【冬季限定シェアハウス住み込み型のバイト募集】
和歌山県下津町のみかん農家と
全国の若者をつなぐ「みかん援農」とは

11〜12月の季節就労。毎年の応募数は70名超!

「美味しい!」だけでなく「誰がどういう場所で、どういった思いのもと、これをつくったのだろう?」と、食の背景に思いを馳せるきっかけをくれる仕事があります。

舞台は、和歌山県の北西沿岸部にある海南市下津町です。この地は、約1900年前にみかんの祖となる橘の木が植えられたことから、日本のみかん発祥の地といわれています 。

今では、みかんの生産量全国一を誇る和歌山県内でも屈指の産地として有名です。毎年11〜12月頃の収穫期は、石積みの段々畑を彩るみかんの橙色と、澄み渡った空や海の青色とのコントラストが美しく、はじめてこの地を訪れる人々を驚かせています。


山肌を覆うみかんの木々。下津町は人口約3000人 、大阪から車で約1時間半の場所にある小さな町です

しかし、2023年度の海南市の高齢化率は37.1%と全国平均を大きく上回り、下津町では高齢農家の割合が増加傾向で、人手不足が課題となっています。なかでも収穫期は深刻。旬の間に作業が終わらなければ、その年の努力が全て水の泡となってしまうからです。

その地域課題を解決しようと立ち上がったのが、下津町のみかん農家と全国の若者をつなぐ「みかん援農」プロジェクトです。収穫期の人材確保と滞在先の手配を一手に引き受け、“冬季限定シェアハウス住み込み型アルバイト”として募集し、参加者をサポートする仲介役を担っています。

主宰者は、下津町生まれのFROM FARMKAMOGO代表・大谷 幸司さんです。2017年の活動スタート以来、農家と援農者の需要は年々増加。今では毎冬、全国から70名以上の若者が集い、約40戸のみかん農園で1〜2カ月間の季節就労をするようになっています。

「ちょっと興味あるかも。参加したらどんな感じなのか、もう少し具体的に知りたい!」と思っている方に向けて、Q&A形式で大谷さんにインタビューしました。

大谷 幸司(おおたに・こうじ)
1978年に下津町のみかん農家のもとで生まれ、県外の塗料メーカーに就職。父親の急病を受け、2007年に家業を継ぐためUターン。その後、家業から地域課題に視野を広げ、「いかに地元の農業を面白くできるか」をテーマに活動を展開。2014年、地元の農産物を用いた加工品ブランドFROM FARMを立ち上げる。2017年に「みかん援農」を開始。2019年から地域の交流拠点となるカフェKAMOGOも運営している。

 

Q.  公式サイトには時給や仕事内容といった詳細の案内はありますが、募集の開始と終了はいつですか? また、応募フォームから申し込んだあとはどういった流れになりますか?

A.  毎年9月頃から12月末頃までお申し込みを受け付けています。終盤になるほど勤務先と滞在先の枠が埋まるので、残念ながら調整がつかずお断りになることもありますね。

お申し込みいただいたあとは、まずメールで連絡をしてから、必ず1人ずつ15〜30分ほど電話をします。そこで援農の説明をして、勤務先や滞在先に関する希望をヒアリングして、わからないことや不安なことがあれば事前に相談していただけるようにしています。

集合場所は、カフェKAMOGO。自分の車やバイクで来る人は直接、電車で来る人は最寄り駅のJR加茂郷駅まで迎えに行きますよ。それから勤務先となる農家さんを紹介し、滞在先のシェアハウスに案内して、基本的には到着翌日から援農スタートですね。


大谷さんが運営しているKAMOGO。JR加茂郷駅から車で約3分の場所にあります

 

Q.  約7年間その全ての対応を1人で行ってきたなんて、すごいですよね。一般的に季節就労の仲介といえば、行政・協同組合・求人専門サイトがシステマチックに運営している印象がありますが、「みかん援農」がアナログなマッチングを大切にする理由は何ですか?

