ディープな山梨を体験!
デュアルでルルル♪
『1泊2日のやまなし暮らしのぞき見ツアー』
レポート

今回訪れたのは東京のお隣、山梨県。車でも電車でも甲府まで約90分とあってデュアルライフ(二拠点生活)の候補地としても人気エリアです。野菜も果物も温泉スポットも豊富で、歴史あり独自の食文化ありの山梨県。その暮らしは一体どんなものなのか。実際に移住した人と交流したり、地元の暮らしにググッと踏み込んでみました。ディープな山梨へ出発です。

※今回のツアーでは、新型コロナウィルス対策として「やまなしグリーン・ゾーン認証施設」に立ち寄っています。

 

甲州市昔話の世界へタイムスリップ

新宿駅から特急あずさ(またはかいじ)に乗って約1時間半のJ R塩山駅が、旅のスタート地点。ここで山梨県の県庁職員とTURNS編集長・堀口正裕がレギュラーコメンテーターを務めるTOKYO FMのラジオ番組デュアルでルルル♪の制作スタッフと合流です。

 

最初に訪れたのは駅の目の前にどっしりと構える古民家、旧高野家住宅「甘草屋敷(かんぞうやしき)」。
江戸末期に建てられた甲州伝統民家の面影を今に残す、国の重要文化財です。

19世紀初めに建てられたと推定されている立派な民家

軒先には“枯露柿(ころがき)”と呼ばれる特産の干し柿がズラリ。その数ざっと1500個ほどで、風情ある佇まいに参加者たちも早速カメラやスマホを取り出して、撮りまくりです。

太陽の光をたくさん浴びて、甘さ凝縮中

もともと薬用植物の甘草を栽培して幕府に納めていた農家で、2階に上がると養蚕をしていた時の道具が今も展示されています。毎年2〜4月に飾られるつるし飾りや雛壇が盛大に飾られ、多くの観光客で賑わうそうです。

江戸時代へのタイムスリップは「甘草屋敷」では終わりません。

バスに乗り込んで向かった先は山梨県民でも知る人ぞ知る「上条集落」。
江戸の中期から昭和にかけて建てられた茅葺き屋根の切妻民家が数多く残る、山村集落です。

この集落に入るにはまず「金剛山 福蔵院」に参拝するのが慣わしだったそうで、住職さんにお寺や集落の歴史を聞いたり、木造立像では国内最大の不動明王や、丁度特別公開されていた99体あるといわれる木喰百鉢観音に手を合わせてから、集落へ。

天井には12支が描かれていて、趣ある山寺です

上条集落は思いのほか山深くて、歩く、歩く(汗)

上条集落は、甲府盆地を遠くに望む山の中腹に位置する山里で、養蚕が盛んだったため、甘草屋敷と同じように屋根の中央部分がせり上がった「突き上げ屋根」の民家が点在しています。

美しい甲州伝統民家が立ち並ぶ集落として、「重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)」に指定されている貴重な集落風景が広がっています。

そして、その代表格ともいえるのが「もしもしの家」です。

江戸末期に建てられた築約200年の古民家

昔、この家だけに電話があって、集落の人たちが電話を借りていたことから、自然と「もしもしの家」と呼ばれるようになったそうで、今はNPO山梨家並保存会が復元、管理しています。

昔話に出てきそうな家ですが、なんとここでのお泊まりOK(1日1組)。ほうとうづくりやお餅つきなどの体験メニューも楽しめます。

今回のツアーでは保存会の事務局スタッフが用意してくれた「ほうとう」を軒下でいただくランチタイムになりました。

ザ・日本の原風景が広がるなかで「ほうとうランチ」

大鍋で作られた「ほうとう」の美味しさにお代わりする人続出。
「沁みる〜」「幸せ!」と口々に言いながら、ほっかほかのほうとうをいただくと雰囲気が一気に和みます

 

 

自然の恵みを飲んで、食べて、浸って

昔話の世界から現実の世界へ。日本ワイン生産量、ワイナリー数全国No. 1(平成29年国税庁調べ)の山梨に来て、立ち寄り必須なのがワイナリーです。

向かったのは「奥野田ワイナリー」。小さいからこそできる丁寧なワインづくりをモットーに、この土地ならでの気候と土壌を生かしたオリジナリティあふれるワインづくりをしています。

1.5haの自社農園やセラーを代表の中村雅量さんに案内していただき、ブドウの品種や栽培方法の違いを、笑いを交えながらわかりやすく説明していただくと、お待ちかねの試飲タイムです。

4種類のワインを飲み比べ。どれも美味しくて選びきれない

ワインツーリズムや、ブドウ栽培からワインの知識まで学べる「奥野田ヴィンヤードクラブ」などで交流人口を増やす活動にも熱心で、参加者の中には、東京から通えるワイナリーを探していたという方がいて、質問にも熱が入ります。

ワイナリーのデザイン性の高さ、中村さんのトークは一見、一聴の価値ありです。

内装からパッケージデザインまでデザイン全般は奥様が担当

 

