富山県魚津市が主催する首都圏居住者向け移住・交流フェア「親子で味わう、魚津のおいしい学校給食」が、7月4日(土)に東京・日本橋の離島百貨店で開催された。
本イベントでは、同市の学校給食で月に一度行われている「うおづモリモリランチの日」の献立を再現したメニューを参加者に提供。献立を考えた給食センターの栄養教諭も登壇し、一般的な食イベントとは一風異なるユニークな形で魚津の食の魅力が伝えられた。

魚津から直送した食材を会場で調理。できたての給食を囲んだ。
食の宝庫、魚津市の学校給食はちょっと違う?
日本海の深海から標高約2,400mの山々まで、多様な自然環境を有し、「海と山のまち、魚津」をキャッチフレーズに魅力を発信している富山県魚津市。県内一の水揚げ量を誇るベニズワイガニをはじめ、魚介類ではホタルイカやゲンゲ、農産物では富山県産ブランド米の富富富(ふふふ)やりんご、梨など、山海の特産品が揃う食の豊かさは、市の大きなアピールポイントfのひとつだ。

大きく育った魚津産野菜の手触りに、子どもたちから感動の声が。
「魚津の特色って何だろうと改めて考えていた時に、息子の授業参観で周りの保護者から『魚津の給食はちょっと違う』という話を聞いたんです。実際に調べてみたら、給食に使われる野菜の地場産率は約46%で、県内自治体では2位という高い水準でした。そういう部分も魚津市の財産ですし、ぜひその味をいろんな方に知っていただきたいと思ったことが、今回のイベントを企画したきっかけです」
そう話してくれたのは、魚津市企画広報室で移住・定住の推進に取り組む林雅子さんだ。確かに、市のホームページで公開されている学校給食の献立カレンダーを見てみると、林さんの言葉通り地元の食材が多く取り入れられていることが分かる。

魚津市の学校給食予定献立表。四角い枠で囲まれている食材が地場産品だ。
未就学児から小学生までの子がいる親子を中心に多くの参加者で賑わったこの日。村椿晃(むらつばき あきら)市長も急遽駆けつけ、冒頭の挨拶では、病院や福祉施設の充実や人口当たりの商店・飲食店の多さなど、魚津の住みやすさについて紹介した。
続いて食の魅力にも触れ、「魚津の港には200種類以上の魚が揚がります。もっと大きな港は全国にたくさんありますが、これほど多彩な魚種が市場に並ぶ港は珍しいんです」と話し、魚津ならではの豊かな食文化を来場者にPRした。

「私たちは”ウェルカム”の気持ちで一杯なので、ぜひ今日は給食を通じて魚津の良さを知っていただき、次はぜひ魚津にお越しください」と話した村椿市長。
「うおづモリモリランチの日」を再現したメニューを実食
その後、林さんによる魚津市の魅力や移住制度の紹介を経て、いよいよお楽しみの給食タイムがスタート。一列に並んで順番におかずを受け取る“給食当番スタイル”で、大人の参加者も懐かしさを感じながら配膳が完了すると、各テーブルには計6品のメニューが並んだ。

トレーを持った行列ができると、店内はさながら給食会場に。
この日のメニューは、毎月19日の食育の日に学校給食で行われている「うおづモリモリランチの日」の献立を再現したものだ。まず主食は、「富富富」のご飯。日頃から献立作りを担当している魚津市学校給食センターの新保景子さんからは、「清らかな雪解け水と豊かな大地で育った富富富は甘みと旨みが豊富で、冷めてもおいしいので学校給食にぴったりです」という説明があり、実際に味わってみると、その言葉通り長い余韻のある甘みを感じた。

当日のメニュー。左上から時計回りに、カニと卵のスープ、りんごヨーグルト、牛乳(富山県産生乳100%)、海の幸三種盛り(ゲンゲの唐揚げ、ブリカツ、ホタルイカフライ)、はりはり漬け、「富富富」のご飯。
主菜の「海の幸三種盛り」は、ゲンゲの唐揚げ、ブリカツ、ホタルイカフライという海の幸の揚げ物トリオだ。その中でゲンゲは地元外にあまり流通しない珍しい魚で、新保さんは「全身がゼラチン質に覆われた深海魚で、コラーゲンをたくさん含んでいるので、汁物にするとプリプリの食感が楽しめます」と説明。かつては、甘エビ漁にかかる厄介な存在で「下の下(=ゲンゲ)」の魚として扱われてきたが、今では料亭や旅館で天ぷらや唐揚げで出される高級魚になり、「幻魚(ゲンゲ)」と呼ばれるようになったという逸話も紹介された。

