【移住者インタビュー】
「人生一度きり」自動車メーカーから医療の現場へ
鹿児島県薩摩川内さつませんだい市だからできたキャリアチェンジ

鹿児島県薩摩川内市で生まれ育った井上洋平さん。高校卒業後は愛知県豊田市のトヨタ自動車に勤務していましたが、「人生一度きり。いろいろなことに挑戦してみたい」と2020年2月に退職、帰郷しました。29歳で川内看護専門学校に入学して、32歳で看護師免許を取得。2026年4月から同級生が経営する病院で病棟看護師として働いています。大胆なキャリアチェンジを果たした井上さんに、移住と転職の経緯、薩摩川内市の魅力について伺いました。

 

トヨタ自動車に入社して塗装部門や実業団でも活躍

薩摩川内市の入来町は、武家屋敷群や温泉で知られる自然豊かなまちです。この地で生まれ育った井上さんは地元の小中学校を卒業したのち、鹿児島市にある鹿児島県立鹿児島工業高等学校に進学します。きっかけは「甲子園」でした。

「2006年、僕が小学6年生のころに鹿児島工業が甲子園に出場してベスト4に入ったんです。それを見て『あの紫色のユニフォームを自分も着たい』と思いました」

その後、野球部からソフトボール部に転部して、同じ薩摩川内市出身の同級生、井上知厚さん(以下、知厚さん)とチームメイトになりました。

「同じ市内だったので、彼の名前は知っていましたが、高校で一緒になって仲良くなりました。親友といっていい存在です。僕の実家は母子家庭で、母親が勤めに出ていて忙しかったのですが、彼のお母さんが食事をご馳走してくれたり、試合の送迎をしてくれたりと、僕を実の息子のようにかわいがってくれました」

高校卒業後、井上さんは愛知県豊田市のトヨタ自動車に入社します。塗装生技部に配属され、塗装ロボットのプログラミングや海外工場での生産ラインの立ち上げなどを担当。実業団に所属してソフトボール選手としても活躍するなど、充実した会社員生活を送りました。


Uターン後、井上さんはソフトボールの鹿児島県代表チームのメンバーとして国体にも出場

 

「会社員以外のことも経験してみたい」と移住を決意

ただ、「人生は一度きり(Only One Life)」をモットーにしていた井上さんには、会社員だけでなく、いろいろな経験をしてみたいという思いが以前から強くありました。

「トヨタでは副業がNGでしたから、新しいことをしたいなら会社を辞めるしかないと考えていました」

そんなとき、井上さんは高校時代の同級生、知厚さんが鹿児島に戻るという話を耳にします。知厚さんの実家は薩摩川内市で精神科・心療内科・内科を専門とする病院「ファミリーHP薩摩」を経営。当時は知厚さんの母親が事務長を務めていましたが、いずれは知厚さんが事務長として病院経営を担っていくことが期待されていました。

「知厚君とお母さんには、高校時代からとても良くしてもらっていたので、いつか恩返しをしたいと思っていました。そこで彼が帰郷すると知り、自分も一緒に鹿児島に戻って病院を手伝おうと考えました。知厚君からも『一緒に病院を盛り立てていこう。力を貸してほしい』と言ってもらえたので、思いきって新たな道に進むことを決めました」


「ファミリーHP薩摩」事務長の井上知厚さん(右)と。「知厚君の決断力には学ぶところが多い。彼がいなければ、僕もUターンや川内看護専門学校入学を決断できなかったかもしれません」

 

家族や先生、補助金にも支えられた川内看護専門学校での3年間

上司や親からは引き止める声もありましたが、井上さんは7年勤めたトヨタを退職。2020年2月に薩摩川内市にUターンして知厚さんの病院で看護助手として働き始めました。

「元々、人としゃべるのが好きなんです。機械相手の仕事はもう十分にしましたから、次は人と関わりのある仕事をしたいと思っていました」

しかし、看護助手は病棟に入って患者さんと接することはできますが、点滴をしたり、採血をしたりといった医療処置はできません。井上さんは看護師の資格を取ることを考えるようになっていきました。

