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Update on 2016.10.27

合言葉は「GO WILD!in みなかみ」 バイオリズムを整える自然豊かなフィールドへ

【連載】みなかみヘルスツーリズムプロジェクト

内なる野生を取り戻すという
新たなるチャレンジ


国内有数の温泉地であり、雄大な自然を生かしたアウトドア・アクティビティが盛んな群馬県みなかみ町。ここで今、あらゆる分野のプロが集まり、町の資源を人々の健康に生かす「ヘルスツーリズム」プロジェクトが進行中だ。

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ターゲットとするのは働き盛りの都市生活者。今回、都心で働くビジネスパーソンが数多く受講する「丸の内朝大学」と連携した取り組みが実施された。7?9月の3ヶ月間、丸の内朝大学でGo Wild in みなかみクラスを開講。同クラスについて、総合プロデューサーの木戸寛孝さんはこう話す。

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「身体の奥に脈打つ自然のリズムは体内時計や自律神経とも言われますが、都会で働く人の多くは、ストレスフルな生活によって正しいリズムを失いつつあります。人間が持つ”内なる野生”を取り戻すために、睡眠、食事、運動、暮らし方や働き方まで、あらゆる角度から学びを深めていきました」

全8回の講座を通して、自律神経をはじめとする身体の仕組みに目を向け、都会と自然をつなげることで内なる野生を取り戻し、新たなライフ&ワークスタイルの可能性を追求する。講座のメインイベントとなるみなかみ町でのフィールドワークが、8月27・28日に行われた。受講生たちが、圧倒的な自然の中でリラックス効果の高いアクティビティを体験。みなかみ町の魅力を身体の内側から満喫した。

現地コーディネートを担ったのは、みなかみ町体験旅行の福田一樹さん。「地域の観光に携わる中で、みなかみ町の一番の魅力は人だと思うようになった」という。

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「自然はもちろん自慢できますが、やっぱり一番の資源は人。みなかみ町を盛り上げようという意識の高いアウトドアガイドが多く、そのほとんどが移住者です。自然とともに、みなかみの魅力的な人たちにも出会ってほしいですね」(福田さん)



観光資源だけに頼らず、
ここでしか体験できないシーンをつくる


フィールドワーク1日目は、日本百名山の一つである谷川岳のウォーキングからスタート。切り立った岩壁が連続する往復約6.6kmの道のりを歩く。高い保水力を持つブナの森を中心に生物多様性が守られている谷川岳一帯。「実はブナの森が利根川の一番の水源になっているんです」と地元のベテランガイド、中島正二さんは話す。

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「200年生きているブナは年間約6トンの水を根元に貯めることができます。首都圏の飲料水は利根川が源ですが、その多くはこのブナの森から発してるんですよ」(中島さん)

目的地の一ノ倉沢に到着すると、この地点のマイナスイオン値を示す立て札には、東京・丸の内では約230個/?と言われる値が、ここでは15100個/?!「自然界でもマイナスイオン値がこれほど高いところは滅多にありません」と中島さん。谷川岳はそれほど人々を癒してくれる特別な場所なのだ。

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心地よい汗を流した後は、町内でオーガニック料理を提供するカフェスミカリビングによる「酵素玄米弁当」でランチタイム。栄養豊富な酵素玄米に合う献立で、身体にやさしいおかずがぎっしり。化学調味料など余計なものは使わず、素材の持ち味を生かして作られている。

「身体を動かすだけでなく、体内に入れる食べ物も大切です。フィールドワークの食事を通じて、本当に人間の身体によいものを感じてほしいですね」(木戸さん)

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夜は、みなかみ町の食材を外の空間で楽しむ「みなかみバーベキュー」を実施。発酵食品を中心とした「生きている食材」、地元の無農薬野菜などの「新鮮な食材」、栄養素を豊富に含む「心身を整える食材」という心身を健康にする3つの要素を踏まえた、バーベキューの理想の形を地元の協力を得ながら実現した。

「これは『みなかみ体験旅行』の考え方にも通じています。おいしいご飯は東京にある。それに対して、僕たちがテーマとしているのは、“おいしくご飯を食べる”こと。観光資源に頼らず、ここだからできるというシーンを作っていきたい。その一つの形が『みなかみバーベキュー』です」(福田さん)

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今回すべての食事のプロデュースを担当したのは、みなかみヘルスツーリズムの食の開発にも関わる料理研究家の舘野真知子さん、シェフの成田大治郎さん、パティシエの柘植孝之さん。3人はもともと発酵食品を研究する仲間同志とあって、息もぴったり。「発酵食品は腸の活動を活発にしますが、腸の働きは自律神経と密接につながっているんですよ」と舘野さん。例えば、抗酸化作用や酵素が含まれるオクラとモロヘイヤを使った「夏野菜の麹タルタルピリ辛ダレ」、地元農家が作った味噌と香味野菜を使った「みなかみの味噌と香味野菜のタレ」など、バーベキューソース一つとっても、素材や作り方にとことんこだわる。豊かな発想力から生まれた独創的な味わいに、受講生たちから歓声が上がっていた。

