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ハイレベルな飲食店が集まる関市で、
負けないコーヒーを!

関市小瀬にある古民家を改装した喫茶店「カフェ・アダチ」。自家焙煎コーヒーとパティシエが作るケーキが人気を集めています。先代が残した西洋のアンティーク調の食器や昔ながらの雰囲気がある内観を守りつつ、コーヒー豆の拡販にも力を入れている2代目店主の小森さんは、カフェ経営を視野に関市へ移住。小さな町で飲食店を営む魅力についてお話を聞きました。

 

捨てられないカフェへの憧れ、東京から関市へ

岐阜県加茂郡坂祝町出身の小森さんは、高校を卒業後、東京の大学へ進学。アルバイトをしていたアパレル関係の会社に4年程勤めます。

会社員として働きながらも、胸に秘めていたというカフェへの憧れ。小さい頃から家族で町の喫茶店をよく訪れていたという小森さん。カフェは身近な存在だったカフェを、いつかは自分で開業したい、と思うようになっていったと言います。

「高校生の頃から、自分は勤め人には向いていないと思っていました。じっと座っているのも、人の言うことを素直に聞くのも苦手。“自分で何かをしたい”という独立精神も人一倍強かったので、カフェをやるなら、雇われるのではなく、自分のお店を持ちたいと思ったんです」と、当時を振り返る小森さん。

「最初は東京でカフェをやろうかと思いました。けれど、金銭的に生活していくだけでいっぱいいっぱい。地元で開業する方が現実的だと思うようになりました」

26歳のときに、東京から地元にUターン。まずは開業資金を貯めるため、福利厚生がしっかりしていて家から通える関市の物流企業に就職します。

「地元で暮らすようになって、身も心も軽くなりました。東京はどこへ行っても人が多いことにくたびれていたけど、関市では移動もほとんど車。東京にいた頃より、休日に車でカフェや飲食店をいっぱい巡れるようになったのが嬉しかったです。自分が目指していた、飾らない雰囲気で地域に根ざしているカフェを巡り、お店作りのイメージを固めていきました」

ぼんやりと描いていたカフェ開業が、少しずつ現実的になっていきます。


▲「カフェ・アダチ」2代目店主となる小森敦也さん。コーヒーの魅力を伝えるフリーペーパーも発行。

 

コーヒーと出会い、広がったカフェの世界

小森さんは、カフェ巡りをするうちに、関市の「カフェ・アダチ」に出会います。昔ながらの喫茶店の雰囲気に魅了され、気付けば常連に。先代の創業者や、スタッフだった先代の娘さんと会話をするようになっていき、コーヒーへの興味がわいていったと言います。

カフェをやりたいという想いはあったものの、実はコーヒーが苦手だったという小森さん。最初はお茶メインのカフェをやろうと思ってたほどです。

「カフェ・アダチでも、最初は紅茶ばかり頼んでいました。コーヒーを注文してもミルクや砂糖をたくさん入れて飲んでいたので、先代から『うちのコーヒーは新鮮でおいしいからブラックで飲んだ方がいいよ』とそのたびに言われていたんです。そこからブラックコーヒーにチャレンジしました」

飲み始めて2~3回で、ミルクや砂糖を入れるよりもブラックコーヒーが好きになっていったという小森さん。それは、看板メニューである「アダチブレンド」の苦味と酸味のバランスが絶妙だったことも大きいのだそう。

自家焙煎されたアダチブレンドは、口当たりまろやかで飲みやすい仕上がり。アダチブレンドに出会い、コーヒーに興味をもった小森さんは、先代から焙煎機や焙煎方法を見せてもらい、ますますコーヒーの面白さに目覚めたと言います。休日のカフェ巡りも、岐阜の有名な自家焙煎コーヒーのカフェを目がけるようになっていきました。


▲アダチブレンド¥600は、自家焙煎した新鮮さが強み。

 

レベルの高い「Qグレーダー」を取得

そんな小森さんがカフェアダチで働くようになったきっかけは、先代の娘さんとの結婚でした。常連としてお店に通っているうちに、ご縁があり、先代の娘さんと結婚。

その頃、店を誰かに継いでもらうか、たたむかで悩んでいたという先代。娘と結婚した小森さんが働き始めたことで、継いでもらうかどうするか、という思いも芽生えていたそうです。

そんなとき、小森さんはカフェ巡りで出会った店主から、東京に『カフェ・バッハ』という日本でも屈指の名店があることを聞き、そこで開催されている週末スクールへ通うことに。

「コーヒーの知識はまだ浅かったので、最初は周りの人が何を言っているかわからなかったほど。それでもカフェ・バッハにはコーヒーに人生をかけているような人たちが集まっていて、衝撃を受けました。そんなセミプロばかりに囲まれている中で、テイスティングの試験では自分がぶっちぎりの1位だったんです。それを面白がったカフェ・バッハの代表から『Qグレーダー』の試験を勧められました」

