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Update on 2017.03.28

喜界島で旅と漁【後編】

ブルー・ツーリズム体験レポート

いざ、漁業体験!



日本中で農家と会う機会や農業体験する場はあるが、漁業体験となると限られてくる。多くの人にとって漁業体験は未知の領域なのではないだろうか。

水玉模様のモンガラカワハギ。いかにも熱帯魚な見た目だけど食べれます。

ドラキュラ釣り体験

その日の海はとても穏やかで絶好の漁業日和。地元の漁師さん協力の元、酔い止めを服用していざ海へ!エメラルドの海を颯爽と走る船上は、なんとも爽快だった。
魚が逃げるので漁師さんにとっては好ましくないことだが、時折クジラやウミガメも見ることができる。

正式名称はアカモンガラ。黒い体にオレンジ色の牙を持ち、ドラキュラと呼ばれるのも納得の風貌。とても格好いい!

ここでは「ドラキュラ釣り体験」ということで、船上で一本釣りを体験。水深40、50メートルくらいのポイントまで釣り糸を垂らすと、魚が次々に食いつく。反応が悪くなってきたら、漁師さんが良いポイントまで船を運んでくれる。

一発目から大物ゲット。重たい魚を釣り上げた時の達成感はひとしお。

漁師さんが餌の取り付けや、針を抜く作業をサポートしてくれるので、釣りに慣れていない方でも大丈夫。私も海釣りは初めてだったが、2時間弱で10匹近く釣れた。

大漁!様々な種類の魚が釣れた。

釣った魚は早速お昼ご飯に。
漁師さんから捌き方を教えてもらいながら、刺身やあら汁を調理。カワハギの皮を剥いだり、鱗をとったり。普段切り身ばかり買っているので貴重な体験だった。鱗ってこんなに硬いものなのか。
さっきまで泳いでいた魚はとても新鮮で、言うまでもなく美味しかった。獲れたての魚が頂けるのも漁業体験の醍醐味だ。

獲れたては歯ごたえプリプリ。活きが良い魚は色味も美しい。

定置網漁

次は定置網漁の体験。定置網漁とは海中に設置してある網に入り込んだ魚をとる漁だ。魚を追いかけてとる漁とは異なり、必要以上に魚を獲ることもなく環境にやさしい漁法とされている。

この下に定置網が設置されている。

最初に乗った漁船よりさらに小さな漁船に移り、定置網の設置ポイントへ向かった。まず、魚が入り込んだ網の中に漁獲用の網を投入して広げ、その後漁師さんが潜り、広がった網の中へ魚を追い込む。その様子を船上から見守るのだが、箱眼鏡で海中を覗くと魚の動きが追えるので、釣りとはまた一味違う楽しさがあった。

魚が網に入ったところで一気に引き上げるのだが、これが重たい。水の抵抗と魚の重みでずっしりとしている。皆で協力して引き上げると、ピカピカのムロアジが100尾ほど入っていた。

まだかまだかと重たい網を引き上げる


「たくさんとれた!」と思ったがこれは少ない方だとか。普段はもっとたくさんの量を、さらに少人数で引き上げてるのかと思うと、漁師さんの体力を尊敬せずにはいられない。
“手捌き”という包丁を使わない即席のさばき方を披露していただき、船の上でワイルドに試食。醤油ではなく、海水の塩気で食べるのも美味しかった。その日その時にしか食べられない、本当に自然そのままの味だ。
大量に獲れた場合は、このまま浜売り体験もできる。島内放送で案内をすると、島のじいちゃんばあちゃん達がそろりそろりと買いに来てくれるそうだ。島民との交流の機会になるし、自分たちで獲った魚を直接販売できる事自体、なかなかディープな体験だと思う。



都会にいると、普段見る魚といえば切り身や加工品が多いのではないだろうか。さっきまで目の前で力強く跳ねていた魚をいただき、生き物を食べているということを改めて実感した。そして魚を食べられるのは、海に出てくれる漁師さんの存在があってこそ。そんな当たり前のことを、漁業の現場に直接触れることで思い出すことができた。

漁業体験は、観光としての側面以外にも、食育だったり、教養を高めるといった「学び」の側面としても良い機会になるのではないだろうか。もともと海や釣りが好きという人にとっても、きっと一歩進んだ体験になるだろう。


今回のモニターツアーでは、3泊4日喜界島に滞在した。アクティブな漁業体験と、のんびりと過ごす島時間。どちらもあって、充実した内容だった。本当はもう数日くらい居たかったところだ。小さい島だけれど、全部は見切れないし急いで見るものでも無い。また別の季節にゆっくり訪れたいと思う。

今回取り上げたのは喜界島のほんの一部分。ゆっくりと味わってもらいたい風景や時間、季節の食がここにはたくさんある。島の人と黒糖焼酎片手に飲み交わせば、きっと楽しい旅になるだろう。

いつでも気軽に行ける場所じゃないからこそ、ここには行った人にしか分からない独自の魅力がある。喜界島に迎えられたら、きっともう一度行きたくなるはず。


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喜界島観光物産協会HP http://kikaijima-kankou.com


(写真・文 伊藤春華)

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