空き家を眠らせない。
地域に残された古い物件を「次」につなぎ、
新たな価値や挑戦を生んでいく。
鳥取ではじめる、新しい暮らしとなりわい

「ここで、何かはじめてみたい」。

そんな思いを、空き家からカタチにする。

住まいに、お店に、人が集まる地域の拠点に。

地域に眠る古い建物を活かしながら、自分らしい暮らしと仕事をつくる。

鳥取では、そんな動きが着実に広がっています。

 

空き家をなんとかしたい。有志が団体創設

鳥取県八頭町は、人口約1万4,000人。豊かな自然に囲まれ、柿や梨などの果樹栽培が盛んな町だ。四季折々の美しい風景が広がる一方で、全国の地方都市と同じように、人口減少や空き家の増加という課題を抱えている。

「私たちが子どもの頃は、まだ家族三世代が一緒に暮らす家も多かった。でも今は、核家族化が進んで、若い人たちが町を出て、他の地域で暮らす人が増えました。空き家がどんどん増えていく様子を見ながら、なんとかしないといけないと思っていました」

そう話すのは、鳥取県八頭町で空き家の利活用を通じたまちづくりに取り組む、一般社団法人 Yearning for Yazu Project(通称、YYP)の代表理事、山邉裕司(やまべ・ゆうじ)さんだ。実は山邉さんは、もともと八頭町役場の職員。2026年3月に役場を退職し、現在はYYPの先頭に立って、空き家と人をつなぎ、次の使い手へ引き継ぐ仕組みをつくっている。


インタビューは山邉さんがこの夏にオープンしたばかりの工房「アップサイクルベース凹(ボコ)」(以下、凹)で行われた。凹では空き家から出る家財を再利用し、新たな価値を生み出していくという。

「もともと大学で建築を学んでいて、卒業論文では『空きアパート問題』をテーマにしました。どんどん新築物件が建っていく一方で、古いアパートには空室が増える。でも、古い建物でも、活かし方次第で価値を生み出せると思ったんです。地元に帰ってきて、まちの空き家問題を目の当たりにし、『ここでも同じことが起きている』と感じました」

役場では、担当部署こそ違ったものの、仕事外の時間を使ってリノベーションの勉強を重ね、先進事例を学ぶため県外のまちにも足を運んだ。そこで山邉さんが着目したのが、行政と住民の間をつなぐ「中間組織」の存在だった。


ゴミとして捨てられていく残置物を引き取りストック。

「元気なまちには、行政と住民の間に中間組織がある。その存在があることで、空き家がうまく動いていると感じました。第三セクターなど、いろいろな形を考えましたが、最終的には、自分たちでつくってしまおう、と。町民の同世代にも、八頭町を盛り上げたいという人たちがいて、一緒にYYPをつくりました」

2022年11月、YYPを法人化。八頭町を元気にするために、まずは身近な「空き家」の課題から、まちづくりを始めた。

一般社団法人 Yearning for Yazu Project (YYP)

増加する空き家や人口減少など、町の課題をなんとかしようと有志が集まって2022年11月に設立。現在は、町から空き家バンクや移住相談センターの運営を委託され、空き家の利活用を中心にまちづくりに取り組んでいる。

工夫を凝らし、空き家バンクの認知度アップ

「町から空き家バンクの運営を受託するようになったのですが、当時の課題は掲載件数の少なさでした。そもそも町民に空き家バンクがあまり知られておらず、まず認知度を上げていく必要がありました」

そこで、空き家バンクのホームページを見やすいデザインに刷新し、利用者が求めるコンテンツも充実させた。町も税金通知などに合わせて空き家バンクのチラシを同封するなど、行政と連携して周知を進めたことで、少しずつ認知が広がっていったという。

「『空き家3年、価値半減』とよく言われます。空き家になってから時間が経つほど、修繕が必要な箇所も増え、住みにくくなり、価値が下がってしまいます。できるだけ早く空き家バンクに登録してもらい、次の入居者につなげることが重要なんです」