宿泊場所は周りが森に囲まれた「水上高原ホテル200」。ホテルのある標高約1000m地点は脳が休むのに最適な0.9気圧で、深く良質な睡眠が期待できる。さらにホテル内の温泉は源泉掛け流しと、リラックス環境は万全だ。食事と温泉を楽しんだ後は、国内外の一流アスリートのトレーナーとして活動する一原克裕さんによる、心地よい眠りを促す夜のストレッチ。身体をゆるめ、副交感神経を優位にした後は、スマートフォンの電源をオフにして眠りについた。



町にあるものを生かせば、
唯一無二の体験になる


起床後、目覚めの一杯は甘酒。甘酒には血糖値をゆるやかに上げる効果があり、飲むことで一日元気に活動するための準備を整える。

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その後は山々が見渡せる芝生の上で朝のストレッチ。清々しい空気の中で身体をゆっくりとほぐしていく。

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朝食は身体の臓器に負担をかけないおかゆ。付け合わせには、山の恵みを生かした料理が評判の旅館尚文で手間ひまかけて作られた味噌やきゃらぶきなどが並び、滋味深い味わいを楽しんだ。

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その後は、二日目のメインアクティビティ、利根川でのラフティングの体験。春から初夏にかけて豊富な流量に恵まれ、美しい水質を誇る利根川上流部は、全国有数のラフティングの地として知られる。受講生の池渕隆志さんは、「プールや海とも違う、唯一無二な体験でした。途中みんなで川に飛び込んだのですが、水に浸かることってほとんどないのでとても新鮮でした」と振り返った。

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アクティビティのもう一つが、地上10mのケヤキの木に登り、ハンモックに揺られながら、手作りのお茶とお菓子でカフェタイムを楽しむツリーイングだ。参加した受講生たちは「一本の木でこんな楽しみ方もできるんだ」と、その発想力やホスピタリティに脱帽のようす。

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最後の食事となる昼食は、地元の野菜をふんだんに使った「みなかみベジカレー」。スパイスや調味料はすべてオーガニックのもの、甘みには甘酒を使用。肉を一切使わずに作られた飽きのこないさっぱりとした味わいがクセになり、何度もおかわりする受講生も。

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さらに、地元産ヨーグルトを湧き水で割った乳酸菌飲料「ミナピス」や、湧き水を使ったフルーツ酵素たっぷりのジェラートも一緒に堪能した。

この昼食の準備をサポートしたのは、町内で欧風焼きカレーの店Asimaを営む稲田由美子さん。日頃から食の大切さをひしひしと感じているという。

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「地元メンバーとして、食の開発に参加しており、成田さん達が惜しげもなく細かくご指導くださり、とても貴重な体験でした。お店で提供しているのはいわゆるお母さんのカレーですが、今後はもっと健康食として見直していきたいですね」(稲田さん)

地元の人にとっても、健康な食を見つめ直すきっかけとなっているヘルスツーリズム。受講生たちはこの町にどんな印象を持ったのだろうか。クラスの学級委員である茂木健太さんと浅野有紀さんは、こう話してくれた。

「みなかみには大きな自然があると感じました。谷川岳のガイドさんのお話や、食事も一食ごとにストーリーがあって、心に響くことにたくさん出会えました。もっとみなかみを知りたくなりました」(茂木さん)

「みなかみには来たことがありましたが、地元の方が関わってくださったことで町への親近感がぐっと高まりました。自然の中を歩くだけでも他では得られない驚きがあって、この町の底知れぬ魅力を感じましたね」(浅野さん)

たくさんの出会いや体験を通して、心身ともにリフレッシュするとともに、「また訪れたい」という前向きな気持ちにつながったようだ。都会と自然を行き来して健康な自分を取り戻すーーそんな新たなライフスタイル実現の一歩となるかもしれない。



みなかみ町で生まれる
健康な未来のライフ&ワークスタイル


フィールドワークでは、受講生たちの気持ちにどんな変化が起こっているのかを可視化する実験的な試みも行われた。アスリート用に開発された体調管理クラウド「ONE TAP SPORTS」を使用し、体調の変化をモニタリング。アスリートが試合やトレーニングに役立てるもので、今回初めて一般の人向けに応用した。

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受講生は朝とアクティビティ後の1日2回、スマートフォンで今の気分を直感的に入力。メンタルを記録することは自分を客観視し、健康状態へのリテラシーを深めることにつながる。モニタリングしたONE TAP SPORTS開発者の宮田誠さんは、こう話す。

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「全体の傾向を見ると、1日目の朝はみなさん疲れていましたが、ウォーキング後は数値が良くなり、爽快感を得ています。二日目のラフティング後はさらに数値が素晴らしかったですね。体調管理の分野では、トップアスリートでの知見がビジネスパーソンに応用され、垣根が急激になくなっていく時代になると思います」(宮田さん)

「ヘルスツーリズム」をキーワードとした、こうした新しいチャレンジは今まさに始まったばかり。科学的根拠に基づいた健康維持・増進プログラムが実現し、都会で働く多くの人が心身のバランスを整えることができれば、ビジネスはどんどん動き出し、ライフスタイルは無理のない方向へ変わっていくだろう。ここから健康な未来のライフ&ワークスタイルが生まれる、そんな予感がしてならない。


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