これからやってくる みんなと一緒に まちを築き上げていきたい

福島県の太平洋側、「浜通り」と言われる地域にある富岡町。震災から11年、温暖な気候で知られる町は今も復興の途上にある。そんな町で新たに移住者の相談窓口となるのが「とみおかプラス」。町の空気を伝える「お試し住宅」オープンを前に同所を訪ねた。

 

 ボランティア経験を機に地域づくりに興味がシフト

JR富岡駅からほど近い、元は写真館だった建物に「とみおかプラス」の事務所がある。とみおかプラスは平成29年1月に設立された社団法人。町内外あらゆる人々の“つながり”を土台とし、富岡の「未来に向けたまちづくり」を主導する民間主体の団体だ。

福島に移住して9年目、現在は富岡町で暮らす辺見珠美さん

「私が最初に富岡町を訪れた時は本当に人がいなくて寂しい感じがあったんですけど、徐々に増えてつながりを取り戻しているところだと思います」

そう話すとみおかプラスの辺見珠美さんは東京都の出身。大学で放射線を学んでいたが、震災を機に足湯ボランティアで岩手へ赴くなど東北との縁が生まれた。その後、東京へ避難してきた富岡の子どもたちに学習支援ボランティアで勉強を教えたこともあった。思えばそこから道は富岡町に繋がっていたのかもしれない。

「原子炉運転員と言いますか、電力プラントの中で働く人になりたかったんです。でも原発が引き起こした事故ということもあって、自分は何がしたいのか改めて見つめ直して。そういったことがきっかけとして大きかったですね」

就職という大きな節目と、震災とその後のボランティア活動で感じたこととが重なり人生が大きく舵を切る。

「ちょうど富岡町の隣の川内村で放射線対策業務職員が募集されていたのをきっかけに、福島に移住しました。川内村には4年ほど住んで、それからいわき市に3年、今、富岡町に2年目っていう感じです」

福島暮らしはもうすぐ10年となるだけに「東京ほどではないですけど、いわき市は私にとっては人が多すぎましたね。また、緑がもっと欲しいという人なら川内村がおすすめです。そのかわり冬がすごく寒い。穏やかな気候を好む人なら富岡町がいいと思います」と各地の違いを実感をもって語る。

「体に優しい気候はとても気に入っています。富岡町に対して熱い思いを持ってる方や面倒見のいいおじいちゃんがいてあったかいところも好きです。そういうところが富岡町の魅力だと思います」

 

 親身になっての移住相談 お試し住宅で暮らしを体感

お試し住宅

とみおかプラスはそんな魅力的な町と移住者との懸け橋となるべく活動を行っている。

「地域おこし協力隊の採用の際、役場さん、企業さんとの調整を私たちでやらせてもらいました。2月からは移住相談窓口を私たちが担当するので“ 移住と言えば『とみおかプラス』に相談すれば分かるよ”というのを目指してやってます」

辺見さん自身も移住者で町内の就職応援センターを利用して転職、富岡町に移り住んだ経緯もあるため「一番の売りは親身になれるところ。この周辺に住めば仲間になれると思うので、富岡町だけをゴリ押ししようとは思ってないですし、その人がどこに行ったら一番いいかを考えてます」と移住者の身になっての対応を心掛けている。

また移住を考える方々向けのお試し住宅も今年からスタートした。

「とみおかプラス」の2階のお試し住宅は、洋室と小上がりがある和室が用意され、浴室も陽を取り入れ明るい。

1階は「とみおかプラス」の事務所として、会議や研修などを行うスペース

「親戚の家に泊まるみたいな感じで何日か過ごして、富岡町の暮らしを感じてもらえればうれしいです。案内もしますし、ぜひ一度足を運んでもらえればと思います」

町は依然復興関連の仕事が多いが、「隣の楢葉町は飲食店の数が震災前より増えていますが、富岡町はまだまだ。お店をやるなら、是非とも富岡町で!」といった具体的なアドバイスも聞かれた。

富岡町には移住や子育てへの支援金、農業関連の補助金も用意されている。とみおかプラスでも詳細な話を聞くことができ、実体験に基づく相談にも応じてもらえる。

「住んでるみんなで新たに築き上げていくのはやり甲斐があると思うので、一緒に富岡町を作ってくれる人が来てくれたら嬉しいです。“仲間になろうよ”っていう感じです」

多くの人が暮らして初めてその場は町となり、町はそこに住む一人ひとりによって作られる。富岡町がつながりで溢れる町となるよう、とみおかプラスは新たな移住者を待っている。

 

文:長谷川亮 写真:阪本勇

                   
とみおかプラス
TEL 0240-23-6919
富岡町移住定住ポータルサイト

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