見た目はちょっと地味なゲンゲ。果たして、その味は?
そのゲンゲを、この日は唐揚げで初実食。深海魚と聞いておそるおそる箸で掴んだが、カリっとした衣の中から現れるホクホクとした身はとても食べやすく、滋味深い味わいがあった。
副菜の「はりはり漬け」には、新川大根を使用。こちらは瑞々しい鮮度にとことんこだわり、なんと深夜1時から収穫されるというブランド野菜で、辛みが少なく抜群の甘さがある味わいが自慢。昆布とともに和えた一品は、さらにご飯が進むおいしさだ。会場では調理前の切干大根も試食で提供され、参加者から「このままでもおいしい」との声が。

「はりはり漬け」は、キュウリももちろん魚津産。
「カニと卵のスープ」は、ベニズワイガニ、トマト、小松菜、タマネギ、キクラゲ、卵と、こちらも地産食材てんこ盛りの一杯。幸福感を感じるベニズワイガニの出汁もさることながら、もうひとつ注目すべきは食感にアクセントを加えている地産のキクラゲだ。国内に流通するキクラゲは約9割が輸入物。国産キクラゲは珍しく、そんな希少食材が手に入るところにも魚津の食の豊かさを感じた。

具だくさんな「カニと卵のスープ」。
そしてデザートは「りんごヨーグルト」。魚津市学校給食センターでは、旬の短い果物を果汁にして保存するほか、ドライフルーツやゼリーなどに加工し、一年中使えるようにしている。りんご果汁をたっぷり含んだヨーグルトを楽しんで、子どもたちはもちろん、大人も思わず笑顔になる大満足のランチとなった。

おいしい給食を食べながら、親子の会話も弾んでいた。
「子どもたちに魚津の魚を」栄養教諭の思い
食後、新保さんから日頃の給食作りへの思いを聞くことができた。
全国的に子どもの魚離れが指摘されるなか、魚津でも同じような傾向が見られるという。そこには家庭の食卓の変化、素材の味や見た目など、さまざまな要因が考えられるが、新保さんたちは「子どもたちに魚津の魚をたくさん食べてほしい」という思いのもと、日々献立を考え、給食作りに向き合っている。
例えば、この日並んだ「海の幸三種盛り」も、そんな思いが反映されたメニューで、「お魚が苦手な子でも食べやすいように、揚げ物にしました」と新保さん。骨を嫌う子もいるため、骨の多い魚を使う時は加圧して骨を柔らかくしたものを使用している。

新保さんの説明で、魚津の特産品を学ぶ。
また、子どもが見た目に抵抗を感じやすい魚介類については、一年を通して段階的に慣れてもらえるよう工夫しているという。例えばホタルイカは、新入生が入学して間もない時期には、この日のようなフライで提供。次は干したホタルイカを揚げた豆と混ぜてフライビーンズに。さらにその次は、ホタルイカの姿がはっきり分かるパスタ料理へと、少しずつ抵抗感を和らげながら献立に取り入れているそうだ。
そうした努力により、子どもが給食で気に入った魚料理のレシピを知りたいと、保護者が給食センターに問い合わせることもあるという。新保さんは「子どもはなかなか新しいものにお箸が伸びないので、年間200食くらいを食べる給食を通じて、食べられるものがひとつでも多く増えてくれたら」と思いを語る。
「第2のふるさとづくり」参加親子が思い出語る
イベントの後半には、魚津市が昨年から展開する「うおづ親子第2のふるさとづくりプロジェクト」についてのトークセッションを実施。昨年度、このプロジェクトを通じて東京から魚津市立星の杜小学校に体験入学した矢代英理子さんと息子の大くんがゲストとして登壇し、魚津で過ごした日々を振り返った。

