地域おこし協力隊リレーTALK Vol.27
​「生産者の6次産業化をサポートするために協力隊に」

山形県 庄内町 隊員OB
高木和真さん 

活動内容:中山間地域の特産品開発支援生産者が6次産業化を進めていくためのサポート、SNSでの情報発信 

青森県弘前市出身の高木和真さんは、地元の商工会議所の職員として働いていたが、実家で祖父母が営んでいたりんご農家が廃業したことから、「何か生産者の収入を増やすための手助けができないかと考えるようになった。 

「果樹や農作物を生産するだけでは、生産者さんの収入はなかなか上がりません。2次産業としての製造業と     3次産業としての販売までを生産者さん自身が行う、いわゆる〝6次産業化〟することで収入を上げられないか。そんな思いが強くなり、それをサポートする仕事に興味を持つようになりました。」 

高木さんは農業と食をテーマとして働くことを決意し、2019年2月に山形県庄内町の地域おこし協力隊に着任する。 

「山形県の庄内地方には米をはじめおいしいものが多いというイメージがあったので、庄内町なら自分のようにまったく別の仕事から転職する人間にも、6次産業化のお手伝いができるチャンスがあるかもしれないと思いましたまた、地域おこし協力隊の3年間という時間を使って、任期終了後のことも並行して考えたいという思いもありました。」 

高木さんは地域おこし協力隊として特産品開発支援をメインテーマに、生産者が6次産業化を進めていくためのサポートと、SNSを使った情報発信をしていくことになった。 

左)生産者自身が加工品の製造と販売まで行う 右)地元産品のPRイベントなどにも積極的に取り組む高木さん 

 

東京のベンチャー企業と組んで商品開発に向けたプロジェクトも実施 

庄内町には庄内町立谷沢川流域活性化センター(通称タチラボ)という施設があり、6次産業化共同加工場として惣菜製造室、菓子製造室、包装室などに専用の機械が整備されている。高木さんはこの施設に駐在して、地域の方が地場産品を使った商品開発を行うための支援業務を担当している。 

「ここは地域の方が家庭で採れた作物などを加工して商品化できる食品加工施設で、中山間地域にこうした共同で利用できる施設があるところは全国的にも多くありません。地域の方が自分たちで加工食品を製造して販売するだけでなく、商品が継続的に売れ、安定した収入が得られるようにするために、商品のコンセプトやレシピの検討パッケージデザインや販路開拓まで裏方として相談に乗るのが協力隊の役割になります。」 

食関係の知識や就業経験もない高木さんは常に勉強しながら地域の方たちと一緒に考えるという方針で相談に乗ってきたが、限界も感じていたという。そこで活動2年目には東京にある6次産業化をサポートする企業と組んで、生産者の開発支援を目的とする「メイドイン庄内町プロジェクト」という取り組みを実施した。 

「〝売れる商品づくり〟を目指し、地域資源を使った商品開発セミナーを開催し小規模事業者の取るべきマーケティング戦略について学ぶ機会を作ることができました。参加者のうち希望する4組が5回に渡るオンラインの個別指導を受け、それぞれのグループが新商品を開発しました。」 

タチラボレディースという地元のお母さんたちのグループが開発した『みーばぁのしその実のつくだ煮』という商品は、自分たちで栽培と収穫を手がけたしそを使い、製造・販売という6次産業化をみごとに実現。地元の観光施設では着実に売り上げを伸ばしているという。 

一緒にプロジェクトを進めている企業によるオンラインでの個別指導に協力隊も同席したことで、自分たちのスキルアップにもつながりました。それ以降は相談の業務も上達したような気がします。」 

左)5回に渡って行われた商品開発のオンライン個別指導 右)タチラボレディースが開発した『ーばぁのしその実のつくだ煮』 

 

引っ越し当日からここでなら安心して暮らせることを確信

高木さんはタチラボのすぐ隣にある元駐在所だった建物で暮らしている地域の人たちが最初からとても温かく迎え入れてくれたことで、スムーズにこの地での生活を始められたという。 

「引っ越してきた日が大雪だったのですが、町役場の人が除雪から家財道具の搬入まで手伝ってくださいました。この人たちとなら安心してやっていけると感じたのをいまでも覚えています。この地区には以前小学校があって、冬になると雪で通うのが大変になる学校の先生たちを、各家庭に下宿させるのが慣わしになっていたそうです。そんな風習もあって外の人を迎え入れることが文化として根付いてというのも、安心して暮らせる理由なのかもしれません。」 

町の中心までは車で30分以上かかるが、鶴岡市と酒田市という2つの隣接都市に出れば生活に必要なものもほとんどそろうので、不便な思いをすることもない。しかも、すぐ近くの山ではキノコや山菜採りができるので、「こうした環境が好きで楽しめる人にはとてもいい場所だと思います」と笑顔で語る

立谷沢川に沿って田んぼが広がるのどかな雰囲気の庄内町 

 

定住促進制度を活用して定住し、複数の事業を展開 

2022年の1月末で高木さんの協力隊としての任期が終了した。移住するにあたって、3年間の活動期間をその後の事業に向けた準備にも充てたいと考えていた高木さんは、このタチラボで食品を製造・販売するための法人を立ち上げたほか、フリーランスのライターとしても活動するなど複業というかたちで庄内町に定住することを決めたという。 

「協力隊というと、どうしてもミッションや地域活動に関するもので自分の生業を見つけようとするイメージが強いですが、必ずしも協力隊でやってきたことを仕事にしなければならないというものではないと思います。任期後も定住するということだけでも、自治体が協力隊を受け入れたことによる大きな成果だと思います。様々な事業を伸ばしながら情報発信なども続け、ある程度余裕ができたらあらためて地域活動に関わることができればと考えています。」 

庄内町では地域おこし協力隊の定住を支援するために、2021年の6月に定住促進制度を新設しており、これも高木さんが定住を決意する追い風になったそうだ。 

「実は任期を終えた協力隊のことも考えて、役場の人たちが定住促進制度の条例化に尽力してくださいました。この町が好きで残りたいと思っていたので、こうした制度はとてもありがたいです」 

農業の6次産業化という大きな目標を掲げ、3年かけて具体的な形にしてきた高木さん。その取り組みにかける思いは、確実に地元の人たちと次の協力隊に受け継がれていくことだろう。 

左)地元にもすっかり溶け込んでさまざまな活動にも積極的に参加している高木さん(後列右から2人目)
右)協力隊の任期終了後も庄内町に定住して複数の事業を展開していく高木さんと地域の方々 

 

山形県 庄内町 隊員 OG
高木和真さん  

1991年生まれ。青森県弘前市出身。生産者が収入を増やすための手助けができないかと、弘前市の商工会議所職員から2019年2月に山形県庄内町に着任。町立の食品加工施設「タチラボ」に駐在し、地域の人たちが地場産品を使って商品開発するのを支援している 

庄内町 地域おこし協力隊 本部:https://www.facebook.com/796916577024060/ 

地域おこし協力隊とは? 

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。具体的な活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々で、任期は概ね1年以上、3年未満です。 

地域おこし協力隊HP:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei

発行:総務省 

 

 

 地域おこし協力隊リレーTALK トップページへ

                   

人気記事

新着記事