A.  なるべくミスマッチのない、きめ細やかなマッチングを目指したいから。

応募フォーム・メール・電話でのコミュニケーションを通じて、援農者さんの人柄を把握して、どの農家さんと相性がいいかを考える材料を集めるよう心がけているんですよ。

同時に、農家さんにも個性があります。だから「みかん援農」を頼りにしてくれる農家さん一戸一戸と話して、作業のこだわりやペース、残業の有無といった働き方を確認したり、どういう人に来てほしいかを尋ねて、農家さんの人柄も把握できるように努めています。

ありがたいことに、「みかん援農」を希望してくれる農家さんや援農者さんが年々増えて、毎年合計100人を超える規模感になってきたので、昨年から事務メンバーを迎えています。それでも、マッチングの要となる部分は変えずアナログを大切にしていますね。


援農中の一コマ。公式のInstagramFacebookには、こういった和気あいあいとした写真がたくさん!

 

Q.  サイト内「BECAUSE」のページには、プロジェクトに込めた想いと大谷さんの人柄が滲み出ていますよね。そこでは、単なる対価目的の労働で終わらない援農の可能性について綴られていますが、実際にどういった動機で参加する援農者が多いですか?

A.  食の原点に触れたい、将来農業に関わる仕事に就きたい、地方に関心がある、そういった明確な動機から参加する人もいます。逆に、援農に参加した友だちに勧められたりSNSで見かけたりして「なんだか面白そう」と漠然とした興味がきっかけの人も結構多い。

動機はそれぞれだけど、代々受け継がれる産地で自然に触れて、その地に根を張る一・二世代上の農家さんや、自分にあったライフスタイルを求めて全国から集まる同世代と出会い、一人一人の生き方に刺激を受けるという経験をきっと誰もがしています。

援農を終える頃には「想像以上のものが得られた!」と嬉しそうに話してくれる援農者さんが多くて、このプロジェクトをやっていてよかったなぁといつも思わされます。


援農者は何よりまず「今までスーパーで買っていたみかんと全然違う!」と、みかんの美味しさに驚くそう

 

Q.  援農者はどういうタイプの人が多いですか?

A.  年齢は20代が一番多く、次いで30代。毎年女性の方がやや多いかな。テボと呼ばれる小ぶりのカゴを肩にかけてみかんを収穫して、そのあとコンテナと呼ばれる大きめのカゴに集めるのですが、コンテナ1つあたり約20kgになるんですよ。それを運び出す「運び」という力仕事をすると時給アップになるので、体力に自信のある男性も大歓迎です。

普段の居住地に傾向はなく、日本各地から来てくれていますね。全国の季節就労をめぐって旅する人や、転職の準備期間中、大学休学中、自営業といった人など、バックグラウンドはさまざま。リピーターは一定数いるけど、初参加や初農業の人も少なくありません。

「農家さんたちが自分の子や孫のように迎え入れてくれて嬉しい」といった感想がよく聞かれます。自然豊かな環境で、普段接点のない世代や暮らしの人たちと1〜2カ月間も深く関わって、家族じゃない人たちと家族のような関係性になるのが新鮮で楽しいみたいですね。


収穫作業。専用のハサミでホド(実と枝がつながっている箇所)を切り、テボ(オレンジのカゴ)に集めます

 

Q.  勤務先となる農家には、どういうタイプの人がいますか?

A.  ほとんどが家族経営です。人手を希望する農家さんには2つのタイプがあります。一方は、40代の若手農家さんや親子二世代で、規模や事業を拡大しているところ。みかんを使ったクラフトビールづくりに挑戦している農家さんもいます。もう一方は、70代の高齢農家さん。年を重ねると、傾斜地で重いコンテナを運ぶ作業はひと苦労ですから。

農家さんたちはみんな、援農者さんとの出会いを毎年とても楽しみにしています。各農園で1〜3名を受け入れるのですが、僕と顔を合わせるたびに「今年はどんな子が来るかな?」「○○ちゃんや□□くんがまた来てくれたらいいね」と嬉しそうに話してくれます。


