嬬恋村に大集合!
「群馬県地域おこし協力隊交流研修会」の2日間に密着!

2月4日〜5日に、群馬県嬬恋村にて「群馬県地域おこし協力隊交流研修会」が開催されました。今回は、15市町村39名の協力隊のみなさんが参加。
協力隊は3年という任期で、そのまちに住みながらそれぞれに与えられた役割をもって活動します。
参加者には2年目、3年目の協力隊の人も多く、昨年も参加した人同士や近隣の町の協力隊との再会を喜び、研修が始まる前から賑やかな雰囲気が出来上がっていました。
昼夜盛り上がる2日間となった、その様子をレポートします。

 

愛妻家の聖地・嬬恋村での研修初日

研修会場となったのは、嬬恋村の上信越高原国立公園内にあるビジターセンター「鹿沢インフォメーションセンター」です。
嬬恋村は、県の北西部に位置していて平均標高は1,000mの高原地帯。年間平均気温8℃前後で涼しい気候ということから、高原野菜の適地で中でも夏秋キャベツは日本一の生産量を誇る一大産地となっています。万座温泉や鹿沢温泉などの温泉も豊富で、浅間高原、白根高原といった見事な自然も広がっており、観光地としても訪れる人たちを魅了しています。
研修開催日は、時折雪がちらつく天候でしたが、青く綺麗な空と雪のコントラストが見事でした。

村名は、日本武尊(やまとたけるのみこと)が吾妻山の鳥居峠に立って、亡き妻・弟橘姫(おとたちばなひめ)を偲んで「あづまはや(ああ我が妻よ)」と嘆き悲しんだという伝説に由来しているのだそう。
現在は、キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶイベントが開催されるなど、“愛妻家の聖地”として村の認知度を高めています。

 

issue+design小菅さん講演!
「自ら楽しめば、一緒に楽しめる仲間が集まる」

まずは、特定非営利活動法人issue+designの小菅隆太さんによる講義からスタートしました。issue+designは、社会課題を市民の創造力で解決していくソーシャルデザインプロジェクトに取り組む団体で、小菅さんは、地域活性化ディレクターとして、広報PR関連の業務のほか各地の地域活性化事業のお手伝いをしています。
また、「日本愛妻家協会」の広報として、嬬恋村で開催されている「キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶ(通称キャベチュー)」の司会・監修、嬬恋村観光大使も務めるなど、地域をデザインするキーパーソンとしても活躍されている方です。

現在は神奈川県に住む小菅さんですが、父親の出身県であり、毎年年越しに親戚が集まったり、何かと群馬には縁があったのだそう。

講演では、「つながりの重要性『仲間をつくるエネルギー』」と題して、小菅さんの経験や事例、さまざまな専門家たちの見地を交えながら、つながることで広がっていくワクワクするお話を聴いていきました。

地域おこし協力隊員各々の役割はあれど、決して一人だけで遂行するのではなく、地域内外の人たちとの関わりを通して業務を行っていきます。やりたいことをしっかりやり遂げるために、共に走る仲間も必要です。良質なつながりを持つチームが、地域や住民にもたらすものは4つあると小菅さんは言います。

「幸福度を高める」
「生産性、創造性を高める」
「利他性を高める」
「経済的利益を生む」

これらは、地域おこし協力隊が活動するうえで地域に求められていることだという話がありました。
良いチームや仲間をつくっていくためには、「計画を制限の外側で楽しめそうか?」「予想を超える出会いを生み出せそうか?」「胸が高まるリズムを感じるか?」「堂々とそこに立っていられるか?」「誰かを幸せにすると確信しているか?」そんな問いを持ちながら進めていくことが大切だと小菅さんは捉えています。

「自分たちが主体的に楽しむことで、一緒に楽しむ仲間が集まる」という小菅さんの言葉を聴き、熱心にメモをとる人や話に聞き入っている人も見られ、今後の活動をするにあたってひとつの指針になる話を聴ける時間となりました。
和やかな雰囲気の会ではありましたが、「地域おこし協力隊の大事な役割とは?」を改めて考える機会になり、協力隊のみなさんの表情がきゅっと引き締まったようにも感じました。