「もっとお役に立ちたいというもどかしさを感じるようになったんです。それに知厚君が事務長になるなら、自分には医療の知識や技術があったほうがいい。総務などの事務職や准看護師になることも考えましたが、思いきって看護師にチャレンジすることにしました」

2023年4月、看護助手を3年経験した井上さんは、29歳で薩摩川内市の「川内市医師会立川内看護専門学校」に入学。その3カ月後にはUターン後に出会った女性と結婚し、文字通り「新しい生活」が始まりました。年齢を重ねてから看護師の勉強を始めることに不安はなかったのでしょうか。

「学校に通っている間は給料が下がるので経済的な不安はありましたが、病院から奨学金を借りられたほか、ハローワークからの専門実践教育訓練給付金や薩摩川内市就学定住支援補助金、鹿児島県看護職員特別修学資金といった補助金を活用することができました。おかげで、生活水準を下げることなく、安心して勉学に励むことができました」

川内看護専門学校での3年間は「まさに激動という言葉がぴったりだった」と井上さんは振り返ります。第一子が生まれて、勉学や実習、試験準備に加えて家事、育児も加わったからです。

「忙しい毎日でしたが、忙しい毎日でしたが、家族の支えや先生方の親身なサポートのお陰で頑張れたのではないかと思います。社会人経験を経たおかげで勉強を効率よくできるようになりましたし、妊婦や赤ちゃんが身近にいたことも看護師の勉強に役立ちました」

 

精神療養病棟の看護師として患者さんに寄り添う毎日

頑張りが実を結び、学年トップの成績を修めて特待生に選ばれ、学費免除まで受けることができた井上さん。2026年3月には見事ストレートで看護師試験に合格して、学校を卒業。同年4月から看護師として「ファミリーHP薩摩」に復帰し、精神療養病棟の看護師として勤務しています。


卒業式での井上さん。「薩摩川内市は大きなまちですから、さまざまな診療科を持つ病院がいくつもあり、離島もあります。ほぼすべての勉学と実習を市内で完結できるため、家族がいる人でも資格を取りやすい環境です」と井上さん

日勤の日は、朝の検温を始めとするバイタル測定、排泄介助、OT(作業療法)活動と呼ばれるレクリエーションや創作のサポート、入浴介助などを行っています。時には患者さんの不安を聞いたり、妄想や幻聴があるときには、そばに寄り添って不安を和らげたりするのも井上さんの重要な仕事です。

「一般の急性期病棟とは違い、何十年も入院されている患者さんもいらっしゃいますので、時間をかけて関係を築くことを大事にしています。『井上君、話したいことがあるんだけど』と誰にも言えない不安を打ち明けていただけることもあって、そういうときは自分の存在が患者さんの心のよりどころになれているのかなと思い、うれしいですね」

 

自然の中で遊んだり家庭菜園をしたりと生活も満喫

井上さんの勤務体制は、通常8〜17時の日勤ですが、月に数回、16時30分〜翌日9時の夜勤もあります。また、土日に必ず休めるとは限りません。

一方で、休日の希望は通りやすく、夜勤明けの日中と翌日の休みを組み合わせたりすることで2連休にすることもできます。そのため、家族との時間はしっかり確保できていると、井上さんは話します。

「ショッピングモールやテーマパークはありませんが、すぐそばに海も山も川もある。自分が幼いころは自然の中で遊んで育ったので、子どもにも同じような経験をしてほしいと思い、積極的に自然の中に連れ出すようにしています。そのせいか、子どもは虫を触るのが平気です。僕がクモを踏んづけそうになると、『クモさんがいるから気をつけて』と教えてくれる。薩摩川内市で暮らしているからこそ、自然と命の大切さを学べているのだと思います」

