よんでみる{ レポート }
Update on 2017.06.16

魅惑の混浴温泉…ディープな青森市内を巡って

【TURNSblog ヤノ行ってきました!】青森県青森市

こんにちは、TURNSのヤノです。

今回とりあげる地域は、本州の最北端、青森県。
青森県庁の担当者の方(以下、県庁さん)に同行していただき、青森県へ取材に行って来ました。
県庁さん同行ということで、たくさんの面白いスポットを案内していただきたいところですが、取材期間は1日だけ。青森県といっても色々な地域があって、エリアによって文化も異なり、とても1日では周り切れません。どうしたものかと県庁さんに相談すると、

「いっそのこと、青森駅周辺の青森市民が通うスポットはいかがでしょう?昔は夜行列車の終着駅だったり青函連絡船の乗り場などがあって賑わっていたエリアなんです。だから、今でも昔ながらのおもしろいスポットがたくさんあるんです」

ということで、観光ではなかなか行くことがないようなディープなスポットから、最近できた新しいスポットまで、意外と知らない青森市の“今”をご紹介します。

***

まずは、青森駅を出てまっすぐ、『アウガ新鮮市場』を訪ねます。


地下に広がるアウガ新鮮市場。昔ながらの市場と聞いていたのに、上に建っているのは“昔ながら”とは程遠い商業施設。本当に昔ながらの市場が広がっているのか、若干疑いつつも県庁さんについていきます。


「この商業施設、今は営業していなくて。でも、地下の市場はそのまま営業しています。実は、上の部分には市役所が入る予定なんですよ。」(県庁さん)
地下に市場が広がる青森市役所…。なんて便利な市役所なんでしょうか。

聞いていた通りの昔ながらの市場

よく見るとすごい安い…

お昼過ぎには売り切れる人気の筋子屋

中は、建物の外観からは想像もつかないような、昔ながらの市場が広がっていました。平日の朝ということもあり、比較的空いている市場の中。歩いていても、お店の人から「買っていきな!」など、あまり声をかけられません。

「あんまり声かけられないですよね。青森県民は、おくゆかしい県民性なんですよ。買い物しやすいでしょう?」(県庁さん)

買い物する人はもちろん、ご飯を食べながらくつろぐ人、観光客など、地元の人から外の人まで様々な人が訪れていました。

豪華な朝ごはん

次の目的地に向かう途中、青森県らしいりんごに関する面白い豆知識を県庁さんから教えていただきました。青森県のりんごの収穫は8月〜11月。そして取材に行ったのが5月中旬。しかし、店頭には新鮮なりんごがたくさん並んでいます。

さて、なぜでしょう。

実は…今お店に並んでいるりんごは去年収穫したりんごだそうです。なぜ収穫してから半年以上経ったりんごが新鮮なまま店頭に並ぶかと言うと、CA貯蔵という保存方法で保管しているため、収穫してから半年近く経っても鮮度が落ちていないんだとか。

ちなみに青森県民にとって、りんごは知り合いの農家から貰ったりすることが多いので、買わずに貰うもの。という意識が一部の青森県民にはあるそうです。
※CA貯蔵とは…倉庫内の空気中の酸素を減らして二酸化炭素をふやし青果物の呼吸を抑えて…、詳しくは調べてみてください。


***

青森県といえば、ねぶた祭り。
続いて向かったのが、ねぶた祭りについて紹介している施設「ワ・ラッセ」です。


ところで、青森県には「ねぶた祭り」と「ねぷた祭り」があるということをご存知でしょうか。恥ずかしながら、この事実を取材を通して初めて知ったので、改めてねぶたの歴史からその違いまで勉強してきました。

ねぶた祭りは、日本の祭りでは珍しく寺社と結びついた祭礼ではないそう。そのため、その起源についても諸説あり、中でも有力な説が七夕の日を中心に行われていた「眠り流し」の行事が発展したとするもの。「眠り流し」とは「ねむけ」を追い払う行事で、「ねぶた」は「眠り」が訛った語とも言われているそうです。

ねぶたとねぷたの違いについて。
簡単にいうと、地域によって呼び名が変わるんだそう。弘前などの方では、「ねぷた」で、青森市などでは「ねぶた」ということです。大迫力なねぶたですが、詳細な設計図などはなく、平面の絵から立体的なねぶたを作るそうです。昔は竹ひごで細部を作り込んでいたそうですが、近年は針金を使うことでさらに細かい表現ができるようになったようです。

初の女性ねぶた師が誕生したり、「スターウォーズ」や「らき☆すた」とコラボしたねぶたが制作されたりと、昔の伝統と今の文化がうまく融合しているのが現代のねぶたの姿でした。

***


ここは、知る人ぞ知る乾物屋「あきやま」
「乾いてない、かたくない、臭くない、香りがある」が、このお店の乾物の特徴であり、店主のこだわり。乾いてないのに乾物?と疑問に思うかもしれませんが、安心してください。乾いてないのに乾物なんです。美味しい乾物はもちろん、創業42年の「あきやま」が地域で長く愛される理由の一つが、とにかく店主のキャラが濃いこと。
先ほど、青森県民は奥ゆかしいと説明したんですが、ここの店主は例外ですね。



