〜Vibrant SUSAKI〜
【地域ルポ】躍動する、高知県須崎市
高知の海辺に広がる小さなまちが今、
希望のうねりに包まれている!

カツオやカンパチ、タイなど魚種豊富な水産業と、日本一の生産量を誇るミョウガなどの農業が盛んな高知県中西部の港町、須崎市

今この小さな町が、アート、起業、移住で活気に満ち溢れている。

その影では、ご当地キャラクター人気ナンバーワンの「しんじょう君」「海のまちプロジェクト」が市民の「やりたい」を全力でサポートしていた。

 

\須崎で何が起きている?/
高知の海辺に広がる小さなまちが今、希望のうねりに包まれている!

若手作家が須崎に滞在してまちをアートにする現代地方譚

「すさきまちかどギャラリー」をメイン会場に2014年に始まり、現代美術を中心に、音楽や演劇も加え、これまでに100組以上の若手アーティストが須崎に滞在。町の歴史や文化、景観、食などを独特な視点でアート作品として発表してきた。


©高橋洋策

須崎の盛り上げ隊長はご当地キャラ「しんじょう君」

須崎市を流れる新荘川での目撃を最後に絶滅したと言われるニホンカワウソをモチーフに2013年に誕生。2016年にゆるキャラグランプリで1位を獲得した。須崎市の名を一躍全国区へ。ふるさと納税などへの貢献は多大で、市民からも愛される。

女性のためのクラフトビールすさきシェアブルワリー

「女性のためのご褒美ビール」をコンセプトに2024年4月に地元女子が中心になって設立。文旦や金柑、茗荷など須崎の特産品を使ったクラフトビールはおしゃれなデザインとともに人気の地ビールに。2025年11月末ごろには須崎駅近くに拠点をオープン予定。

シャッター街だった商店街に個性あふれる新しい風

須崎の街中はDIYの新店ラッシュが続く。移住デザイナーが営む「ホホ衣類」ではオリジナルネクタイのほか、しんじょう君のバッグやTシャツも。バー「アトリエミトク」は地域の人の集いの場。カフェ併設の古書店「織平庵」はライブも開催。

海洋都市、須崎を再創造する海のまちプロジェクト

新しい「海のまち須崎」創設のための拠点施設のひとつが「須崎大漁堂」だ。地元食材を使ったパスタなどを提供するレストランや須崎グッズなどの販売も。さらに、町中の古民家を改修し、分散型の宿泊施設として整備していく計画も進んでいる。

さまざまな人が訪れる多文化共生ノマド「とまり〜な」

北海道出身の水戸りいなさんが主催する空き寺を改修した滞在施設には、長期休暇やリモートワークの人が次々と滞在。パーティやワークショップも盛んに開き、年齢や国籍、性別を超えた交流拠点に。想いは「世界と須崎を繋ぐ!」。


【対談】市民の挑戦がまちを変える須崎再生の軌跡と未来

しんじょう君を生み出した元市職員でパンクチュアル代表の守時健さんと、「海のまちプロジェクト」を担当する現役市職員・有澤聡明さん。海のまち須崎の復権と、市民のやりたいことを全力で応援する2人のキーパーソンが、本気で取り組む地方創生とは?

⚫︎お話を伺いました

須崎市役所 プロジェクト推進室次長 有澤聡明さん(右)
2004年須崎市役所入庁。しんじょう君を使ったシティプロモーションや移住促進、ふるさと納税、現代地方譚など、さまざまなプロジェクトを盛り上げてきた。現在は産官学金連携の海のまちプロジェクトを担当する

株式会社パンクチュアル 代表取締役 守時 健さん(左)
1986年 岡山県倉敷市生まれ。関西大学卒業後、2012年須崎市役所入庁。しんじょう君を企画・プロデュース。2020年に独立し、株式会社パンクチュアルを設立。地方の魅力発信や地域活性化に取り組む

株式会社パンクチュアル
2020年3月設立。須崎市を拠点に、ECやふるさと納税事業を通じて地域の魅力を全国に発信。「地域が世界と渡り合える実力をつける」ことを目標に各地の地方創生に取り組む。現在は社員約300人の規模に成長