援農者からは「一緒に収穫作業を行う地元のおばあちゃんたちが可愛い!」という感想も多いのだとか

 

Q.  シェアハウスでの暮らしはどういったものですか?

A.  1棟あたり2〜8名の共同生活です。勤務先の農家さんの離れや、企業の元保養所、隣町の集落にある複数の古民家などを援農期間中だけお借りして活用しています。友だちと同じ部屋がいい、個室がいいといった希望や、自分の車やバイクで通勤できるといった条件と、勤務先までの通勤時間を兼ね合わせて、こちらでシェアハウスを割り振っています。

食事は全て自炊。朝と晩はタイミングが合えばシェアハウスのルームメイトと一緒に料理して食事をしたり、昼は各自でお弁当を持参して農園で食べています。リピーターさんを筆頭に、お互いに秩序を保って助け合いながら、うまく共同生活をしてくれていますね。

JOURNAL」のページに、援農者さんや農家さんにご協力をいただいて、シェアハウスや援農の感想をまとめた記事を載せているので、その情報も参考になるかもしれません。


シェアハウスでの料理風景。各棟には調理器具・食器・洗濯機などの暮らしの用具がある程度揃っています

 

Q.  援農者全員が交流できるタイミングはありますか?

A.  援農者さんの人数が一番多くなるタイミングで、全体の交流会を毎年1回開催しています。滞在期間がばらばらなので全員揃うのは難しいかもしれませんが、滞在期間外であっても交流会だけ遊びにきてもらってもいいですし、過去の参加者も招待しています。シェアハウスによっては、大家さん主催で地区ごとの交流会が開催されることもありますね。

リピーター同士がお互いのシェアハウスを行き交うこともよくあります。そのうち初参加のメンバーも交流するようになって関係性の輪が広がったり、1つのシェアハウスに集まって鍋パーティをすることもあって、青春そのものって感じで微笑ましいです。


シェアハウスでの鍋パーティの様子。1人1品の食材を持ち寄ったり、全ての食材費を割り勘したり

 

Q.  「参加してみたい! だけど、会社や大学との兼ね合いで、長期休暇は難しいかも…」という人もいそうですが、最短何日間から参加可能ですか? 休日はありますか?

A.  最短1カ月から。農家さんに教わったことができるようになり、繁忙期の戦力として活躍できてからが本番と考えると、やっぱりそれくらいは必要なんですよね。

ただ、作業的にあと数週間だけ人手がほしいから経験豊富なリピーターさんなら!といった具合に、農家さんの希望とマッチする場合は2〜3週間でお受けすることもあります。

休日は基本的に雨の日。天候や作業状況をふまえて勤務先の農家さんが判断します。だから小雨の日に休みになる農園もあれば、稼働する農園もある。突然の雨だから午後は休み、と急に決まることもあります。

もし「大事な用事があるから、この日は休みたい」という日程があれば、応募時に前もって相談してくれたら大丈夫なので、安心してくださいね。


作業日は、昼ごはん休憩はもちろんのこと、作業の合間で小休憩を挟むこともあるといいます

 

Q.  テレワークで普段の仕事と両立させることは可能ですか?

A.  本人の体力次第かな。援農の作業は朝7〜8時頃にはじまって、夕方17時頃まであります。希望と時期が合えば、みかんを蔵に貯蔵する残業もできます。食事は自炊だから食料の調達や料理の時間もいるし、シェアハウスの仲間と会話が盛り上がることもあります。

屋外の作業だから、最初の数日間は慣れるまで体力的にくたくたになるだろうし、基本的には、滞在中は援農がメインと考えてもらえるといいかなと思います。

自分でコントロールしてテレワークと上手に両立できそうであれば、休日などを使って普段の仕事をしてもらって問題ないです。シェアハウスによってWi-Fi環境の有無が異なるので、必要な場合は応募時に気軽に相談してくださいね。


