大阪市内から車で約60分、神戸市の中心地・三宮からは約30分で淡路島に到達。関西圏から気軽に通える島として人気の淡路島。そんな淡路暮らしの魅力を探る「兵庫県淡路島の暮らし探訪バスツアー2025 起業編」が、2025年11月30日(日)に開催されました。
参加者は19名。島の玄関口である淡路市と商業・文化の中心である洲本市を巡り、移住後に起業した先輩移住者たちと交流。リアルな対話を通して島ならではの働き方・暮らし方を体感しました。
本記事では、ツアーの様子をレポートしながら、淡路島の魅力的な人、もの、スポットをたっぷりとご紹介します!
\案内役はこの方/

徳重正恵さん|株式会社シマトワークス
兵庫県川西市出身。2005年、大学卒業後、ニューヨークにてファブリック、インテリアコーディネートを学ぶ。2007年、株式会社フェリシモ勤務(神戸)。主に通信販売での衣料品の生産管理を担当。2012年、淡路島はたらくカタチ研究島(ツアー企画などの研究会に参加)神戸と淡路島の2拠点生活をスタート。2013年、インドでの綿農家の有機栽培の転換支援とその子供たちの就学、奨学、復学支援をおこなうプロジェクトに参加、パートナーNPOとの連携を担当。淡路島にて、地域のお母さんと手仕事の商品開発を楽しむ「淡路島女子部」結成。2017年、一般財団法人 PEACE BY PEACE COTTON理事就任。2019年、株式会社シマトワークス入社。
晴天の淡路島へ

淡路ハイウェイオアシスから望む明石海峡大橋と神戸市街地
神戸市 三宮から、淡路島の玄関口『淡路ハイウェイオアシス』までは車でおよそ30分。そこから20分ほど車を走らせ向かったのは、島の北東部、大阪湾を望む淡路市釜口地区です。
farm studio

海と段々畑を望む開放的な農園スペースが広がる『farm studio』
最初に訪れたのは、農を軸に、飲食・観光・交流・体験の場づくりまで多岐にわたる事業を展開する『farm studio』。事業の中核を担うのは、農園と直売所を営む山田修平さん・優子さん夫妻。フリーランスの料理家でありコピーライターの藤田祥子さんが飲食事業を、地元の企画会社『株式会社シマトワークス』が地域内外をつなぐコーディネーターを担当。異業種3者の協業による、ユニークなスタイルで運営されています。

farm studioの山田修平さん
大阪で生まれ育った山田修平さんが淡路に移住したのは2012年。移住の決め手は、以前から思い描いていた「いちご狩りとジャムづくりを中心とした観光農園」を実現できる農地と物件に巡り会えたことでした。
全ての事業のベースである畑と古民家は、地元の所有者が「自分はもう歳だから、信頼の置ける若い人に活用してほしい」と願っていた場所。山田さん夫妻がその思いを受け継ぎ、耕作放棄地となっていた土地と空き家を十数年かけて少しずつ再生していきました。
「この地を綺麗なまま守ってくれてありがとう」。そうした地元の人々の声を励みに農園を育て、地域の行事やイベントにも積極的に参加。そこで藤田さんやシマトワークスのメンバーと出会ったことで、農園の枠を超えた今の姿へと発展していきました。

新鮮な野菜を味わう朝ごはん会や里山の自然に親しむヨガ、観光ツアー・企業研修の受け入れなど、大小様々なイベントを開催している
farm studioのコンセプトは”荒れ地でなにを描きましょう? ”
核にあるのは「里山全体をスタジオに見立て、そこで何ができるかをみんなで楽しみながら考えていく」という柔軟なビジョンです。

淡路暮らしの魅力を語る、藤田祥子さん
それをまさに体現しているのが藤田さん。もともとは神戸の企業で働いていましたが、島の人々の自由な生き方と人との縁に導かれ、2014年に移住。廃校を活用したカフェ運営をきっかけに料理の道へ進み、山田さん夫妻との出会いを経てプロジェクトごとに協働するようになりました。現在は個人の仕事を持ちながら、必要に応じてfarm studioの活動にも参加。組織の枠に捉われない、柔軟な働き方を実践しています。
藤田さん「ここで暮らす人々は、自分の好きなことややってみたいことと島の恵みを掛け合わせ、自ら仕事をつくり暮らしています。そうした人同士がほど良い規模感の島内で偶然出会い、得意を持ち寄り協力し合うことでfarm studioのような新しい価値を生み出しています」。

古民家を活用したfarm studioの直売所
昼食には、(淡路島洲本市にある)「空想燕」のお弁当で淡路島の食の恵みを堪能

食後の交流タイムでは、参加者からの質問に山田さんが丁寧に答えていきました。
山田さんは淡路で暮らす魅力について、「ここでの暮らしは私たちにとって『理想そのもの』です。温暖な気候と豊かな自然、そして美しい田園風景と雄大な海は、毎日見ても飽きません。人に恵まれのびのび挑戦できる環境の中で、自分たちのやりたいことを真ん中に、自由に暮らしをデザインできる喜びがあります」と回答。
また、住居の探し方については、「私たちは、偶然知り合った地域の人からの紹介で今の場所と出会いました。移住希望者の多い淡路島では、条件の良い物件は情報として世に出る前に借り手が見つかることも多いです。頻繁に訪れたり、中長期間滞在して地元の人と積極的に交流したりしていると、『そういえば〇〇さんが空き家の借り手を探してるって言ってたよ』という風に人づてに巡り会えるかもしれません」と伝えていました。