こちらが「あきやま」の店主である秋山義隆さん。
人生でここまで乾物について語っていただいたのも初めてでしたが、とにかく乾物への愛に溢れた優しい秋山さん。

「買っても買わなくてもいいから、試食してみて!」

この一言を皮切りに、試食をどんどん出してくれました。





「どう?乾いてない、かたくない、臭くない、香りがあるでしょ。すぐに飲み込まないで、口の中で噛みながらダシを味わう感じで!」

ここの乾物、本当に乾いてないんです。乾物を食べて初めて新鮮さを感じました。とにかくどの乾物も美味しい!
「店を始めて42年経ちますけど、まだまだ乾物について知りたいことがたくさんあるんです」

42年間乾物屋として働く秋山さんの飽くなき探究心に心打たれていると、突然お店の外に出て思いの丈を歌い始めました。


「なんだか、身内の叔父がはしゃいでるみたいでちょっと恥ずかしいですね」(県庁さん)

***

美味しい乾物を食べた後は、美味しいコーヒーを飲みにいきます。
カフェ「UMINECO」を営むのが鈴木さんご夫婦。子供が産まれるタイミングで栃木県から青森市内に移住してきたそう。



大きな窓で開放感がある店内は、友人に手伝ってもらいながら自分たちでリノベーションして完成させたという素敵な内装。最初は椅子を置かない予定だったため、座るとちょっと高めのカウンターテーブル。

「なんだか子供が大人のテーブルに座っているような感じになっちゃって」(鈴木さん)


コーヒーとともに食べるスコーンは最高でした。

八戸市がウミネコの繁殖地として有名な地域ということもあり、お店の名前をみた青森市民の方から八戸から移り住んで来たと勘違いされることが多々あったそうです。そんな移住当初は地域に馴染めるか不安だったという鈴木さんですが、お店に来てくださるお客さんが気にかけてくれて、海に一緒に遊びに行ったりと徐々に青森市内での暮らしに馴染んできたと言います。今では、青森市内の生活環境や過ごしやすい気候にも大満足です、とのことです。

普段は、お客さまにゆっくりしてもらいたいからあんまり話しかけないんです、という鈴木さんですが、ついつい美味しいコーヒーと素敵な人柄に話し込んで長居してしまいました。

その後は、かの有名な三内丸山遺跡を周り、青森県立美術館をみてきました。
短時間の間に、縄文時代の遺跡から現代アートとその文化のギャップに頭の中はパンク寸前です。


***

帰りの新幹線の時間を考えると、次に行くところが最後です。

「じゃあ、最後は…ゆくっり温泉でも行きましょうか」(県庁さん)

実は青森県、温泉の湧水量が全国4位の温泉県なんです。市内のいたるところに温泉施設があります。

どのような温泉に行くのか尋ねると、
なんと…混浴温泉!

人生初の混浴温泉に心踊りながら、山道を車で進むこと数十分。
5月にもかかわらず、路肩には雪が残っていました。さすが本州最北、青森県です。


そうこうしているうちに、温泉に到着。
青森県の山奥にある秘湯「酸ヶ湯」は、なんと300年もの歴史を有する昔ながらの温泉宿。昔、鹿が傷を癒しているところを杣人(木こりのことです)が発見したという伝説を持っています。



いざ入浴です。



「おじさんしかいなくないですか?」
「おじさんしかいないですね…」(県庁さん)

残念ながら、夢に見た混浴は男性陣が占拠しており、男風呂で終わってしまいました。しかし、大浴場の内装には感動しました。中は160畳ほどの広さで、壁から天井まで全てがヒバ作り。昔ながらの姿にただただ目を奪われてしまいました。

写真でその内装をお見せしたいところなんですが、残念ながら浴場内は撮影禁止…(当たり前ですね)
ということで、記憶をたどったスケッチでなんとか内装を再現してみたのでご覧ください。

天井も高く開放的な浴場でした。

実際にはいなかったですが、赤い人がいるところが女性の出入り口付近。仕切りがあり、見えないように配慮されています。湯船も半分男のエリア、半分女のエリア、というように分かれていました。
熱すぎない湯加減に長湯してしまいましたが、一日の疲れを癒してスッキリすることができました。

お風呂上がりにゆっくりしていると…

「携帯がない…」(県庁さん)

携帯をなくさないようにと、温泉に入る時貴重品ロッカーにわざわざ預けた県庁さんは、そのロッカーの中に携帯を忘れるというなんとも貴重品ロッカー泣かせな忘れ物を最後に披露してくれました。

携帯事件は無事解決し、取材のシメにそばをいただいたのですが、食べてびっくり。
箸で持てば簡単に切れるほど麺が柔らかいんです。青森県でそばというと、柔らかいものが定番だそうで、湯がいてから一晩おいて、わざわざ柔らかくしてから食べる家庭もあるとか。


このようにそば一つ取っても文化の違いを感じることができました。




県庁さんに案内していただいた青森市内は、市内だけしか周っていないにもかかわらずとても濃いディープな場所がたくさんありました。
昔ながらの街並みと、近代的な文化が混ざって特有の文化圏を築き上げており、まちに暮らすひとにも外から訪れる人にとっても、とても魅力的な地域でした。

今回は1日だけでしたが、ゆっくり時間をかけて青森を周ってみたらもっと面白いスポットをたくさん見つけられそうです。
次は、ねぶた祭り開催の時期に訪れたいと思います。

(写真・イラスト・文/矢野航)

  • Share on
このページのTopへ