「Qグレーダー」とは、主にテイスティングに関する知識を問われる資格。試験では、非常にレベルの高いテイスティングが行われます。現場での実務経験が1年未満で受かる人などほぼいないと言われていた中、小森さんは見事に合格。カフェアダチで働き始めてわずか数ヶ月で「Qグレーダー」を取得し、業界の様々な人から注目を浴びます。

レベルの高い資格を取得したことで先代に認められ、小森さんはカフェ・アダチの後継者となりました。


▲Qグレーダーを取得し、自らの道を切り開いていった小森さん。

 

コーヒー豆の販売・卸売にも注力

小森さんはカフェ・アダチを継いで3年目。先代が残した昔ながらの喫茶店の雰囲気を残しつつ、新しい事業の取り組みにも熱心です。おいしいコーヒーを1人でも多くの人に飲んでほしいという想いから、カフェに加工用の焙煎工場を併設。関市近隣の30件以上の飲食店にコーヒー豆を卸したり、ネット販売にも注力しています。

今では、取り扱うコーヒー豆は15種類以上。海外の農園まで直接買い付けに行くこともあります。

「生産者と会っていろんな話ができるのが面白いです。今はペルーとメキシコの農園から直接買い付けを行っていますが、まだまだ少量。トン単位で購入すると有利な取引ができるので、これからは種類も増やしながら量も増やしていきたいです」

こういった取り組みのおかげで、さらにお店の特色が濃くなっていきました。「“カフェ・アダチ=豆にこだわっている”ということがお客さんにも徐々に認知されているのが嬉しいです」と笑顔で話す小森さん。

また、関市の産品に認定された「刀匠ブレンド」や、伝統的な歴史を持つ「小瀬鵜飼」とコラボした「鵜飼ブレンド」などのブレンドも手がけ、コーヒーを通じて関市の特色を発信することにも意欲的です。


▲アンティーク調の家具がかわいい、昔ながらの雰囲気が漂う内観。

 

飲食店のレベルが高い町で、他に負けないコーヒーを

関市は”刃物のまち”として知られ、職人気質な人が多いと言われていますが、それは飲食店も同じ。関市には、蕎麦屋「そばきり萬屋町 助六」や鰻屋「辻屋」など、歴史ある名店が集まっています。

「人口9万人の都市で、個人事業主の数がこんなに多い町は特異。個人経営の飲食店が多く、どのお店も独自性が高いです。町に成熟した食文化が根付いているので、逆にチェーン店が根付かないと言われるほど。関市にあるレベルの高い名店からいつも刺激をもらっているし、ここでカフェができることが誇り。自分のコーヒーも他に負けないレベルを追及していきたいです」

関市には、レベルの高い飲食店同士で切磋琢磨しながら刺激しあえる環境があります。

 

独立したい人の受け皿もたくさん

カフェ・アダチにはギャラリースペースも併設しています。小森さん自身も大切にしている「独立心」ある人に貢献したいとスタートした貸しギャラリー。展示の予約は2年先まで埋まっているほど人気です。実際に、ギャラリースペースでハンドメイド雑貨を展示し、その後自分のお店を開業したという事例もたくさんあるそうです。

また、関市で独立したい人におすすめだというのが、「関市ビジネスサポートセンター」。

「関市ビジネスサポートセンターは、事業を立ち上げるときに相談に乗ってくれる場所。地域の起業者同士をマッチングしたり、具体的な提案をしてくれたりと、サポートの手厚さが魅力的です」と教えてくれた小森さん。

飲食店を営みやすい関市には、これからどんどん個性豊かなお店が増えていきそう。小森さんも関市を飲食で盛り上げてくれる志の高い仲間を待っています。

 


小森敦也さんに質問!

Q:お店には地元の方と市外の方、どちらがよく来ますか?
A:月に1〜2回のペースで市外から来る常連さんもいます。地元以外からも愛されているのは嬉しいことですね。

Q:関市はどんな場所ですか?
A:いろんな店が近い距離にまとまっているので移動などの面で生活がしやすい。その分心に余裕ができ、自分のペースで人生を見つめ直せる場所です。

Q:関市にはどんな人が多いですか?
A:のんびりしている人、食文化に長けていて職人気質なこだわりを持っている人が多いです。


【プロフィール】小森敦也さん

岐阜県加茂郡坂祝町出身、大学進学を機に上京。東京で約4年間アパレル関係の仕事に従事後、関市にUターン。2016年にCQI「Qグレーター」取得、有限会社ニジュウ・イチ企画代表取締役に就任。

【「カフェ・アダチ」店舗情報】
時間:8:30 – 18:30 L.O. 18:00
定休日:金曜
全席禁煙 / バリアフリー
座席数:店内40席
住所:岐阜県関市小瀬1833
電話番号:0575-23-0539

 

写真/長尾理恵
文/岩井美穂(広瀬企画)