 

自己紹介と座談会で、想いをシェア

1時間ほどの講演に続いて、今度は大きな円になって、1人1分で自己紹介をしていきました。

Uターンなどの隊員もいますが、北は北海道から南は福岡県まで、さまざまな地域から群馬県の地域おこし協力隊になっていることがわかりました。

「この自己紹介がプレゼンの練習になります。そして、1分という時間の中でしっかりと傾聴して相手を理解しようとすることも大切ですよ」

そんな小菅さんからの言葉もあり、ポイントや特徴をつかんでいこうと、1分1分しっかりとその人の話に集中して耳を傾けました。ユニークな自己紹介もあって、冒頭よりさらに和やかで明るい雰囲気ができ、場がどんどん温まっていくのが感じられました。

その後は、初日最後のプログラムである座談会。
小さなグループを複数つくり、自身の活動について改めて紹介する時間や、「観光」「農業」「クリエイティブ」「情報発信」といったように、テーマごとに関心の高いグループに分かれて、地域の課題や自分の悩みなどをシェアしてディスカッションをしました。

「(任期終了となる)3年後以降について」をテーマにしたグループでは、「収入面で不安。まずは何がしたいか悩んでいます。みなさんは3年後に向けてどんなことをしていますか?」といった具合に隊員たちの質問が飛び出し、リアルな現状や互いにアドバイスをしてグループ内で共有されていきました。

「引き続き住んでいきたい場所は、別荘があるエリアでもあるから、飲食に関わるものや、ボイラー技士などの資格を取得した。任期終了後は、別荘地ならではの仕事ができないかを模索している」と長野原町の佐瀬さん。(写真右)

「3年目に『今後どうしよう…』となるのではなく、1~2年目のうちから地域おこし協力隊じゃなくてもこの地域でやっていくんだという意気込みでやっていく必要があるのではないか」といった、同じく長野原町の中島さんの考えもありました。(写真左)

協力隊の任期終了後となる3年後を見据え、現在活動している地域をそのまま拠点としていくことを考えている人が多かったようです。地域に真剣に向き合い、そのまちの課題も魅力もわかる協力隊員だからこそ、「自分が地域をなんとかしたい!」という熱い想いと同時に「自分の生活基盤をどうすることがいいのか」という働き方や暮らし方への模索をしている様子が伺えました。

自由に意見交換がなされ、「まだまだ話したい…!」という盛り上がりを見せる中、初日の研修が終了となりました。

 

お待ちかね!交流会!

宿泊先となる「休暇村 嬬恋鹿沢」へ移動し、初日のメインイベント(!?)となる交流会が開催されました。
講師を務めたissue+designの小菅さんの乾杯の発声とともに、交流会がスタート!

協力隊の活動は多岐にわたり、地域によって業務内容はさまざまです。だからこそ、自分の活動のヒントを得ようと「こういう時はどうしていますか?」と互いに質問する場面も伺えました。
時間が経つにつれ、盛り上がりも増していき、気づいたら二次会へと突入!

「少し口下手でうまく表現するのが苦手なところがあるんです」と最初は寡黙だった南牧村の高橋さんも、気づけば、自分がどんな活動をしていきたいか熱い想いを語り、講師の小菅さんと議論してはまた言葉を紡ぎ出していて、だんだんと表情がにこやかにほぐれていくのが印象的でした。
話題は尽きず、このあと一部の人たちで深夜まで交流会が続いたそうです。

実際に顔を見て、自分の言葉で話をしていくと、相手のストーリーや想いに触れることができます。こうした時間を共有することによって、互いの理解が深まるだけではなく、活発なコミュニケーションが生まれ「こんなことをしてみるのはどうだろうか?」と新たな創造にもつながっていきます。

地域の人たちとの触れ合いや、現場で経験することを通して得られるものの大きさを、普段から身に染みて感じている協力隊のみなさんだからこそ、交流会という場を大切にしている様子が伺えました。