山田さんや藤田さんが生き生きと語る暮らしは、移住の先にある、しなやかで自由な生き方そのものです。でもそれは、土地に根ざし、人とのつながりを丁寧に紡ぎ、自ら仕事をつくることで築き上げてきたもの。その過程を思うと、「果たして今の自分に同じことができるのだろうか」と、ふと立ち止まり考えてしまいます。
そんな気持ちを山田さんに打ち明けると、「淡路では『今できること』よりも『これからやってみたいこと』を起点に、人と人がつながり、新しい取り組みが生まれていきます。まずは小さなことでも、自分の『やってみたい』という気持ちを大切にしてください」と答えてくれました。
大自然と人のつながりの中で、自分らしく生き生きと暮らし、働く人々と出会える farm studio。ここで過ごす時間は、訪れる人の心に小さな芽を育みます。それはこの先の人生でいつの日か花開く、可能性の芽かもしれません。
■farm studio
住所:〒656-2334 兵庫県淡路市釜口739
HP:https://farmstudio.jp
Workation Hub 紺屋町
釜口地区の自然と人のあたたかさにすっかり癒された参加者は、島の中心部に広がる洲本市本町へ。古くは大阪湾を望む洲本城の城下町として栄えたエリアで、今も歴史ある商店街や飲食店、老舗商店、公共施設などが建ち並ぶ、島の賑わいの中心地です。

元酒屋だった長屋をリノベーションして生まれた、Workation Hub 紺屋町。麒麟ビールのレトロな看板が目印
一行は、『株式会社シマトワークス』が運営する『Workation Hub 紺屋町』を訪問。1階はカフェ、2階はコワーキング兼交流スペースとして運営されている多機能型のワークスペースで、会議やワークショップ、オフサイトミーティング、企業研修、料理教室、団らんなどさまざまな利用目的に対応。地域住民はもちろん、移住希望者、観光客、外国人まで、多様な人々が集い混ざり合う、まちなかの交流拠点です。


老若男女、多様な人が行き交うカジュアルな雰囲気の店内
特徴的なのは、移住希望者や洲本市で暮らし始めたばかりの人々が訪れる “地域の入り口”として機能していること。これはシマトワークスが意図的に仕掛けたわけではなく、風通しの良いカフェの雰囲気も手伝って、「地域にどんなコミュニティがあるのか知りたい」「地域の人とつながりたい」という人が自然に足を運び、ゆるやかな交流の輪が広がっていった結果なのだといいます。移住を希望している参加者からは「地元の人や移住者とつながりたいと思っていたのでぜひ利用したい!」との声があがり、淡路との新しい接点を見出せた様子でした。

シマトワークスの徳重正恵さん
運営を担うシマトワークスの徳重正恵さんは「この場所がどう育つかは、訪れる人次第」としつつ、「地域コミュニティへの入り口を探している人や、何かに挑戦したい人が気軽に立ち寄り人とつながれる“島のオープンリビング”のような存在でありたい」と話していました。
■Workation Hub 紺屋町
住所:〒656-0025 兵庫県洲本市本町7丁目1-32
HP:https://workation.life/hub
TOMMY COFFEE STAND

続いて一行は、洲本市の中心地に広がる『コモード56商店街』へ。アーケードを抜けてすぐのところに佇む『TOMMY COFFEE STAND』を尋ねました。

TOMMY COFFEE STAND店主の富田さん
店主の富田さんは東京都多摩市出身。神奈川県茅ヶ崎市での暮らしを経て、夫の転勤をきっかけに2016年に洲本市に移住。移住当初は幼い子どもの子育てに専念していたこともあり、自分がお店を開く未来を想像もしていなかったといいます。そんな富田さんの心を動かしたのは、洲本で好きなことや得意なことを生業にし、生き生きと暮らす同世代の先輩移住者たちとの出会い。彼らが自分らしく活躍する姿に刺激を受け、「私も何か始めたい」という思いがむくむくと芽生えていきました。 
TOMMY COFFEE STANDの目の前にあるチャレンジショップ
転機となったのは、商店街にあるお気に入りの雑貨屋『carrat…+』の店主に紹介された「チャレンジショップ」。コモード56商店街が飲食・小売業の開業希望者に貸し出すスペースで、商店街の多くの店主がここから夢への一歩を踏み出しています。富田さんは周囲の先輩たちからの「ちょっとやってみたら?」の一言に背中を押され、期間限定店舗をスタート。そこで生まれた人との縁で現在の店舗と出会い、2023年10月にTOMMY COFFEE STANDをオープンしました。