貴重なエピソードを話してくれた矢代英理子さん、大くん親子。
2019年に開校した星の杜小学校は、全国初のオール木造3階建て校舎を持つ小学校として県外からも注目を集めている。自由度の高いレイアウトの教室や階段状のオープンスペースに加え、木造校舎そのものを教材として活用する木育カリキュラムが大きな特色だ。当時4年生だった大くんも、魚津産木材を9割以上使用した校舎に興味を持ち、1学期から3学期まで延べ15日間にわたって体験入学した。

外観からして奇抜さが光る「魚津市立星の杜小学校」の校舎。
「みんな優しくてすぐに友だちになれました。階段で本を読んだり、みんなで鬼ごっこができて楽しかったです。木育やスキー学習も東京ではできない体験だったので、とても印象に残っています」と思い出を語ってくれた大くん。給食では牛乳を気に入り、この日のメニューにも「魚津の給食を思い出しておいしかったです」と顔をほころばせた。

「うおづ親子第2のふるさとづくりプロジェクト」の情報を自分で見つけたという大くん。
英理子さんも魚津の日々を振り返り、「山も海も川もあって、空気も水もお米もおいしいのが魚津のいいところ。朝起きると窓の外には立山連峰が見え、海沿いの道を走って小学校まで送迎する時間は、東京では味わえない非日常感がありました」と、魚津での暮らしを振り返った。
中でも一学期に体験した藍染めのワークショップが特に思い出に残ったそうで、星の杜小学校の風通し良い校風にも感銘を受けたという。
また、大くんが通学中の間、将来開業を目指すカフェの参考にと、市内各地のカフェ巡りに没頭。道中に訪れた「海の駅 蜃気楼」で、蜃気楼の状況を熱心に案内してくれるボランティアスタッフと出会い、ご当地トークで盛り上がるなど、地域の人々との交流も生まれた。「体験入学をきっかけに家族で魚津を何度も訪れるようになり、第二のふるさとができました」と語ってくれた。
全体のプログラムを終え、参加者からは
「魚津市の給食を食べる貴重な体験が出来てとても楽しかったです。特にゲンゲの唐揚げとりんごのヨーグルトが美味しかった!」
「温かい雰囲気のイベントで、子どもも楽しんで参加できました。今後、魚津市に実際に足を運び、地域の雰囲気をさらに知る機会があれば、ぜひ参加したいです」
といった感想があった。

口を大きく開けて頬張る子どもたちの表情が、おいしさを示す何よりの証拠だ。
一方、企画した林さんも充実の表情を見せ、「今回の企画を通じて私自身も魚津の食の豊かさを改めて感じましたし、地元で獲れた安心・安全な食材が給食で届けられていることを知りました」とコメント。
さらに「今回いただいた感想を10月の『うおづまるごとバスツアー』に活かしていきたいです」と、早くも次の企画に意気込みを見せていた。

次のイベントへの参加も呼びかけた魚津市企画広報室 移住・定住推進係の林さん。
10月25日「うおづまるごとバスツアー」を開催!
魚津市のグルメな移住体験イベント第2弾「うおづまるごとバスツアー」の開催が決定した。
当日はリンゴ農家での農業体験や地元漁師の指導による魚さばき体験、ご当地グルメの漁師飯を囲むランチなど、五感で魚津の食を味わうプログラムが盛りだくさん。
先輩移住者との交流会のほか、“日本最古の水族館”として知られる魚津水族館、本記事でも紹介している星の杜小学校の見学など、魚津の暮らしが分かる1日となっている。飲食店も地場産品も多く、外食や家庭、そして給食でも豊かな食が楽しめる魚津。その魅力が気になる方は、ぜひチェックを!

うおづまるごとバスツアー開催概要
日時/2026年10月25日(日) 10:00~16:30(ランチ付き)
対象/移住を検討している子育て世帯(移住を検討されている方)。大人のみの参加も可。
集合・解散場所/魚津市役所
会費/大人(高校生以上)5,000円 中学生以下2,000円
申し込み・問い合わせ先/魚津市企画広報室 Tel:0765-23-1095
取材・文:鈴木 翔 撮影:渡部 聡