関係作りもスムーズだった。近所の方とは、とても心地よい距離感だそう。玄関に野菜が置いてあったり、出しそびれたゴミを庭に置いていたらついでに捨ててくれたり、温かく迎えられ、見守ってもらえることに感謝しているそう。


現在、自宅はセルフリノベーション中。

また、名前に「海」が入っているように、両親は海を愛し、スキューバダイビングなどが趣味だった影響もあり、村山さんも海が好きなのだそう。大学時代は、スキューバダイビングのサークルに所属し、週末ごとに伊豆や離島へ潜りに行っていたほど。神山町に移住してからも、休みの日はサーフィンに出かけたりしている。徳島県の南部に行けば、熱帯魚の泳ぐ青い海が待っている。自然が好きな村山さんは、仕事の前に川でひと遊びしてから、自転車で仕事に向かうことも。自転車に乗っている間に髪も乾いてちょうどいいのだとか。

「今の暮らしのバランスが私にはぴったりです」と言う笑顔は、充実感でいっぱいだ。


通勤はほぼ自転車。

 

徳島県 神山町

徳島県のほぼ中央、緑の中を流れる清流と四季の変化に富んだ渓谷美を誇る鮎喰川の上流に位置する神山町は、豊かな山林をはじめとする大自然に恵まれた素朴で美しい町です。静かな町のあちこちには、幻の王国、邪馬台国の女王として知られる卑弥呼にまつわる数々の伝説を残す古寺や旧蹟をはじめとする、様々な名所や景勝地が点在しています。またキャンプ場や森林公園、ゴルフ場などのレジャー、リゾート施設も豊富で自然と歴史の楽しさにあふれる町です。

文/ひらかわひろこ 写真/山川 明訓


▼移住に関するお問い合わせ先

・移住交流ポータルサイト「住んでみんで徳島で!」


https://iju.pref.tokushima.lg.jp/

・徳島県とくしまぐらし応援課
TEL:088-621-2089 


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