凹の店内。2階では商品を販売。

さらに、空き家になる前からの相談も受けられるよう、空き家に関する情報をまとめたDVDを制作し、各地区で出前講座を開催。そうした活動が実を結び、空き家バンクの登録件数は、YYPが運営を始める以前の十数年間で95件だったのに対し、運営開始から3年間で120件に増加した。そのうち50件のマッチングが成立し、新たな住み手へと受け継がれている。

「成約率が高いのも、中間支援組織ならではの強みだと思っています。YYPは空き家バンクだけでなく、移住定住センターの運営も町から受託しているので、移住を希望する方が私たちに相談してくださる流れもできてきました。入居希望者と空き家をマッチングするだけでなく、私たちは修繕や士業関係など、住み始めるまでに必要な業者も紹介できます。そこまで寄り添うことで、安心して家を探してもらえているのだと思います」


古道具のほか、ガラスの器を逆さにしてランプシェードに仕立てるなど、趣向を凝らした商品が並ぶ。

また、2025年12月から全国各地に拠点を置く「さかさま不動産」の八頭支局としても活動している。

「通常の不動産業は、物件を掲載して、そこに住みたい人が探しに来るという流れですよね。でも、さかさま不動産はその逆です。『こういうことがやりたい』という人の夢や思いを掲載し、物件所有者が『うちの空き家を使いませんか?』と提案するサービスです」

すでに数件の問い合わせや相談があり、子どもの預かり拠点と、複合図書館・シェアハウスの設立を目指す2件が成立。誰かの「これがやりたい」という挑戦と空き家を結びつけることで、まちに新たな価値を生み出す動きが、少しずつ広がっている。


DIYやものづくり体験も楽しめる。

古いものを利用し、新しい価値を生む

山邉さんが空き家の利活用を進めるなかで、もう一つ気になっていたことがあった。

「空き家を次の人に引き継ぐときに、膨大な量の古家具や雑貨などの残置物が出てきます。それらが捨てられていくのを目の当たりにして、なんとかできないだろうかと思っていました。中には、今の時代ではつくられていないものや、味わい深いものもあるんです。少し加工すれば、生まれ変わるんじゃないかと思ったんです」

空き家からレスキューした生活道具。

そんなときに出会ったのが、「アップサイクル」という考え方だった。捨てられるはずだったものに手を加え、別の価値を持つものとして生まれ変わらせる。山邉さんは他県でその仕組みや手法を学び、合同会社「BOCO WORKS」を設立。今年8月に工房「アップサイクルベース凹(ボコ)」をオープンさせた。


八頭町に建つ元仏具店をリノベーションした。

「1階が工房スペースで、2階では商品を販売しています。自分でアップサイクルを体験することで、『捨てるのはもったいない』と思ってもらえたり、古いものに価値を見出したりする意識が広がっていけばいいなと思っています。空き家の悩み相談から、移住定住の受け入れ、そして、家財の再生まで。この場所ができたことで、空き家に関する課題に一貫して向き合えるようになりました」

「アップサイクルベース凹」も、元仏具屋を改装したものだ。役目を終えた建物も、そこに新しい人の思いやアイデアが加われば、また人が集まる温かい場所に変わっていく。古いものを眠らせず、次の使い手へ。鳥取県には、あなたの「やりたいこと」を「一緒におもしろがって支えてくれる」心強い仲間が待っている。

凹では空き家や移住・定住に関する相談も受け付けている。

アップサイクルベース凹

鳥取県八頭郡八頭町坂田8番地7
営業日:土日祝10:00~18:00

 

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〒680-0846 鳥取県鳥取市扇町115-1鳥取駅前第一生命ビル1階
TEL:0120-841-558(かける地域によって、鳥取、東京、大阪の窓口につながります。)
E-mail:iju-tottori@furusato-tori.org
HP: https://furusato.tori-info.co.jp/iju/

文・写真:藤田 和俊

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