土蔵のなかで木箱にみかんを敷き詰め、数ヶ月貯蔵して熟成させる、下津町の伝統技法「蔵出しみかん」

 

Q.  参加するにあたって、おすすめの服装や用意すべき物があれば教えてください。

A.  長袖・長ズボンの動きやすい服装、帽子、運動靴を準備してもらえたら大丈夫!

作業中はみかんの木々の間を縫うように傾斜地を上ったり下りたりすることになるので、肌の露出が少ない服装で、山道でも滑らないように靴底に溝のある運動靴がおすすめです。

普段着の上からヤッケというウィンドブレーカーみたいな作業着を着るのですが、ヤッケは事前に用意してもらってもいいですし、到着後にご案内するホームセンターで買うこともできます。作業に必要な軍手やハサミは農家さんが用意してくれます。

あとは、お昼は各自で用意したお弁当になるので、お弁当箱と水筒もあると便利かな。

リピーターさんが作業中の服装やスケジュールの具体例をまとめてくれた記事を「ABOUT」のページで紹介しているので、その情報もぜひ覗いてみてくださいね。


日よけの付いた農園用の帽子を被っている人も。「農園フード」で検索すると可愛い帽子が見つかります

 

Q.  最後に、大谷さんが感じる「みかん援農」の面白さは何ですか?

A.  農家さんと援農者さんが多彩な出会いから刺激を受けているように、僕自身も毎年異なる顔ぶれから、数えきれないほどの刺激や価値観の気づきをもらっています。

約7年間このプロジェクトを続けるなかで、年を追うごとに農家さんと援農者さんの関係性が深まっていく姿を目の当たりにして、貴重な人間模様の間に立たせてもらえていることに、ありがたさと面白さを感じています。

多彩な出会いをきっかけに、一次産業や食との関わり方、さらにはライフスタイルにおいて、これまでとは違った視点が持てるようになっていくそういった未来の可能性に満ちた変化を感じているのは、援農者さんだけじゃない。農家さんも同じなんです。

新たな可能性を信じて、これからも「みかん援農」の活動を広げていきたいなと思います。


標高の高い農園からは太平洋が見えます。「一面の段々畑を染める朝焼けや夕焼けも綺麗ですよ」と大谷さん

 

全国の季節就労や収穫アルバイトとは一線を画す「みかん援農」。大谷さんのインタビューを通じて、その面白さを少しでも感じていただけたでしょうか?

援農者から聞こえるのは「インドを旅するより価値観が変わるかも」や「ここで得た経験から人生に厚みが出る気がする」「今までになかった将来の選択肢に出会えた」といった声の数々。まさに百聞は一見にしかず、これは体験してみるしかないのでは?と感じました。

興味が湧いた方は、下記の募集要項を参考に、公式サイト末尾の「みかん援農に応募する」からぜひお問い合わせください。

取材・文:前田有佳利

 

                   
募集状況募集中
勤務地和歌山県海南市下津町の各農園
募集職種農業支援
雇用形態期間限定のアルバイト
※11・12月を中心に、9・10月や翌年1月も応相談
給与(1)時給1,100~1,300円
(2)時給1,000~1,200円
※勤務先の農家や時期により給与が多少異なります
福利厚生滞在先はシェアハウスを安価で紹介します
・個室:21,000円/月、700円/日
・相部屋:15,000円/月、500円/日
※炊事や洗濯は各自実費で行っていただきます
仕事内容(1)みかんの収穫・袋かけ・運び など
(2)みかんの収穫・袋かけ など
※力仕事である「運び」は希望者のみ
勤務時間7:00(8:00)~17:00(うち休憩約1~2時間。実働8時間)
※勤務先の農家により就業時間が多少異なります
※時期が合えば、残業も希望できます
休日休暇基本的には、雨天休み
※天候や作業状況をふまえて勤務先の農家が判断します
応募資格特になし(普通自動車免許があると便利)
※初農業でもOK、必要なのは一生懸命に仕事に励むこと

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