いて甲州市のお隣の山梨市へ移動し、向かった先はくだもの王国・山梨を代表する五感で楽しめるテーマパーク山梨県笛吹川フルーツ公園」。

小高い山の中腹にある新日本三大夜景の一つの見晴らしのいい公園で、桃の濃厚ソフトクリームを食べたり、特産品を買ったりと自由に散策した後、さらに山を登って温泉「ほったらかしの湯」へ。

露天風呂から広がる甲府盆地と富士山のダイナミックな絶景を眺めながらの入浴は、体温だけではなく山梨に住みたい、通いたい気持ちを一気に高めてくれます。

 

そんな心身ともに山梨に浸った私たちを待っていてくれたのが、2013年にUターンして家業の「五味醤油」で活躍している五味洋子さんです。

6代目を務めるお兄さんと“発酵兄妹”と名乗って、味噌文化、発酵文化を広めています。

「五味醤油という名前ですが、味噌屋です」と語り始めた五味さんは、地元甲府市をはじめとした山梨の魅力、山梨で作られている甲州味噌の特徴を、スライド写真を交えながらわかりやすく語ってくれました。

山と食べること、温泉が大好きで、地元で解決できることがUターンの決め手になったと語る五味さん

五味さん自身、自社商品の販売だけではなく、味噌づくりワークショップの企画・運営をしており、味噌づくりを通して食育にも力を入れていきたいと地域活動にも熱心です。

地元のラジオ局に6年続く番組をもっていたり、醤油蔵をリノベーションしてコーヒーショップに貸したりと、“味噌屋”の粋を超えた活動も積極的に行っています。

本題の味噌講義では、甲州味噌は約500年の歴史がある地味噌であること。全国トップシェアを誇る信州味噌は大豆、米麹、塩で作られるのに対し、甲州味噌は米麹だけではなく麦麹を加えるのがポイントであることなどを説明。最後にオリジナル曲「味噌の歌」のMVを公開してくれました。

歌って踊って覚える味噌づくりは、子どもたちにも大好評

「み〜そ、みそ、みそ、手間味噌♪」のゆる〜い歌詞と脱力系の女性ボーカル、振り付け動画で、不思議と味噌づくりが頭に刷り込まれるから不思議です。真面目な勉強会にならないようにという、五味さんのおもてなし力、創意工夫が伝わる和やかな座談会になりました。

 

 

山梨の食文化を作って、食べて魅力を体感

翌日の1軒目は「おかめ麹」で味噌づくり体験。

前日の五味さんの講義も記憶に新しく、目の前に用意された味噌の材料を前に、「米麹と麦麹は色が違うわ」と参加者さんも興味津々です。

味噌の材料がすでにセッティングされており、作業は楽々

味噌づくりを教えてくれたのは、おかめ麹が実家という広瀬容子さん。

創業1894年創業で、今も手間と時間を惜しまない「手作り麹」を作り続け、地元でも「味噌を作るならおかめ麹さんの麹で」と決めている人が多いという地域密着型の老舗です。

「社名のおかめには“美人”という意味があるんです」と語る広瀬さん

「ハンバーグみたいな感触で気持ちいい♪」と味噌団子を丸める参加者たち

大豆と麹2種、塩を混ぜてこねて、1人2kgの味噌を仕込んで、食べられるのは約半年後。無事美味しい味噌に仕上がるか、完成が楽しみのお土産になりました。

 

次に向かったのがJA全農やまなしが運営する農産物直売所「たべるJA(じゃ)んやまなし」。

ここでツアーに合流してくれたのが、北杜市地域おこし協力隊の新名あいさんです。

2年前に、TURNS主催のツアーに参加されたのを機に北杜市に移住された、ツアー参加者のOGで、一緒に「たべるJA(じゃ)んやまなし」に入店します。
ここは、地産地消に力を入れた生産者と消費者の交流の拠点であり、県内農業の情報発信地でもあります。

つまり、ついつい爆買いしてしまうキケンな場所。

地元の農産品、特産品の品揃えが豊富。しかも安い!

 

荷物が予想以上に重くなったことに青ざめつつ、向かったのは峡南地域に位置する富士川町。

ここは中部横断自動車道の整備が進むことで長野にも静岡にも一気にアクセスが良くなる要チェックエリアです。

この日のランチは、富士川町にある寿司店「おかめ鮨」の「こしべんと」。

富士川町を含む5つの町からなる峡南地域の食材を使ったおかずが特徴で、取扱店舗や季節によってメニューも変わり、10食以上からの完全注文制という、かなりレアな郷土料理弁当です。

「おかめ鮨」(富士川町)の色彩豊かな「こしべんと」

手の込んだ9品は、どれも滋味広がる優しいテイストで、「体が喜ぶ味付け」「朝ごはん食べ過ぎちゃったけど、美味しいから完食できちゃいました」と参加者からも大好評です。

 

そして、食後には新名さんの移住体験談をお聞かせいただきました。

「北杜市は365日美しい場所」と語り、移住先がすでに“地元”化している新名さん

新名さんが住んでいる北杜市は、県内の移住先として人気エリアの一つで、新名さんも幼少期から家族で通っていたそうで、もともと皮膚が弱かった新名さんは、常宿にしているペンション近くの温泉に入っては肌の調子を整えていたそうです。しかし、新名さんは生まれも育ちも東京。「移住なんて無理」という考えを捨てきれず、無理な理由を探すために2018年にTURNSのツアーに参加したことを打ち明けてくれました。

