温泉とともに。”岳温泉”ではたらく

岳温泉観光協会職員・ネイチャーガイド募集【前編】

東京駅から新幹線と車を使って、約2時間のところに位置する福島県二本松市。

取材日はまさかの大雪…安達太良山は見えなかったので、紅葉の綺麗な時期の写真をいただきました。写真提供:岳温泉観光協会

まちのシンボルのひとつ安達太良山(あだたらやま)は、文豪・高村光太郎がその妻であった智恵子のことを詠んだ「智恵子抄」の作中で、安達太良山の上に広がる空が「ほんとの空」と詠われたことでも有名です。
その麓に広がる岳温泉一帯は“あだたら高原”といわれ、周囲に広大な牧草地が広がり、酪農も盛んに行われていたりと、他にはない温泉街の特徴があります。

開湯は1200年以上前と長い歴史ですが、岳温泉が現在の場所となってからは今年で112年となります。そんな岳温泉は、過去3度にわたって災害や戦乱、火事といった影響を受け、温泉街自体がなくなるという悲劇を経験してきましたが、そのたびに新たな地へと移り、再び街を蘇らせてきたという不屈の精神を持つまち。

岳温泉の自慢の湯は、天然湧泉として全国でも珍しい「酸性泉」。
源泉から温泉街まで約8㎞の引き湯は、日本一の長さを誇り、これまで地元の「湯守」によって守られ、脈々と歴史を紡いできました。長い距離を引き湯され、温泉街に辿り着くお湯は、肌に心地良く馴染む、柔らかな泉質になるそうです。

そんな温泉街に事務所を構える岳温泉観光協会は、あだたらの地に新たな風を起こそうと体験商品の企画や、酪農家とのコラボレーション企画、新拠点開発など、未来を見据えて面白いことは取り入れていこうという気概を持って動きはじめています。

そこで新たに、安達太良エリアに風を起こし引っ張っていけるような若い人の力を必要としているというわけです。

今回は、岳温泉を中心とした「安達太良エリア」を盛り上げてくれる観光協会職員、そしてネイチャーガイドを募集します。求める人物像は、「豊かな発想と行動力で、想いをカタチにできる人」

安達太良の地にかける、想いとは?はたらくとは?
日々、模索しながらも楽しみながらはたらく、岳温泉観光協会の事務局の方々にお話しを伺いました。

 

それぞれが感じる、岳温泉という場所。

二本松駅から車で約20分。温泉街の玄関口に、岳温泉観光協会があります。

「ようこそいらっしゃいました。どうぞ2階にお上がりください」

雪が舞う外とはうって変わって、あたたかい観光協会の雰囲気に、まるで親戚の家に来たような、どこか親しみやすい感覚に気持ちが緩みます。

現在、岳温泉観光協会には4人の事務局員がいます。

最初に話をしてくれたのは、観光協会の仕事を始めてまだ4か月という原田純子さん。業務は主に自治体の集金や取りまとめを行っています。なぜ、この仕事をするようになったのでしょうか。

「二本松市の出身なんですが、郡山でずっと医療関係の仕事をやっていました。再び二本松に戻ってくることになり、地元で頑張る同級生たちと接する機会が増えたんです。だんだんと私も、地元に対してなにかできないかって思いが強くなっていきました。祭りなどの手伝いはしていたのですが、そんな時に観光協会の募集を見たのが、きっかけでした」

元々、人と接するのが大好きだった原田さんは、再び岳温泉の人々と触れていくうちに今と昔の変わらないものに気づいたのだそう。

「人のつながりの強さは変わらないなと思います。郡山に住んでいた頃は、比較的都会なので便利だけれど、周辺の人の顔が見えないという感じがあって。でも、改めて戻ってきて原田さん家の娘さんって言えば、みんながわかるんですよ。誰かと話していても、そこで誰かとつながっていく感じがあって、それってすごいなって」

ただ、少し寂しいのはまちが静かになってしまったこと。
かつて、岳温泉は「ニコニコ共和国」という独立国を建国しました。

「私が小さい頃は『ニコニコ共和国』が全盛期で。私は入国してなかったんですけど。(笑)とにかく人が多くて、活気に溢れていたのを記憶しています」

かつてニコニコ共和国には時差があったらしい。

例えば、観光協会は「国会議事堂」、お豆腐屋さんは「国立豆腐蛋白研究所」としていたり、市の境となる場所は「国境」として国境警備隊を配置していたり。大真面目に、国としてパスポートを発行して、会議を開き、それぞれ役割があって、家業をやりながら国としての業務をしながらと、生活を楽しんでいました。