有澤 私が2004年に市役所に入庁した頃、須崎はイベントの多い町という印象でした。桑田山地区の雪割桜のキャンドルナイトや、市民によるよさこいチームの結成、鍋焼きラーメンを名物料理に育てるプロジェクト、須崎名物のウツボをテーマにしたイベントなど、それぞれの地域の方が思い思いに活動していました。隣の中土佐町が「カツオの町」として一致団結してPRしているのに比べ、須崎はバラバラというイメージでした。その状況を変えたのが、地域おこし協力隊の存在です。地域ごとの活動を支援し、横のつながりを作ってくれたことで、バラバラの町から「みんなで挑戦できる町」へと雰囲気が変わっていきました。

特に「すさきまちかどギャラリー」館長の川鍋達さんの影響も大きかったと思います。協力隊として館長に就任し、協力隊卒業後も町に残って館長を続けられていますが、それまで文化的体験をする機会の少なかった須崎に、生活の中に自然とアートがあるという新しい価値観を生み出してくれました。若手美術作家が須崎でアートを生み出す「現代地方譚」は今年で12回目を数え、「なんちゃない町」と思っていた市民が、「なんて須崎は素敵なんだ」と須崎の魅力を再発見するようになりました。そして、財政難にあえいでいた須崎で、やりたいことに取り組む人たちが増えた要因には、ここにいるパンクチュアルの守時さんの存在が大きいですね。


©表萌々花
現代地方譚では音楽イベントも開催。これまでにエッセイストとしても活躍する寺尾紗穂氏や浮/buoyのライブも

守時 私は2012年に須崎市役所に入庁しましたが、その当時は「もうこの市は終わっている」といった声ばかり。なんとかしてやると思って、入庁から3ヶ月後に70ページの企画書を提出したんです。

有澤 その内容は須崎のゆるキャラ「しんじょう君」をリニューアルし、まちを活性化させるというものでした。企画自体も驚きでしたが、入庁したばかりの若手職員の提案を即採用した楠瀬市長の決断力もすごいと思いました。

守時 企画書では、当時ブームだった「ゆるキャラグランプリ」に出場し、5年以内にグランプリを獲ることを目標に掲げました。2013年は14位、14年・15年は4位、そして16年には、予定より1年早く1位に選ばれました。しんじょう君の人気はすごいもので、全国から須崎市にファンが訪れ、バレンタインのプレゼントやファンレターも続々と届くようになったんです。

有澤 守時さんの企画の目的は「須崎市が自ら情報発信力を持つ」ことでした。しんじょう君の人気が全国に広がったことで、しんじょう君がSNSなどで発信するだけで須崎のPRとなり、2015年からは、ふるさと納税にも活用するようになりました。

守時 そのふるさと納税の企画は、有澤さんから「他の市町村が成果を上げている。須崎でもやってみないか」と話を持ちかけられたのがきっかけなんですよ。2014年の須崎市のふるさと納税寄付金はわずか200万円でしたが、しんじょう君を起用した商品のアピールを始めた15年には約6億円に、昨年には37億円に達し、四国1位を獲得しました。

有澤 ふるさと納税の拡大は、地域の取り組みを大きく後押ししました。安和という地域では、高齢化で農業を辞める人が増えていく中、特産品のポンカンを「しんじょう君のポンカン」としてふるさと納税に出品したところ、全国から注文と感謝の声が殺到。生産者が「農業辞めるの辞めるわ」と決意を新たにしてくれたこともあります。古民家をゲストハウスに再生するクラウドファンディングや、コロナ禍で売れなくなった養殖カンパチの応援企画などにもしんじょう君を活用しました。その結果は予想を上回り、カンパチは3日で1億円を売り上げました。


「廃業が続いていたポンカン農家をしんじょう君がPRし、大ヒット商品に

守時 最近気がついたことがあります。以前は須崎のニュースといえば、しんじょう君が中心でしたが、今ではアートのニュース、市民のクラウドファンディング、海のまちプロジェクトなど、市民のさまざまな活動が全国から注目されるようになりました。今や須崎は、市民が「やりたいことをのびのび実現できる町」に変わってきたと感じます。

