3/4(土)に青山で、「郡上の食と狩猟文化」をテーマにしたイベントが開催されました。
このイベントは、郡上の歴史や文化、暮らしを直に感じられる「郡上藩江戸蔵屋敷」のキックオフとして行われたもので、今年6月から東京港区・青山を中心に連続講座として「蔵開き」していきます。
そして、今回のキックオフイベントで「蔵出し」した郡上のタカラは、豊かな森と、代々受け継がれてきた狩猟文化、そして猟師と継承する若者猟師。郡上のベテラン猟師と、猟師の六次産業化を目指す若手猟師メンバーをメインゲストに、トークイベントや、郡上で獲れた鹿や猪を使った調理実習&試食が行われました。
参加者みんなで和気あいあいとジビエを食し、地酒を味わい交流する、盛大な会になりました。当日の様子をお届けします。
狩猟文化を楽しむ仕掛けが盛りだくさん
イベント開場は、北青山に佇むおしゃれなカフェ「GLOCAL CAFE」にて開催
会場となったGLOCAL CAFEのある青山では、日本三大盆踊りの一つともいわれる郡上おどりが楽しめる地であり、毎年6月に開催される「郡上おどりin青山」は、現地さながら多くの人々で賑わいます。
実は郡上と青山には昔からのつながりがあるんです。江戸時代、徳川家康の家臣だった青山忠成が、現在の青山を含む地域を与えられ、これが青山の地名の由来とされています。その子孫の青山幸道が1759年(宝暦9)年に郡上藩主として着任。江戸の屋敷が青山にあったことから、郡上とのつながりが生まれました。そんなゆかりがあったとは驚きです。
会場入口では、猟関係のイベントらしくいきなり可愛らしい“罠”がお待ちかね。「ワナにかかってね!!」の呼びかけと足をかけるうりぼうが
会場内へ入ると、「郡上の食と狩猟文化」をよいリアルに体感できるアイテムが、数多く展示されていました。
銃のレプリカや猟師同士の誤射を防ぐためのオレンジのベストなど
ミノ、山傘など、貴重なアイテムも多く、稲作でお米を収穫し、ワラを大切にする気持ちからできた冬用の“ごんぞわらぞうり”、使い古した布きれを縫い合わせてつくった厚手の農着“ののだつけ”、山仕事をする人の木製の弁当箱“割子”など、昔の人たちの手仕事の温かみが感じられます。
改めて見てみると、昔の人たちがどれだけものを大切にして、よく考えられてつくられているかがわかります。
展示物は、郡上市にある「明宝歴史民俗資料館」に所蔵されています
「若者ハンターを引きこむ狩猟文化の魅力」トークショー
マイクで語るのは「猪鹿庁」長官の興膳健太さん。元々自然ツアーのガイドで、狩猟の体験ツアーなども企画している。福岡県から郡上市に移住し、10年目
イベントの初めは、郡上市の日置敏明市長や青山家第14代後見人の青山幸文さん、港区企画経営部の安田雅俊部長より挨拶があり、それから「若者ハンターを引きこむ狩猟文化の魅力」を語るトークイベントが始まりました。聞き手は「猪鹿庁」長官の興膳健太さん、講師はベテラン猟師の坪井冨男さん。
実は、郡上市は、猪の三大産地でもあります。「狩猟に興味がある人?ジビエ料理に興味がある人?」と質問すると、大半の参加者が料理に手を挙げ、今日のイベントは狩猟のお話はもちろん、料理がお楽しみのご様子。
狩猟歴約40年の坪井富男さん。自宅の一部を解体処理施設に改築し、獣肉解体処理業を開業。2016年に「ぎふジビエ登録店」の認定を受けている
会場から「猟師としてやっていくにはどうしたら良いですか?」という質問が飛び出すと、「専業でやってるのは、ほんの一部ですよ。助成金も出ませんから。冬は猟、夏は長良川へ行って鮎を釣ったり、いろいろと仕事をしていますよ」と坪井さんからリアルなお返事が。
また、猟師さんの間では、“猟欲”という、食欲や睡眠欲と並んで、獲物を獲りたい!という欲を表現する言葉があることや、良い鉄砲を持っていれば、うまく猟ができるとは限らないなど、猟歴約40年の経験者ならでの内容が語られました。
左は「猪鹿庁」の広報課課長の安田大介さん。イベント直前に郡上で行った銃猟の様子を語った
続いて壇上に立ったのは、「猪鹿庁」の広報課課長の安田大介さん。猟を始めて3年目で、先日に銃猟で猪をしとめた時の緊迫の状況を語ってくれました。山へみんなで狩りに出て、「出たぞー!」と告げられ、撃つのを任された時には、非常に緊張したとのことです。
そこで当時の状況を仲間に確認してみたところ、「僕は冷静に余裕を持って、しっかりとひざをついた状態で、銃で撃っていたようですね」と語ると、坪井さんから「ちょっと、いや、かなり違いますね」とバッサリ。「余裕を持ってと言っていましたが、僕には彼が猪にひるんで、一瞬、逃げたように見えました」とツッコミが入り、「いや、間合いを……」と安田さんが返し、会場は笑いの渦に包まれました。
おまちかねの試食タイム