その名残は今もまちの至るところに点在していて、専用通貨「コスモ」は、いまだに各商店やコンビニでも使用できるというから驚きです。
日本のあちこちでミニ独立国がブームとなった時代に、その先駆けになったのが岳温泉なのです。ニコニコ共和国が栄えた時代は、とにかく毎日がお祭り騒ぎだったのだそう。

「これから地域おこし協力隊・ネイチャーガイドとして働いていただく方とともに、岳温泉周辺を回って楽しんでいただけるような旅行商品を企画したり、私も人がたくさん来てくださる盛り上がりをつくりたいです」

「安達太良山が、このまちのいいところ」と話してくれたのは、事務局員になって2か月の大樂(たいらく)博史さん。

元は県の職員だった大樂さんは、その経験を生かし予算策定を中心に、まちへの誘客企画も行っています。その中で大樂さんは、二本松市にある海外青年協力隊(JICA)の訓練所に、2-3か月に一度150名の訓練生が訪れることに可能性を見出し、岳温泉を活用した訓練プログラムを企画し、まちにある施設との連携強化に注力しています。

安達太良山に毎年何度か必ず登るという大樂さんは、「安達太良山は初心者にも登りやすいので登山の登り始めや、何かのきっかけになる山」だと言います。

しかし、観光客は安達太良山には登るけれど、岳温泉には人が来ていないのが現状。だから大樂さんは「安達太良山と岳温泉というように、拠点と拠点をつなげるものを生み出すことで、岳温泉に訪れるきっかけを作りたい」と強い想いを持っています。

「まだ2か月しか関わっていない私ですが、ここにいる人たちの強い結束力を感じます。近所の人同士の支え合いを体感していますし、なにより、岳温泉のまちの課題にみんな自分事として動いているのが非常に心強いなと思いますね」

岳温泉の人々は、みな地域に対してしっかり関わろうとする。「『岳ならできる』、そんな気持ちにまちの人たちがさせてくれる」からこそ「実行力のある人と、一緒に盛り上げていきたい」と大樂さんは言います。

「仕事なのか、趣味なのか…なんだかそんな気持ちで今の仕事をしている感じですね」

そう話す大樂さんからは、岳温泉というまちが大好きで、まちに向き合って楽しんで仕事をしているというのが伝わってきました。

 

若返りを図った観光協会が求める、若いチカラ

少し前に、観光協会の組織も若返りを図りました。

「これまで50代~60代が中心となっていたメンバーが、20代半ば~40代に入れ替わりバランスの良いチームへと変わって、雰囲気もこれまで以上に明るくなったんですよ」
そう話してくれたのは、事務局長の山谷(やまや)勝敏さん。

「あだたらには、3度の災害を受けながらも、そのたびに場所を変え復興してきた不屈の精神があります。そして、常に新しいものを受け入れチャレンジできる土壌があると思っています。しかし人口減少、高齢化といったことでなかなか推進できなくなってきている。だからこそ、ルールに縛られずにあだたらのイメージを創り出してくれる若者のパワーが必要なんです」

地域おこし協力隊・ネイチャーガイドの活動では、まず岳温泉の魅力を伝えられるよう、まちを知る必要があります。山谷さんは、「岳温泉の日本一の引き湯とそれを守ってきた『湯守』を知ってほしい」と言います。

湯守の様子。動画で見たい方はこちらからhttps://www.youtube.com/watch?v=9py3fremmj8

彼らはいわば、温泉をメンテナンスして管理するひとたち。

冬場は、4m近く雪が積もったところを歩きながら、湯の花の詰まりをなくしていく過酷な作業を行っています。これまで幾度となく災害に見舞われた岳温泉ですが、「湯守」たちが静かにコツコツと守ってきたからこそ、温泉だけは一度も止まることはなく、人々を癒し救ってきました。

温泉とともに発展と衰退を経験してきた岳温泉は、温泉への感謝の気持ちが強い場所なのでしょう。

「若い人に『引き湯』や『湯守』と言っても、わからない人も多いと思います。でも、案内するとその歴史や湯守のすごさに驚いてもらえます。例えば、ネイチャーガイドには、あだたらの自然についてだけではなくて、訪れた人に大事な歴史を伝えて、岳温泉が印象に残るようにしていただきたいですね」

山谷さんは、今後の岳温泉について「安達太良山と岳温泉をつないだり、さまざまなことにチャレンジしながら、まちの魅力だけで人が集まる、そんな場所を目指していきたい」と話してくれました。