小菅さんの講演でもあったように、つながりの重要性をここで垣間見たように思います。

 

それぞれの立場から、活動を伝える2日目

2日目は、浅間山ジオパーク推進協議会事務局や移住・集落支援室などが設置されている「嬬恋村地域交流センター」で研修が行われ、元気よく体操してからのスタートとなりました。

ここでは、前日も講師を務めたissue+designの小菅さんをはじめ、嬬恋村の住民、協力隊、行政それぞれの立場で、地域活性化に向けた取り組み事例を聞いていきました。

まずは、2016年から嬬恋村地域おこし協力隊として観光協会に勤務し、観光PRやイベント運営などを手掛ける三ツ野元貴さん。

三ツ野さんは、FM軽井沢などでのラジオ出演やイベント企画を行ったり、観光協会のホームページを一新させて、フォトジェニックサイトアワードBEST100にも選出されたり、台湾で開催された温泉総選挙に嬬恋村の万座温泉をアピールして見事5位に導くなど、村を魅せることに積極的な活動をしています。

何より仲間やまちの人たちとお酒を飲みながら話をしている瞬間がたまらなく好きなようで、人懐こさを感じます。
「寒さは厳しいなと思うこともありますが、温泉もあって、キャンプやスキーもできる場所があって自然も豊かで、毎日が観光をしているような楽しさがありますね」と村での暮らしを嬉しそうに話しているのが印象的でした。

続いては、結婚を機にIターンをしてキャベツ栽培に従事する、東京都出身の松本もとみさん。
特産品であるキャベツを活用して、県が開発に成功していたキャベツ酢のパッケージリニューアルの取り組みで注目を集めたり、愛妻家の聖地と関連付けて、キャベツ酢を使用した「愛妻ダー」というサイダーを開発したりと、とにかく思ったことをカタチにしていく行動力がある方です。
また、「生意気」「でしゃばり」といった意味を持つ方言「おちょんき」という一見マイナスな言葉を逆手にとって、地域の人たちを巻き込み、花を植える、ごみ拾い、キャベツ生産を紙芝居で伝える活動など、「おちょんきねっと」と名付けたボランティア活動も精力的に行っています。
そうした活躍をし続ける松本さんが、つながりとは何だろうか?という問いに対して話してくれました。

「『想いを語ること』は大切だと思っています。伝えることで、チャンスが舞い込むきっかけになります。つながりがさらなるつながりを生み、自然発生的に人とつながっていくと実感してきました。自分ひとりだけで頑張らずに、周囲を頼ってみてください。」

人間関係が希薄だと感じていた東京での暮らしから、Iターンで移住した松本さんが嬬恋村を肌で感じてきたからこそ出てくる言葉の数々に、深くうなずきながら聞き入る協力隊の人が多くいました。

最後は、役場の総合政策課で移住や定住、地域振興業務を担当している職員の久保宗之さんです。
観光プロモーション展開などに携わる久保さんは、小菅さんと同じく日本愛妻家協会の一員で「キャベチュー」のイベント運営にも関わっています。久保さんは、共感を生み、盛り上げをつくるためには「どんなことも、まず自分が面白がることが大切」だと言います。

「私は『つながりが生まれたら、何か面白いことが起きるのではないか』ということを常に気にしています。村内外の人同士をつなげたり、さまざまな分野で活躍する人の協力を仰ぐことで、面白いことを巻き起こす人たちが出てきます。だから私は常に自分が楽しみながら行政という立場でできることを考え、みんなが楽しく笑顔でいられる村にしていきたいと思っています。」

それぞれの立場から取り組みを聞いていきましたが、「置かれている状況を楽しもうとする気概」と「行動力」があるという共通点がありました。
どんなことにおいても、理想通りに上手くいかないこともあるはずです。地域における課題も同じで、こうすれば上手くいくというテンプレートがないからこそ、それぞれ試行錯誤していることがよくわかりました。それと同時に、決して悲観しているわけではなく、みなそれぞれの立場や自分の能力を存分に生かして前向きに活動することで、いつしか周囲を巻き込み、ファンが増えていくという広がりが生まれていくようです。

