農場のそのままを体験する「農場ピクニック」

大規模な地元農業を観光商品に。
農業と観光、両方の視点をもち
畑でしか感じられない感動を伝える。

十勝の農業のいまある そのままの姿を見て感じてほしい

広大な畑の連続は、距離感がつかめなくなるほど。日本のほかのエリアではまず目にできない、自給率1200%を誇る北海道十勝地方ならではの景色だ。
この壮大な景色は観光商品になるのではないか。そう考えた井田芙美子さんが帯広市で立ち上げたのが「いただきますカンパニー」。
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いまある十勝の農業をそのままに、五感をフルに使って感動してほしいというのが井田さんの願いだ。メインの「商品」は「農場ピクニック」。畑ガイドが季節ごとに美しい表情を見せる農園を案内し、そこで収穫されたものでつくったランチやおやつを味わえる。
畑に会場を設け収穫された作物を味わうイベントは全国各地で開催されているが、ここで提供するのはあくまでも観光商品。日程に合わせてお客が来るのではなく、お客は自分のスケジュールに合わせて参加できる。前日予約可としているのも、旅先で翌日のプランを考えた際、選択肢に入るようにとの思いからだ。

プロの畑ガイドが観光と食育のシーンで 十勝の農業をわかりやすく紹介

今年最初のツアーが実施されたのは帯広市郊外の菜の花畑。道東の津別町と大阪からのお客2組が参加した。なたね油を採るための畑であることなど説明を聞きながら1時間ほど畑を見学したあとは、お待ちかねのランチタイム。
ガイドの指示に従って各自が摘んだ菜の花のつぼみがおひたしと吸い物、そして天丼になって提供された。「菜の花の味って濃いんですね」「同じ道内でも、景色が全然違う!」など、存分に畑の風景と菜の花を楽しむ2時間となった。
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農業体験の代表的なものは収穫体験だろう。しかし、十勝のダイナミックな農業の魅力を伝えるのには不向き。井田さんは2年半前に研修で訪れたイタリアのアグリツーリズムを例にあげる。
「風景を楽しみながらワインを飲む以外何もしない。大人の余暇の過ごし方です。日本だと何かと体験させようとしてしまうけどれど、うちでは農場の風景とそこで味わうものを大事にしたいんです」
あるがままの景色を見せるため、お客に不備を強いることもある。
「でもきれいな休憩室を畑につくる必要があるでしょうか?お客さんが求めているのはこの景観とそこで食べるという経験。たとえば駐車場から飽きずに20分歩いてもらうのも畑ガイドの腕なんです」
文:市村雅代  写真:川村勲
全文は本誌(vol.18 2016年8月号)に掲載

                   

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