青く澄んだ瀬戸内海の海に浮かぶ周防大島。
近年、若い世代の移住者が増えつつあるこの島で
豊かな地域資源を生かしながら活躍する、UIターン者を訪ねました。
この島には”ないもの”が多いからこそ チャレンジできる可能性があふれている
岩国錦帯橋空港から、車で国道188号線を南下すること45分ほど。
大島大橋のたもとに着くと、視界が広がった。
青く澄みわたる瀬戸内海に浮かぶ周防大島は、
瀬戸内海のなかでも淡路島、小豆島に次いで3番目の大きさだという。
島内にわたると、いたるところに柑橘類が植えられている。
温暖な気候を生かしてつくられる周防大島のみかんは、山口県内の生産量の約8割の占め、
品質の良さでも知られる。近隣では、大島は「みかんの島」とも呼ばれている。
そんな豊富な柑橘類を活用し、添加物を一切使用せず、果物そのもののおいしさを生かした
ジャムづくりを手がけるのが「瀬戸内ジャムズガーデン」の松嶋匡史さんだ。
じつは、松嶋さんも周防大島にIターンしたひとり。2007年に名古屋から家族で移り住み、現在ではカフェや果樹の栽培も手がけている。
近年、周防大島でも少子高齢化が進み、人口は1万8000人ほどに減った。
しかし、2012〜13年には2年連続で転入者数が転出者数を上まわった。
「農業や果樹園、漁業、養蜂、カフェ、ケータリング、教育など、最近では大島に移り住み、自ら起業する若いUIターン者が増えています。そんないきいきと活動する人たちを目にし、さらに移住希望者が増えるという、いい循環が生まれています」(松嶋さん)
UIターン者相互のつながりも生まれ、
若手農家を中心に「島のむらマルシェ」など、多くのイベントも開催されている。
マルシェの実行委員の一人であり、東京から移住した「中村農園」の中村明珍さんは、
「来場者は、島の人、島外の人が半々。さまざまな交流が、ここから生まれています」と語る。
漁師の仕事を手伝いながら、魚の移動販売を手がける「架け橋マーケット」の小野寺伸さんは、
「地元の魚を変える場所が少ないという声を受け、移動販売を始めました。
この島には、足りないものがたくさんある」と話す。
言い換えれば、周防大島には地域資源を生かしながら、新たな仕事を生み出せる可能性があるふれてるということだろう。
魅力的な島の人に会いに行こう!
養蜂を通じて、島の魅力を高めたい
「笠原養蜂場/笠原隆史さん、亜裕美さん」博多のホテルで調理師として働いていた隆史さん。食材の勉強を進めるなかで、国産蜂蜜の貴重さを知った。
両親が岩国で営む養蜂業を受け継ぎたいと考え、24歳でUターンを決意。1年間養蜂を学び、独立の地として周防大島を選んだ。
「自然の森が残り、柑橘類の栽培も盛んな大島は養蜂に最適な場所。
ぼくがめざすのは、地域のためになる養蜂業です。年中同じ場所に巣箱を置き、
ミツバチが好む木や花を植えるなど、里山づくりにも力を入れています」
こうして採れる蜂蜜は、季節や場所によって味や香りが変わる。隆史さんは何も加えず、そのままのおいしさを届けることを大切にしている。
この4月には、カフェを併設した新店舗も開店。
「自分たち一人一人が新たな挑戦を重ねていくことが、島の魅力を高めることにつながる。『自分も頑張ってみよう!』と移住する人が増えたら嬉しいですね」
この島にしかない、おいしいジャムを
「瀬戸内ジャムズガーデン/松嶋匡史さん」新婚旅行先のパリで入ったジャム専門店で、そのおいしさや種類の豊富さに衝撃を受け
ジャム屋を志した松嶋さん。
「原材料を新鮮なまま入手できる場所」を考え抜いた結果、
柑橘類の栽培が盛んな奥さんの地元・周防大島にたどり着いた。
「同じ果物でも収穫時期や生産者、畑などによって、味が少しずつ違う。
均一な味をめざすのではなく、それぞれの個性やおいしさを生かすことを大切にしています。
そのため、商品は160種類もあります(笑)」
生産者と直接かかわり、ジャムに最適な収穫時期や栽培方法を一緒に考え、自ら生産も行う。
「農家のみなさんとタッグを組みながら、島に経済的な循環と雇用を生み出していきたい。また、移住をめざす人と島の人をつなぐクッションのような役割も果たせたらと思っています」
周防大島生まれの逸品たち
「ジャム豆腐プリン」
周防大島で40年以上続く生田畳豆富店の添加物を使わない豆腐に、ジャムズガーデンのジャムを合わせたプリン。あっさりした豆腐とジャムの相性はバッチリ。ジャムは4〜5種類から選べる。
(90g 400円/瀬戸内ジャムズガーデン)
「オイルサーディン」
瀬戸内海でとれた新鮮なカタクチイワシをEXオリーブオイルと菜種油につけ込んだ商品。化学調味料、着色料、保存料は不使用。パスタやサラダなどの調理や、パンにそのままのせてもおいしい。(170g 750円/オイシーフーズ)
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「島暮ら荘」
島暮ら荘は、お試し移住のための住居。
古民家に暮らし島の人たちとふれ合いながら
島の生活を体感できる。
期間は、2〜4週間程度、
1週間単位で1万円から借りられます。
まさに、大人の下宿が味わえそうです。
文:杉山正博 写真:アラタケンジ
全文は本誌(vol.17 2016年6月号)に掲載
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