昨夜の交流会では、思ってもみなかった業務を担当することになったり、必ずしも自分の思い描いた通りに活動ができていないと悩みを吐露する協力隊の声も聞かれましたが、少しの行動とどんなことにも楽しみや面白さを見つけようとすることで、一歩前に進めていけるようになるのだと教えられました。

 

実際に体験する、見てみることで理解を深める

続いて、嬬恋村の協力隊員である荒井西夏(せいか)さんによるクラフト体験が行われました。
浅間山ジオパーク推進協議会などで自然の魅力を伝える活動をしている西夏さんからのレクチャーで、白樺の木を使用してメモスタンドを作ります。

林業で活躍する協力隊員のインパクトドライバーの使いこなしぶりはさすがだと感心しきり。思い思いに飾り付けをして、束の間の体験を楽しんでいました。

最後の研修は、ジオパークで浅間山周辺の調査・研究のほか、その魅力を伝えるガイドとしても活躍した嬬恋村地域おこし協力隊OBの坂口豪さんにガイドをしてもらって、ジオパーク関連施設などの現地視察を行いました。

嬬恋村地域交流センターの外に出てまちを歩きながら、鎌原(かんばら)地区に起こった大災害から復興に至るまでの歴史を学びました。この地区に今も遺る歴史の爪痕を見ることができ、普通に歩いていたら素通りしてしまうところもいかにして現在の状態になったのかを知ることで、より地域の理解につながる視察となりました。

 

楽しさ、やりがいを見出す 地域おこし協力隊員たち

研修を終え、数名の隊員から2日間の感想や今後の活動についてお聞きしました。
嬬恋村の協力隊員である荒井さんは、協力隊の任期終了後の活動についていろいろと考えを巡らせているそうです。

「私は山が大好きで、将来的には山を紹介するガイドになりたいという思いを持っているんです。今協力隊としてジオパークで浅間高原の文化や風土を伝える活動をしていますが、そういった経験を生かして、改めてどこかで下積みとして山のことを学びながら、いずれは個人ガイドとしても活動できるようになりたいと思っています」
とてもにこやかに、これから先の未来を楽しもうとする荒井さんの姿に心強さを感じました。

また、南牧村の協力隊3名にとっても、非常に充実した研修になったようです。

「お酒などで交流する場があると、いいですよね。話せることが多くなるので、お互いの理解につながります」
「自分たちの地域には課題もたくさんあるんですけど、いろんな方たちと話してみると、自分たちが活動する南牧村は裁量が大きく自由度も高くて、活動する環境として恵まれている部分もたくさんあると学びがありました」
「飯よし、人よし、風景よしで、最高の研修でした!」

本当に楽しかった、と話す3人の顔が晴れやかなのが印象的でした。

さまざまな悩みや現状を共有し合ったからでしょうか。解散となったあとも名残惜しそうに話をしている人たちも見受けられ、地域おこし協力隊員同士の仲の深まりを感じました。

今回の研修会を通して感じたのは、「どんなことにも楽しさを見出そうとする人たち」が群馬県にはたくさんいるということ。

地域おこし協力隊も、役場の担当者の方たちも、地元で活躍する方も、地域課題にしっかり向き合いつつほどよく肩の力が抜けているのです。決して思い通りにならないこともある中で、常に前を向いて楽しく試行錯誤しようとする気概を持った人たちに囲まれると「自分もやってみよう」という思いになります。

様々な地域について知りたい人、地域おこし協力隊に興味や関心のある人は、ぜひ一度群馬県の各地域を調べてみてくださいね。
そして、実際につながってみてください。
現地に訪れてみたり、直接会ってみると、さらに地域や人の温度を感じることができますよ。


(文:草野明日香、写真:金子敦子)

 

群馬県内の地域おこし協力隊について詳しく知りたい方は、下記のサイトをご参考ください。

群馬県地域おこし協力隊ポータルサイト(ツナグンマ)
https://chiikiokoshi-gunma.jp/

                   

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