「地元が好き」、その気持ちが原動力

福島県 会津美里町在住 冨田恭平さん
1995年生まれ。会津美里町出身。会津工業高校を卒業後、東北芸術工科大学へ進学し、コミュニティデザインを学ぶ。新卒で「面白法人カヤック」に入社後はディレクターとして、ソーシャルゲームの運用から地域プロモーションまで携わる。2021年にUターンし、現在は「アルテマイスター/株式会社保志」(以下アルテマイスター)に勤務。

 

離れても消えずに残った地元への思い

「細胞レベルで会津が好き」。
そう語る冨田恭平さんは、2021年4月、念願叶って地元へUターンしました。山形市で大学時代を過ごし、その後、鎌倉市にあるweb制作会社「面白法人カヤック」で3年間働いたのちのUターンで、およそ7年ぶりの会津暮らし。現在は、会津若松市内にある仏壇や仏具の製造メーカー「アルテマイスター」のプロモーション企画室の一員として製品のPR業務に従事しています。

「アルテマイスター」のショールーム

中学の卒業式当日に東日本大震災を体験したことをきっかけに、福島や会津に対する思いを強めたという冨田さん。いずれは地元の役に立つ仕事がしたいと、大学ではコミュニティデザインを専攻し、将来を見据えて進む道を決めてきました。関東のweb制作会社へ就職を決めたのもその思いがあったから。クリエイティブの第一線を知ることで、地元に帰ってからも通用するようなスキルを身に付けたいと、なかば“修行”のような気持ちで働いていたそう。「ものづくりやアートが好きだったので、そういった面から地元に貢献するのが夢だったんです」と語ります。
転機が訪れたのは2020年。当時暮らしていた鎌倉で、福島にゆかりがある方々と出会い、会津にまつわる料理や商品を届けるイベントを主催したことから、帰郷したい思いが一気に高まりました。おりしもコロナ禍に突入し、当たり前の日常もままならなくなっていた頃。震災から10年の節目を前に、本格的にUターンへの道筋を探り始めます。

 

“運命の電話”がUターンの決め手に

冨田さんが働く「アルテマイスター」は、創業120年の老舗メーカー。現代の暮らしに合うモダンな佇まいの仏壇や仏具を製造、販売しています。
実は冨田さん、大学時代の就職活動中に採用試験を受け、一度は内定をもらっていました。最終的に2社どちらに就職するか悩んでいた中で、「一度都会に出て経験値を上げたほうがいい」と背中を押され、「面白法人カヤック」に入社することを決めた経緯がありました。それから3年経ち、地元に帰ろうと考え始めた冨田さんに思いがけない人から電話がありました。新卒時に背中を押した張本人であり、現在の冨田さんの上司となる星秀樹さんです。

星さんと冨田さん

「最初は『今、何してる?』と聞かれて近況報告をしていたのですが、地元に帰ろうと考えていることを話すと、『もし本気で来る気があるなら採用も考えるから』と提案していただいたんです」

当時を振り返り「運命の電話だった」と語る冨田さん。心を決めると、会社に退職届を出し、「アルテマイスター」の門を叩きました。一度は切れたと思った縁が繋がり、Uターンへのきっかけとなったのです。

「会津に帰るにしろ、クリエイティブな仕事をしたいというのは前提にあって、他の制作会社に就職するか、地域おこし協力隊や起業など、さまざまな道を考えていました。学生時代から憧れていた『アルテマイスター』からの誘いは願ってもいないこと。『祈りの文化を創る』という繊細なテーマをデザインで見せることにもやりがいを感じました」

今後はデザインスキルの底上げを図り、プロモーション企画室の戦力となることはもちろん、前職で培ったweb関連の企画にも積極的に取り組みたいと語る冨田さん。地元企業でデザインに関わる仕事をするという夢を見事叶えました。

 

新たなつながりで基盤作り

再び会津で暮らし始めて4ヶ月。印象を聞くと、「落ち着きますね。規則正しい生活ができるようになり、健康になりました」と順風満帆のよう。一人暮らしも考えたそうですが、生活コストの面から現在は実家住まい。車の運転にはまだ不安が残るものの、それ以外に不安はなく、大好きな会津での暮らしを謳歌しています。
プライベートでは学生時代から続けてきたアート制作にも本腰を入れて取り組めるよう、会津若松市内にあるゲストハウスの一室をアトリエとして借り、暇を見つけて通う日々。おかげでゲストハウスを訪れる旅人や地元の大学生との交流も芽生え、新たな繋がりもできました。

「会津に戻って来なければ出会わなかった人たちとの関係性は新鮮。共有スペースで話したり、一緒にごはんを食べたりするだけでも楽しいです。人とのつながりを求めるなら、職場以外にサードプレイス的な場所を持つことが大切だと感じます」

これから福島に移住やUターンを考えている人にアドバイスしたいのは、東京・有楽町にある「福が満開、福しま暮らし情報センター」などの相談窓口を一度訪れてみること。冨田さんも、Uターンを具体的に考え始める前からたびたび訪れていたそうで、地元で活躍する地域おこし協力隊の方を紹介してもらったりと、有意義な情報を得ることができたと言います。

「自分だけでは得られない情報もありますし、地元で活動している方と先んじて知り合えたことでUターン後の基盤作りができました」

今後は、新たにできた繋がりを活かし、仕事以外でも会津に関わっていきたいと意欲を見せる冨田さん。制作した作品を見てもらう場作りや、地元のクリエイターのサポートにも携りたいと目を輝かせます。
「地元が好き」。シンプルなその思いが、冨田さんの今後の人生においてもきっと力をくれることでしょう。

職場の窓から見える田園風景と磐梯山

 

━━取材を終えて
移住の際のネックになるのはやはり仕事。特にクリエイティブな職種ほど、「田舎には働くところがない」と思われがちです。しかし冨田さんが出会った「アルテマイスター」のように、しっかり地元に根付き、新しいことに挑戦している企業は多く、そういった会社ほど都会で経験を積んだスタッフを欲してもいます。仕事がないと諦める前に、まずは地元の魅力的な企業を探してみませんか?

(文:渡部あきこ 写真:鈴木優太)

                   
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