脂身が少なく、ヘルシーなお肉として注目されている鹿肉。ヨーロッパでは高級食材として知られる
1時間ほどのトークセッションの後、いよいよお待ちかねの鹿や猪を使ったジビエ料理が登場しました。
食べてみると、粗びきのソーセージで、ゴロゴロとしたお肉感たっぷり。鹿の臭みはまったくなく、脂身が少ない分、重くないので、何個でも食べたくなるような味わいです。
参加者のみなさんで会話を楽しみながら、調理のお手伝い
さらに、参加者さんと一緒に、鹿肉のローストづくりのお手伝いタイムも。トークイベント中に、坪井さんの奥様がオリーブオイルで焼き、下準備して下さった鹿肉をフリーザーバッグに入れ、ポン酢をお肉が浸るぐらいたっぷり注ぎ、チャックします。
75度のお湯で20分ほど熱を加え、完成です。酢にはお肉をやわらかくする作用があり、ポン酢ではなくて、バルサミコ酢でもよいそうです。
お肉がおいしく味わえる2?5mmほどにカット。お見事な包丁さばきの参加者さん
こちらが完成した鹿肉ロースト。フリーザーバッグの中から鹿肉を取り出し、参加者の方たちが包丁で切っていくと、美しい赤身のお肉がお目見え。
こちらも臭みがまったくなく、何も言われなければ牛肉かな?と区別がつかないほど上質なお味。ネギしょう油だれ、わさびしょう油、ごま油のタレでいただきました。
つつじ、さくらなど天然の花酵母を使った珍しい郡上の日本酒
郡上市で店を構える、1740年創業の老舗の「布屋 原酒造場」の銘酒「元文」が用意され、ジビエとともに舌つづみ、瞬く間にすっからかんに。飲み口がやわらかく、優しい花の香りがふわりと鼻をくすぐります。関係者のみなさんも含め、赤ら顔で思いきり楽しみました。
左から「猪鹿庁」の全てのデザインを手がける「GoodJobLab.」の堀義人さん、「猪鹿庁」興膳健太さん、安田大介さん
2009年から活動を続ける「猪鹿庁」のミッションは、里山の生態系を保全し、 狩猟の技術を磨き、里山を最大限に資源化することで猟師の6次産業化の完成をめざすこと。地元メンバーで楽しみながらも、仕事としてちゃんと成立するように結びつけ、継続できることを意識しながら進めています。
「今、ひそかに狩猟ブームが来ています。女性が猟をする“狩りガール”という言葉も登場しています。自給自足をして、自分たちで安全な食を確保する。猪鹿庁では狩猟学校を開き、狩猟の獲る技術や捌く技術をプロから教わることができるので、良かったら郡上に足を運んでみてくださいね!」と、長官の興膳さん。
郡上のタカラを東京に届ける「郡上藩江戸蔵屋敷」がスタート
堀さんデザインの郡上藩江戸蔵屋敷のハッピ。ロゴは、蔵の文字が郡上の7つの地域(7角形)で囲まれ、TOKYO・GUJYOの文字も施されたメッセージがちりばめられちる
最後に、郡上市のことをもっと知りたい方へのお知らせです!
2017年の6月から、郡上市主催で郡上の歴史や文化、暮らしを直に感じられる連続講座「郡上藩江戸蔵屋敷」が都内で開催されます。”郡上のタカラを東京へ”をコンセプトに、郡上の林業や踊りの文化、自然の豊かさ、培われてきた知恵など、テーマごとに郡上からゲストを招いて東京で学び体験する場。そして、郡上の人々と、首都圏の参加者の人たちが、ともに学び合い、交流し合い、新しい価値観を創造していく機会を目指しています。
現地の郡上に行くフィールドワークもあり、リアルな郡上に出会える機会も用意されています。告知や募集はこれからスタートします。
郡上に興味のある方、地域に関わってみたかった方、郡上おどりが好きな方など、興味のある方ぜひ参加してみてくださいね!
「郡上藩江戸蔵屋敷」プログラム
http://gujo-edokura.com/Vol.1 踊り下駄を作り、郡上おどりを楽しむ WS(ワークショップ)/2DAYS
日程: 2017年6月11日(日)・24日(土)
場所:東京都港区内
Vol.2 神が宿る里「石徹白」の暮らしを学ぶWS/1DAY
日程:2017年7月22日(土)
場所:東京都港区内
Vol.3 郡上へ行こう! 郡上の例祭フィールドワーク/3DAYS
日程:2017年9月8日(金)?10日(日)
場所:郡上市白鳥町石徹白・明宝寒水
Vol.4 白山が育む清流長良川の恵みを学ぶWS/1DAY
日程:2017年11月中旬予定
場所:東京都港区内
Vol.5 郡上の魅力を伝える発表会/1DAY
日程:2018年2月上旬予定
場所:東京都港区内
問合わせ先:郡上市 市長公室企画課(担当:佐藤)
TEL:0575-67-1121
メールアドレス:kikaku@city.gujo.gifu.jp
(文・写真=上浦未来)
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