私たちパンクチュアルも、そうした市民をサポートしながら、市外から資金を呼び込むことを目的のひとつとしています。地域が豊かでなければ疲弊していきます。これまで全国のしんじょう君ファンのおかげで、須崎市も弊社もスムーズに事業を進めることができました。今後は道の駅などのリアル店舗を運営し、さらにはフランス・パリへの海外進出も計画しています。これからも、ありとあらゆる地方創生に取り組んでいきたいですね。

有澤 私たちが取り組んでいる「海のまちプロジェクト」も、地域を豊かにすることが大きな目標です。高知信用金庫さんと一緒に、須崎の魚のブランド化や商店街の振興、地産外商、起業や創業の支援、宿泊施設誘致など、多方面で挑戦を続けています。かつて港湾で栄えた須崎市に、新しい「海のまち須崎」を創生したい。すべてその思いで取り組んでいます。


2024年11月には市制70周年を記念して「須崎のサカナ文化祭」を開催。マグロの解体ショーや包丁式などのステージイベントのほか、商店街には個性あふれる出店が並び大勢の人で賑わった


私の挑戦もここから始まった! 須崎市地域おこし協力隊

ジビエや釣り、カヌー、教育など、多彩な分野で人材を迎えてきた須崎市の地域おこし協力隊。退任した協力隊の受け皿を地元企業のパンクチュアルが担うことで、3年後の定住率向上を目指す。

Read Johnathan Michael Patrickさん|サカナ本舗PR担当


(プロフィール)
アメリカ合衆国出身。前職はビジネスアナリスト。ボランティアで須崎サカナ本舗で働いた経験から、この街を盛り上げたいとの思いで協力隊に応募。2025年2月着任

もっか板前修行中。須崎の魚の魅力を広めたい!

和食の盛付けの美しさや魚の鮮度、キッチンでの流れるような所作など、すべてが新鮮に映った。現在は板前として修業を重ねながら、須崎の魚の魅力を世界に伝えたいと考えている。目標は、将来この地で自分の店を開くこと。

松平愛奈さん釣りバカシティプロジェクト


(プロフィール)
神奈川県鎌倉市出身。前職は遺品整理士。釣りで訪れた高知の魅力に惹かれ、須崎市が掲げる釣りでまちおこしに興味をもち、協力隊に応募。2024年4月着任

釣り三昧な暮らしを求めて移住した釣りガール

釣りイベントの企画や須崎の釣りの魅力をSNSで発信する一方、釣り初心者からの問い合わせにも丁寧に対応。目標はもっと市民を巻き込んだ釣りイベントを開催し、「市民全員釣りバカ」の町にすること。

川鍋 達さんまちかどギャラリー館長 NPO代表


(プロフィール)
千葉県八千代市出身。前職は美術家で美術教員。ドイツで経験した日常に芸術・文化がある暮らしを日本でも実践したいとの思いで協力隊に。2016年の退任後も館長を継続

日常に芸術を。須崎に芸術を根付かせた功労者

すさきまちかどギャラリーの立ち上げから関わり、現代地方譚を企画・運営。若い世代が地元に誇りを持てるよう効率や経済性では語れない価値の醸成を芸術・文化の分野から模索している。今後は自身の制作活動も再開し、地域との関わりをさらに深めていきたい。

片田大地さん須崎市元気創造課 移住担当


(プロフィール)
愛媛県松山市出身。前職は広告会社の営業。高知出身の妻の地元に戻りたいと考えていた時に協力隊の募集を知り、新たな環境でチャレンジをしたいと思い応募。2025年4月着任

自分の意思で動ける仕事にやりがいを

移住フェアへの参加や空き物件紹介、移住者インタビューなど、移住関係の情報発信を担当。ごはんがおいしく自然豊かでありながら、極端な田舎でもないちょうどいい大きさの町、須崎の魅力をもっと伝えていきたい。

◆須崎市では地域協力隊を絶賛募集中です!
詳しくはコチラ

https://www.city.susaki.lg.jp/life/detail.php?hdnKey=123


ふるさと納税とともにまちが急成長!あなたも須崎市の関係人口に!