また、実家の家庭菜園ではお母さまと一緒に野菜を育てており、それもよい教育になっていると感じています。

「『自分たちで育てたものだから』と子どもは喜んで食べています。愛知にいたら、こういうことはできなかったでしょうね」


薩摩川内市に戻ってから、犬も飼い始めた

また、井上さんは休日の楽しみとして、鹿児島名物の「鳥刺し」も挙げてくれました。

「Uターンした理由の一つに、鹿児島に帰れば鳥刺しが食べられるというのもありました。昔から鳥刺しが大好きなんです。休みの日は、出かけた先の鶏肉専門店で鳥刺しを買って帰り、晩酌するのが楽しみです」

帰郷してよかったのは、鹿児島県内に暮らす親やきょうだいとの交流が増えたことだそうです。

「母は車で15分ほどの隣町に住んでいるので、よく行き来しています。孫の世話も喜んでしてくれていますね。兄と妹は結婚して鹿児島市内に住んでいるので、子どもたちの誕生日会をしたり、七五三のお祝いをしたりと、家族で集まる機会が増えました。自分が愛知にいたら、年に何回も母やきょうだいと会うことはできなかったと思います」


休日にはゴルフも楽しんでいる井上さん

 

高齢者の「訪問爪ケアサービス」を起業

井上さんが移住を考えている人に伝えたいのは、自身のモットーでもある「人生一度きり」という言葉。「自分の人生なのだから、やりたいことをやればいいと思います。失敗したら、また違う道を探せばいいのではないでしょうか」と言います。

「トヨタ時代の実業団の監督が、『同じ瞬間は二度とやってこないから、その瞬間は死に物狂いでプレーしろ』といつも言っていました。人生も同じで、その瞬間は二度とやってきません。やりたいことがあるなら、まずはやってみる。それが大事なんじゃないかなと思っています」

その言葉どおり、井上さんは、ダブルワークでの新たな挑戦を応援してくれる職場の後押しも受けながら、新たなチャレンジを始めています。それが2024年10月に立ち上げた、高齢者の訪問爪ケアサービス「PROPY」です。高齢者の自宅や施設を訪問し、医療の現場ではなかなか手が回らない分厚く変形した爪を整えるサービスを提供しています。

「変形して分厚くなった爪は放置すると、靴が履きにくくなったり、痛みが出たりして、歩くのが億劫になり、寝たきりにつながるリスクがあります。そこで、ネイルサロンで使う専用の工具などを用意して独学で技術を身につけ、サービスをスタートさせました。看護助手だったころ、何とかしてあげたいと思いつつも業務に追われて見て見ぬふりをしてしまい、後悔した経験が事業の原点となっています」


高齢者向けの訪問爪ケアサービス「PROPY」のサービスの詳細や活動の様子をInstagramで発信

将来は、土曜日や日曜日の朝に、子どもたちの健康づくりのための運動教室を開くという構想も温めている井上さん。これからも「一度きりの人生」に全力投球するつもりです。

 

 

\薩摩川内市 移住セミナー&相談会開催のお知らせ/

薩摩川内市での暮らしに興味を持たれた方は、10月に東京で開催予定の移住セミナー&相談会に、ぜひ足を運んでみてください。

会場では、移住担当職員に直接話を聞きながら、実際の暮らしや仕事、子育てなど、気になることや不安について気軽にご相談いただけます。「まずは情報収集だけしたい」という方も大歓迎です!

日 時: 10月10日(土)12時30分〜

会 場: ふるさと回帰支援センター・東京

住 所: 東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館ビル8階

参加費: 無料

定 員: 20組

主 催: 薩摩川内市

詳細・お申し込みはこちら

取材・文:横山瑠美


【薩摩川内市 移住定住サイト】
よかまちきやんせ倶楽部
https://www.city.satsumasendai.lg.jp/ijuteiju/

 

【移住に関するお問い合わせ】
経済シティセールス部 産業人材確保・移住定住戦略室
〒895-8650 鹿児島県薩摩川内市神田町3番22号
電話番号:0996-23-5111

 

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