商店街の空き店舗を活用して生まれた、TOMMY COFFEE STAND
洲本にお店を構えて特に実感したのは、個人店がのびのびと挑戦できる余白のあるビジネス環境が広がっていること。そして、古くから続く商店街ならではの支え合いの文化でした。
富田さん「この商店街には、それぞれのお店が扱う商材をゆるやかに分け、互いを応援し合って商店街全体を良くしていこうという風土があります。ご近所さん同士で野菜をお裾分けしたり、子どもを預け合ったり、仕事を超えた関係性があることも、ここで暮らす安心感につながっています」。

TOMMY COFFEE STANDの斜向かいにある、日用品のお店『mooshuleek-ムーシュリーク-』を訪問。店長の福井崇之さんがにこやかに出迎えてくれた
コーヒースタンドという新しい”場”ができたことで、商店街には「気軽に立ち寄れる場所」を求めて訪れてくる人が増えました。富田さんはそれに応えるように、趣味で親しんできた雑貨類を店内に設置。すると、地元の中高校生たちが学校帰りにふらりと立ち寄るように。今では老若男女が集い、世代を超えて笑い合う光景が日常の風景になりつつあります。

TOMMY COFFEE STANDの店内には、富田さんがセレクトしたかわいい紙雑貨やアート作品が並ぶ

地元の高校生の作品を一部ドリップパックのパッケージに採用。売上の一部を画材として学校に寄付するなど、新たな循環も生まれている
富田さん「ここはただコーヒーを淹れて提供するだけの場所ではなく、町の人たちが安心して集えるみんなの居場所です。来てくださった方の心が少し軽くなるような、“心の拠り所”であり続けたいと思っています」。
TOMMY COFFEE STANDは、古き良き商店街の小さなコーヒー店でありながら、町内外の人がふらりと立ち寄る交流スポットであり、ギャラリーであり、若手クリエイターのチャレンジ拠点でもあります。
店主の個性、人と人との支え合い、そして商店街ならではのコミュニティ。そうした洲本ならでは土壌が重なり合い、誰もが町のぬくもりに包まれる唯一無二のコミュニティカフェが育まれていました。

■TOMMY COFFEE STAND
住所:〒656-0025 兵庫県洲本市本町5-2−22
Instagram:https://www.instagram.com/tommy_coffee_stand/
御食菜采館 洲本店

旅の最後には、地のものがそろう農産物直売所『御食菜采館 洲本店』へ。
淡路島は、古代から平安時代にかけて天皇や朝廷に食材を献上していた「御食国」の一つ。店内には淡路島たまねぎや淡路ビーフ、淡路産のお米など、採れたて新鮮な食材がズラリと並び、両手いっぱいにお土産を抱える参加者も。山海の幸がそろう、御食国・淡路の豊かさを実感できたようでした。
■御食菜采館 洲本店
住所:〒656-0025 兵庫県洲本市本町2-3-19
HP:https://www.ja-awajihinode.com/tyokubai/
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美容の仕事を通じて淡路島のオリーブ農園を訪ね、島の魅力に惹かれたことがご縁の始まりでした。来春に移住を予定しており、移住後は介護職の経験を活かして働きながら人脈を広げ、いずれは美容・健康・食・介護を組み合わせた新しい仕事の形をつくっていきたいです。今回、ゲストの皆さまとお話しする中で「小さな規模でも自分の力で何かをつくる暮らし」に魅力を感じ、自分らしいペースで農ある暮らしにも挑戦してみたいという、新しい思いも芽生えました。 |
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現在住んでいる京都府との二拠点生活を考え、参加しました。実際に淡路島を訪れ、瀬戸内ならではの海の穏やかさや人とのつながり、そして心身ともにゆとりのある生き方など「お金では買えない豊かさ」を体感し、本当に素晴らしい地域だと感じました。京都からは2時間半ほどでアクセスできるので今後も継続的に通い、可能なら来年には、平日は京都、週末は淡路という二拠点生活を実現したいと考えています。 |
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都会にはない自然豊かで静かな住環境、人と人とのあたたかなつながり、そして、農に携わる方々が地に足を着けて自分に正直に生きる姿に強く惹かれました。まだ具体的な移住計画はありませんが、ゲストの皆さんと近い距離でお話しする中でこちらで暮らすイメージが鮮明になり、都会と田舎の二拠点生活への興味が一気に高まりました。まさに「案ずるより産むが易し」。自分たちにもできるかもしれないという勇気をいただきました。 |
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自然豊かな暮らしへの憧れから今回のツアーに参加しました。出会った移住者の皆さんが淡路で自分らしい暮らしを叶え、生き生きと活動されていた姿がとても印象的で、田舎暮らしへの期待が一層高まり、年内の移住を決意しました。移住後は、これまでシステムエンジニアや漁師として働いてきた経験を活かしつつ、農業や酪農など新しい仕事にも積極的に挑戦していきたいです。 |
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INFORMATION
あわじ暮らし総合相談窓口
https://awajigurashi.com/
移住定住支援制度
https://awajigurashi.com/wp/wp-content/uploads/2025/07/2025_support_menu.pdf



