【とくしまSTYLE : 02】
ビールを醸し、地域を醸す
JouZo BEER BASE

地域には様々な資源があり、魅力がある。それを活用してビールにすることで、
たくさんの人の手に届け、楽しい時間を提供し、地域のことを知ってもらうきっかけに。
地域と人、人と人を繋いでいく「JouZo BEER BASE」の挑戦は始まったばかりだ。

 

地域への思いから始めたクラフトビール

JR徳島駅から車でおよそ35分、徳島阿波おどり空港から車でおよそ50分の道のりを、徳島市から南下すると、田畑が広がり点々と住宅が建っている阿南市那賀川地域にたどり着く。
その一角に、オシャレな外観の「JouZo BEER BASE」はある。元々は製材所だった建物をリノベーションして、クラフトビールのブルワリーを始めたのは徳島県阿南市出身の住友正伯さん。すぐ近くに実家があり、子どもの頃はこの製材所のおがくずに集まってくるカブトムシをよく捕まえたのだとか。


住宅街に突如現れるオシャレな外観のブルワリー。製材所だった建物をリノベーションした。

醸造だけでなく、その場で飲めるタップルームも併設しており、出来立てのビールを生でいただくことができる。住友さん本人が注いでくれ、ビール談義に花を咲かせながらの一杯は、格別だ。

通常、ビールは麦芽とホップを原料に作られるが、副原料を加えることで味や香り、色など、ブルワリーごとの個性が出る。住友さんの作るビールの副原料は多種多様だ。すだちやゆこうなどの柑橘類はもちろん、りんごやトマト、とうもろこしなど、色んな副原料に挑戦している。

2021年の9月にJouZo BEER BASEをオープンしてから約1年で、25種類のビールを作ってきた。おいしく、そしておもしろいビールを作りたいという思いと、地域の特産品を使って、地域をPRしたいという思いを抱く住友さん。ビールを作り始めたきっかけも、地域への思いからだった。

ビールにしてほしいと、原料を持ち込まれることもある。

 

規格外や捨てられるものを活用して地域活性化へ

大学卒業後、14年間のサラリーマン生活を送った後、住友さんは地域おこし協力隊として、広島県呉市の大崎下島に赴任した。
そこは、広島県呉市から瀬戸内の島々を結ぶ「とびしま海道」の島の一つだ。隣にしまなみ海道があり、瀬戸内の美しい風景は同じだが、とびしま海道の知名度は、それほど高くない。そこで、まずは、とびしま海道を知ってもらうため、大崎下島が国産レモン発祥の地であることに着眼し、レモンのお酒を作ろう、みんながワイワイ楽しく飲むのにピッタリなビールがいいのではと、「とびしまビール」を作り始めた。

当初は、島にブルワリーを作るべく奔走したのだが、物件や排水の問題から難しく、困っていたところ、地元の縁と製材所の持ち主さんの好意により、現在の場所でブルワリーを始めることができた。阿南市にブルワリーを構えたことで、とびしま海道だけでなく、徳島の特産品を使ったビール作りも始めた。自分が生まれ育った徳島や阿南市、県南地域をもっと元気にしたいと思ったからだ。

一貫している住友さんの作るビールは、主に地域の特産品や規格外や傷物など出荷に適さない農作物を副原料に使っている。中でも、梨を使ったビールは、台風の影響で梨の実が落ちてしまった農家さんから打診されて作り、出荷できなくなった梨の活用になった。

徳島県で栽培が盛んな「藍」のビールの場合は、「認知症の人と家族の会県支部」の方々がつるぎ町の家賀地区で栽培した藍を使用。自宅にこもりがちな認知症の方々と地域の交流の場にも一役買っている。また、産業廃棄物として捨てられてしまう麦芽の搾りかすは、お菓子に混ぜ込んだり、肥料として再利用したり、無駄にしない取り組みをしている。副原料のアイデアについては、住友さんが発想することもあるが、農家さんや行政の方から相談されることも多い。

そうやって、地域のPRから始まったビール作りだが、ジャパングレートビアアワーズ2022では、「Apple Cinnamon Ale」が金賞を、インターナショナル・ビアカップ2022で「SoltyれもんSaison」が銀賞を受賞しており、味にも定評がある。

 

阿南市産のいちごを使った「strawberryセゾン」

 

地域に長く愛され続ける企業に

住友さんが、地域に目を向けるようになったのは、サラリーマン時代に転勤で赴任した福島県で、東日本大震災から復興に勤しむ人々の姿を目の当たりにしたからだ。

そこで、仙台の大学院に通いながらソーシャルビジネスや地方創生のことを学び、MBA課程を修了。縁もゆかりもないところで、挑戦してみたいと、瀬戸内の島、大崎下島で地域おこし協力隊となり、現在に至る。

子どもの頃から、いつかは起業したいという思いは、ずっとあった。まずは、経営者として全てのことをやってみたいから、現在はたった1人でビールの醸造から仕入れ、マーケティングや営業、販路開拓まで行っている。

目指すのは「地域に長く愛され続ける企業」だ。会社の歯車から社会の歯車になった今、「売上よりワクワクするかどうかを大事にしている。そして、人の集まる場を作っていきたい。」と語る住友さんの目は耀いている。地域のものを使ってビールという形にし、地域の魅力を全国に発信し、そして地域に愛されるものへ、挑戦はまだ始まったばかりだ。

 

住友 正伯(すみとも・まさのり)さん
徳島県阿南市生まれ。
学卒業後、製薬会社に勤務。
サラリーマン時代に経営学修士課程を修了の後14年間勤めた会社を退職し、広島県呉市大崎下島の地域おこし協力隊に就任。
好きだったクラフトビールを通して島の魅力を発信したいと『とびしまビールLAB』を開業。とびしま海道の特産物を使ったクラフトビールを販売。
2021年夏、地元である徳島県阿南市にクラフトビール醸造所(マイクロブルワリー)を開設

JouZo BEER BASE
https://jouzo.co.jp/

 

文/ひらかわひろこ 写真/山川 明訓

 

 

徳島県では、「複業」や「サテライトオフィス勤務」、徳島ならではのワ―ケーション「アワーケーション」を通して、地域と継続的に関わり、自身のスキルやノウハウを活かしながら活躍の場を広げることで自分らしいライフスタイルや働き方を実現することを「サステナブルワークスタイル」と位置づけ、人材の誘致を推進しています。

「徳島に惹かれた人が新しい人を呼ぶ」をコンセプトに、 徳島への「新たな人の流れの創出」を目指す取り組みです。

 

サテライトオフィスポータルサイト
TOKUSHIMA Satellite office
https://www.tokushima-workingstyles.com/

 

移住交流ポータルサイト「住んでみんで徳島で!」
https://iju.pref.tokushima.lg.jp/


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