産地の魅力を発信する
関西から福井県に移住してきた20代の若者6名が、
福井県の産業を全国にかけて発信しようと活動中。
ものづくり職人とデザイナーが中心のプロジェクトチーム。
彼らが思い描く河和田の未来とは?
伝統の産地から新しいモノを発信する 「ものづくりの桃源郷」をめざして
とある金曜日の夕方。「TSUGI Lab」には、仕事を終えたメンバーが一人また一人と集まりはじめる。
ここは福井県鯖江市河和田にある「TSUGI」のアトリエ。
TSUGIとは、ものづくりやデザインに携わる若手6名によるプロジェクトチームで、
めがね職人、木工職人、デザイナー、NPO職員などさまざまな職種の面々が揃う。
「TSUGI」という名には4つの意味が込められている。
「次」の世代を担う彼らが土地の文化や技術を「継ぎ」、
新たな視点を「注ぎ」、人と人を「接ぐ」ということ。
土日や夜の時間を使って、イベントの企画やオリジナル商品の開発、
地元企業のブランディングなどを行ってきた。
もともと鯖江は、めがね、漆器、繊維と古くからものづくりのさかんな土地だった。
とくにめがねは、いまも国産の95%がこの地でつくられるほどの一大地場産業。
ところが長年大手メーカーの下請けを担ってきたことが、産地をすっかり黒子の役にしてしまった。
最近でこそ「鯖江のめがね」は知られるようになったものの、
漆器や繊維は高い技術をもちながら、一部の人にしか知られていない。
だからこそいま、産地からの発信が必要だと感じているのがTSUGIの新山直弘さん。
「ものをつくれば問屋さんが売ってくれたころと違って、
いまはつくること、デザインすること、伝えることすべてを
自分たちでやっていかなければいけない時代です。
TSUGIを通じて河和田や鯖江のモノを全国に伝えていきたい」
TSUGIのメンバーはなんと全員が関西からのIターン者。
そのほとんどが大学時代に河和田アートキャンプを体験している。
キャンプでは地元の職人から技術を学び、作品をつくる。
初めて目にする一流の技術、職人の生き方。
その時に彼らは、人生でめざすべき目標のようなものを見つけたのかもしれない。
だから数年後にここへ戻り、町の一員になることから始めたのだ。
ある者は見習いに、ある者は市役所の職員に。
「しっかり技術を身につけて、自分のものづくりができるようになりたい」と代表の永富三基さん。
最近では、TSUGIのまわりに地元の若手職人も集まり、河和田の未来を語り合う。
誰からともなく出てきた言葉が「ものづくりの桃源郷」。
職人にデザイナー、作家も集い、マーケットや展示会など、日々わくわくすることが起こる町。
未来の河和田が、もう、すぐそこに見えるようだった。
文:甲斐かおり 写真:出地瑠以
全文は、本誌(vol.11 2014年冬号)に掲載
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