2014年にはわずか200万円だったふるさと納税寄付金額が、2024年には約37億円で四国1位に。大人気キャラ「しんじょう君」が豊富な返礼品をPRする。

人気はカツオをはじめとした海の幸、刃物などの工芸品、野菜の定期便や果物など。お米や海のレジャーまでレパートリーは幅広い。 

\須崎が誇る名品をゲット!/

・迫田刃物  黒打ち船行型 万能包丁
400年の歴史を持つ土佐打刃物の鍛造技術を受け継いだ「迫田(さこだ)刃物」。昔ながらの鉄と鋼を使った鍛造技法で1本1本手作りで仕上げる。魚はもとより肉や野菜にも適した万能包丁で刃渡りは約15cm。

・竹虎  えびら(竹編み平かご)竹ざる
明治27年創業の老舗竹材専業メーカー「竹虎」。須崎市安和地区にのみ自生する「虎斑竹(とらふだけ)を用いた竹ざるは、梅干しや魚の干物作りには欠かせない。網目の詰まった網代編みで、梅なら約6kgを一度に干すことができる。

・いちかわファーム  冷凍ブルーベリー
清らかな山の水で育てる「いちかわファーム」のブルーベリー。さんさんと照る南国の太陽と水の影響で甘味が強いのが特徴。冷凍品はジャムやソースだけでなく、そのまま食べてもシャーベットのような食感を楽しめる。

・職人吉岡  からすみ
漁師から直接買い付けた鮮度抜群で脂のりのよい最高級食材だけを用い、「職人吉岡」が湿度や温度、塩加減、乾燥具合にまで細心の注意を払い、丁寧に仕上げたからすみ。いまや須崎を代表する逸品。

・土佐龍  四万十ひのきまな板 極め 一枚板
森を育て、活かし、未来へとつなぐ「木の料理人」を掲げる「土佐龍」。高級木材として名高い四万十ひのきは油分を豊富に含み、抗菌・抗カビ作用を持つ。食材の匂いが移りにくく、いつまでも清潔感を保てるのが特徴。

◆須崎市の返礼品一覧はこちら

https://www.furusato-tax.jp/city/product/39206?incsoldout=1

 

ふるさと納税でかなえた、まちの夢

子育て支援、スポーツ、観光、芸術、まちづくり事業など、寄付金額の増加にともない、暮らしのさまざまなシーンで活用されるように。

・中四国最大級のキャライベント「ご当地キャラまつり in 須崎」

2025年で10回目を迎える中四国最大級のゆるキャラの祭典。24年は全国から87体のゆるキャラが集結、約3万人の来場者で賑わった。25年も89体が参加し、2日間に渡って須崎市内はゆるキャラ一色に。

海のまちプロジェクトから生まれた須崎の魚の発信拠点

海のまちプロジェクトの一環でオープンした魚のPR拠点「須崎のサカナ本舗」。須崎の特産品・須崎勘八のほか、季節ごとに入れ替わる獲れたての旬の魚が味わえる。ゴールデンウィークや夏休みなどにはイベントも開催。

・テクノロジーで10代の未来を切り開く学びの場「てくテックすさき」

「てくテックすさき」では、須崎市の「Make “IT” Fun〜キミの『好き』を楽しもう〜」の教育ビジョンとともに、プログラミングロボットやグラフィック機器を備え、10代がテクノロジーを使って「やってみたいこと」に挑戦できる場を提供している。

 

須崎市の基本情報


高知県最大の内海、浦ノ内湾には由緒ある鳴無(おとなし)神社が鎮座する。夏の大祭では神輿を乗せた漁船が湾内をパレードする

【DATA】
人口:約1万8,991人
面積:135.2㎢
主な産業:農業、漁業、石炭工業
マスコットキャラクター:しんじょう君


お問い合わせ

須崎市役所元気創造課

TEL:0889-42-2311(代表)/FAX:0889-42-7320

HP:https://www.city.susaki.lg.jp/

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