「でも、ツアーに参加したら私、100ぐらいは『最高!』って口にしてたんです」と笑う新名さん。理屈ではなく五感が喜ぶ選択をしようと心に決めて、ツアーの5カ月後には移住を決意します。この行動力には参加者も驚きの表情を隠しきれません。しかも、新名さんが今、地域おこし協力隊として支援しているのが、幼少期から通っていた温泉施設というドラマのような展開で、生き生きと活動されているそうです。

「成功する移住の秘訣は、誰かや何かではなく、自分で選んだかどうかだと思います。何か困ったことがあっても、受け止め方が全然違ってきますから」と、移住の後押しになるコメントを残してくれました。

 

その後、新名さんも普段使いしているという山梨でチェーン展開している大型スーパー「オギノ」の富士川店に立ち寄り、地元の人たちの「いつもの買い物」を体験してから身延町の「お試し住宅」を見学。

先程の新名さんも、地元の生活スタイルや夜の暗さを体験するためにもお試し住宅は「オススメ!」だそうで、移住前に四季を知ることが大切と教えてくれました。

山梨県内10市町村にお試し住宅はたくさんあり、利用期間が1年間と突出して長いのが身延町で、町内にある2棟のお試し住宅はどちらも現在利用中。外観を見せてもらったお試し住宅は、現在東京在住の50代の男性が使っており、1カ月に10日前後の利用だそうです。

リモートワークの増加で、お試し住宅に関する問い合わせや申し込みが増えているという、身延町役場の赤池秀昭さん

費用は年間24万円で、最長2年間使用できるという待遇に、「空き家バンクよりも敷居が低い」「名前通り“お試し”で利用してみたい」と移住やデュアルライフを具体的に考えている人ほど興味津々で、申し込み方法や居住者の修繕負担の範囲、周辺住民の理解度など具体的な質問が飛び交いました。

 

旅の最後の訪問先が、身延町の特産品「あけぼの大豆」の6次産業化の拠点施設。

2016年に廃校になった小学校をリノベーションした施設で、ここであけぼの大豆の加工品の開発を進めています。

そして、元地域おこし協力隊の幡野寛人さんが、協力隊だった時に開発したのが「ソイコティ」です。

あけぼの大豆100%使用の新感覚のカフェインレスドリンク

ソイ(大豆)とコ(コーヒー)、ティー(お茶)を掛け合わせた造語で、規格外のハネ出し大豆を使って商品化したもので、注文を受けてから焙煎し、「縁のある人や場所に届けたい」と、全国展開ではなく地域貢献に主軸をおいて展開されているそう。

ソイコティについて説明する幡野さん。「ソイコティ」はナチュラルとビターの2タイプ

幡野さんは2016年10月に地域おこし協力隊としてIターンし、地元の女性と結婚。協力隊後も身延町に住み続け、甲府市のペレットストーブ専門店で働きながら、週1回を焙煎日としてソイコティを焙煎しています。

焙煎室は旧放送室。幡野さんが生産から販売まで一人で手がけています

「あけぼの大豆は甘味があって粒が大きいのが特徴です。加熱するとさらに甘味成分が高まることから生まれた商品です。あけぼの大豆を使ってまちを元気にしていきたいですね」と爽やかに語ってくれました。

 

濃厚な1泊2日の旅を終え、参加者も「楽しかった〜」と大満足の様子ですが、楽しいだけではなく、山梨生活の可能性についても聞いてみました。すると前向きな意見が続出。

すでに山梨の移住を本格的に考えていて、空き家バンクにも登録しているという女性は「お試し住宅という制度があることを、今回のツアーで初めて知りました。体験してから移住を検討してみたいです」とさらに移住計画を具体化できたと語り、ある男性は「山梨の魅力を知る、いいきっかけになりました。自宅で温泉を楽しめる土地や物件を探しているので、温泉が豊富な山梨にもっと足繁く通ってみたくなりました」と山梨での温泉生活の夢に向けてギアが入った様子です。

「移住で一番ネックなのが仕事。地元の職についてもう少し知りたかったなという気持ちがありますが、山梨の魅力を知るとっかかりとしては十分なツアーでした」「山梨で出会った方みなさんがとても温かくて優しくて、県庁職員の方達も気さくで、山梨への親近感が高まりました」と、総じて山梨への印象が大幅にアップしたツアーになったようです。

東京からのアクセスも良く、果物や農産物、そして天然水など自然の恵みが豊富で、街の機能も充実しているエリアもあれば、自然豊かな山里もある。そんな選択肢の多さも山梨の魅力であり、今回のツアーで紹介できたのはほんの一部に過ぎません。

それを感じとった参加者が、今度は自らの足で再訪したくなる。そんな行動に駆り立てるほど、山梨での暮らしの可能性を今回のツアーで感じとられているようでした。

 

 

文:浜堀晴子 写真:小池佐季子

                   
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