***

観光協会の方々への取材を通して感じたことは、岳温泉には、災害に負けずに立ち向かってきたフロンティア精神と、自分たちのまちを本気で楽しむ心意気が、今も根付いているということ。

かつてのニコニコ共和国のような地域の盛り上がりを自分たちの手で再現したい、そんな思いを持つ“人”が集まり始めているのかもしれません。

そして、今回募集する「岳温泉観光協会職員」と「ネイチャーガイド」。
活動内容としては、岳温泉を中心として地域のモノ・コトを生かしたまちをブランディングしていくような取り組みをしていくことになります。

現在まちのシンボルである安達太良山には、年間14万人もの登山客が訪れていて、海外から訪れる人も増えているそう。しかし、山を楽しんでもらえる情報は伝えられても山の麓に広がる“まち”の魅力がまだまだ伝えられていません。まちも含め、あだたら高原全体を楽しんでもらえる魅力を伝えていく担い手として活動して欲しいとのこと。

温泉以外にも様々なアクティビティが充実しつつある岳温泉。周辺には1時間圏内にたくさんのスキー場がありますが、エビスサーキットという世界的なドリフトの聖地があったり、最近では人気のボルダリング、スラックライン、スケートボードの施設(4月オープン予定)ができる予定です。

写真提供:岳温泉観光協会

写真提供:岳温泉観光協会

昨年7月には、二本松市ヘルスツーリズム事業委員会の取り組みの一つとして、あえて道なき道をゆくような、それでいて初心者でも山を楽しめるような世界観を目指して“きっかけ”をコンセプトにした「ADATARA ACTIVITY」というブランドも立ち上がりました。

岳温泉では、「温泉」だけに頼るのではなく、温泉を“軸”として、地域の人自身が楽しみながら、様々な取り組みが行われているように感じました。

***

そして、観光協会職員・ネイチャーガイドとなれば、二本松市に実際に住みながら仕事を行います。

安達太良の地になじみ、まちの人に受け入れてもらえる秘訣は「とにかくマメに顔を出して、たくさん話をすること」だそう。昔からそこにいると当たり前になってしまうことも、ヨソ者にとっては新鮮に見えるものがきっとあるはず。あだたら高原の人々は、新しいモノ、コトを実現してくれる実行力のある人を心待ちにしています。

地域おこし協力隊として、あだたら高原になじみ、まちの人たちと一緒にさまざまなチャレンジをして、新しい風を起こしていきませんか?

文:草野明日香 写真:矢野航

 

※後編では、この地に暮らす人々を通して岳温泉の魅力をご紹介します!

【後編】岳温泉の歴史とともに紡がれてきた、あだたらの想い|https://turns.jp/18050

 

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ネイチャーガイドも募集中!
あなたの強みを生かして自然ガイドになったり、ウォーキングガイドになったり、登山ガイドになったり。未経験者大歓迎です。経験者ももちろん大歓迎です。
あだたらエリアの自然の中であなた自身も身体を動かすことを楽しんでいただきながら、アクティビティガイドをする。そんなお仕事を一緒にしてみませんか?
http://activity.dakeonsen.or.jp

●勤務期間
双方協議の上決定
(※即日勤務も可能)

●業務内容
1-アクティビティツアー企画(ADATARA ACTIVITY のサイト参照)に参加されるお客様のガイド業務、受付業務、それらに伴う関連・付帯業務
2-アクティビティツアーの企画開発、下見、必要に応じてサイトに載せる風景撮影など

※アクティビティ例
ノルディックウォーキング(安達太良山のふもとの岳温泉周辺)・ネイチャーウォーキング・安達太良山登山・その他、森ヨガや沢登り、スノーボード、エアボード等

●勤務地
福島県二本松市岳温泉 あだたらエリア
一般社団法人岳温泉観光協会内

●勤務資格
18歳以上・健康な方・未経験者大歓迎、普通自動車免許をお持ちの方、自然、アウトドア、接客が好きな方歓迎岳温泉まで通勤可能な方

●給与
半日:3,500円~/日当:7,000円~(経験による)
※研修期間別途あり

●勤務時間
半日3時間程度/終日6時間程度
※登録ガイド制になります

●待遇
希望者には資格取得の補助制度あり
※ウォーキング資格、登山ガイド等

●︎応募方法
一般社団法人岳温泉観光協会
「ADATARA Activity 登録ガイド採用係」まで直接ご連絡ください。

●担当 : 山谷
TEL:0243-24-2310
MAIL:info★dakeonse.or.jp
(※★を@に変えて送信してください。)
住所:〒964-0074 福島県二本松市岳温泉1-16

 

                   
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