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【求人】喜多方の自然が生み出す天然の食器。会津喜多方漆器を継ぐ
福島県喜多方市 地域おこし協力隊

日本三大漆器のひとつに数えられる会津漆器。

会津の地に本格的に漆工芸が根付いたのは、天正18(1590)年のこと。豊臣秀吉の命を受けて会津の領主となった蒲生氏郷公が、産業として漆工芸を奨励したことによるとされています。

氏郷公は前領地であった近江国(現在の滋賀県)日野から木地師(きじし)や塗師(ぬりし)を会津に呼び寄せ、先端技術を伝授させます。これによって会津塗の技術は飛躍的に進歩を遂げ、漆の栽培から漆塗りや模様をほどこす加飾(かしょく)までを一貫して手がける一大産地に発展していきました。


漆の材料を採取する樹々

会津地方北西部に位置し、豊富な森林資源を有する喜多方市では、会津若松市で生産される漆器に対し、「北方椀」と呼ばれるお椀類、いわゆる「丸物」を中心とした、生活に根付いた漆器の生産がたいへん盛んでした。
しかし、生活様式の変化に伴い、漆器職人を目指す人は年々減少。現在では、喜多方市内で塗職人として活動をする方は4名となってしまいました。

後継者が不足している現状を変えるべく、今回、地域おこし協力隊として会津喜多方漆器を学び、会津塗の未来を築いていける方を募集します。協力隊の任期終了後は、会津喜多方漆器の職人として従事や、独立することを目標にします。「会津塗」そのものの未来を担っていくため、販路拡大やPR、新商品の開発など、製作だけでなく、様々な働き方の可能性があります。


会津塗職人 秋葉良栄(よしえい)さん

喜多方市で半世紀以上にわたって塗職人をつとめてきた塗り子(塗り師)の秋葉さんにお話を伺いました。

秋葉さんは、塗りの作業だけでなく、漆の木の栽培からほとんどの工程を手掛けています。
「漆以外の素材は一切使わない。少しでも漆以外のものを使ってしまうと、それは漆器とは呼べず『雑貨』になってしまう。使うのは漆のみ、そして手作業で仕上げるんだ」

「1回の漆掻きで1本の木から採れる漆の量は平均7g、最大でも20g程度。年間で1本の木から採取できる量は200g程度。一人の掻き子が手掛けられるのは、年間15本程度が限度だな。だからこそ俺は、自分の仕事場に行って、一滴たりとも漆を無駄にはしない。勿体無くてね」

漆の液を大切に使い、丁寧に塗っていきます。

国外産の漆と値段を比べると、5倍もの差があります。そうまでして地元産にこだわる理由は、品質です。塗っていく際の伸びから、立ち上がってくるツヤまで、全体の仕上がりが全く異なるといいます。

自宅兼工房で丁寧に仕事を施す秋葉さん

かつては結婚式など冠婚葬祭の場面で欠かすことのない存在だった漆器。丸物をつくる会津喜多方漆器は会津地方にとどまらず、全国各地に高品質な漆器を提供していました。しかし、近代に入り日本人の生活様式が変化していくとともに、会津塗は岐路に立つことになります。

「かつては結婚式を自宅で行なう家が多かったでしょう。出席者みんなの分の漆器を納めるわけさ。そうした背景もあって、椀物の生産がメインだったけれど、結婚式の西洋化、人口の減少などによって、昭和中期以降からは実に様々な商品を作るようになったね。お椀だけ作っていればいい…そんなことを言っていては、食べていけないわけだよ」

漆器のニーズが減少する中にあっても、新しい商品制作に取り組むなど「ものづくりも時代に合わせていかなければならない」との姿勢で塗り子を続けてきました。

見た目の美しさだけでなく、生活用具としての機能性を備えていることも漆器の魅力です。

喜多方市内の小中学校、こども園などでは、給食用の食器として採用されるなど、次世代を担う若い世代にも伝えています。

写真提供:喜多方市

「漆を何度も塗ることは、耐久性を持たせることにもなるんだ。子供たちが学校給食でガチャガチャと使うでしょう。そんなことをしても全然大丈夫。長持ちするんだよ。しかも、使えば使うほどツヤがでてくるからね」

たとえ傷がついてもまた塗り直せば繰り返し使え、長い年月の使用に耐えられるのも、漆の魅力です。

地域おこし協力隊員としてイチから漆器塗りの技術を習得していくことの可能性についても伺いました。

「さすがに(地域おこし協力隊の任期である)3年間ですべての工程を覚えるというのは無理だな(笑)でも、腕を磨けば、やがてこういうこともできるようになるよ」

そう言って見せてくれたのが、波打つような模様が美しい丸物漆器。塗り方や加減を調節することにより、まるで絵のような模様を施すことができるといいます。

 

時代とともに歩む、会津喜多方漆器の廃れない魅力

木之本漆器店主の遠藤久美さん。自身も蒔絵職人として活動する

続いて、会津漆器を取り扱う木之本漆器店を訪れました。会津漆器の魅力のひとつである、美しい蒔絵を施した商品を数多く取り扱っています。
ガラス細工や会津地方の名産品でもある桐を使った桐の粉人形など、郷土の素材を使った商品も取り揃えるお店です。

なかでも目を惹くのが、美しい蒔絵が施された漆器です。椀物、箸などにも繊細な蒔絵細工が施されています。これらは、同店に所属する職人さんたちの手仕事によるもの。

「漆器を生活の中で使う機会はほとんどなくなってきています。(体験学習などで)お子さんなどに話を聞くと、まず、そもそも漆器というものを知らないお子さんが多いんです。お椀もマグカップしか使ったことがないという子がほとんど。知っていただく機会をなるべく増やしていきたいと考えています」

店頭販売だけでなく、東京のデパートなどで開催されるイベントなどに積極的に出店し、都市部での認知を広める活動も続けています。

同店には、若い蒔絵職人も在籍しています。

「蒔絵を施す際にも、あえて昔ながらの伝統的な意匠(デザイン)をほどこす場合があります。逆にその方が、若い方の目には新鮮に映ることもあるんですね。必ずしも時代のトレンドに合わせた模様に更新されていくのだけなく、古くからある模様も必要とされる…そういうところに、面白さを感じます」

蒔絵のほかにも、細かい刃物で文様を彫り、できた溝に金箔を刷り込む「沈金」と呼ばれる技法や、花漆を塗り削らずに塗りをほどこす「花塗」などの技法が数多く存在するのが会津漆器の特徴です。

喜多方では、木地、塗り、加飾を分業制でまかなってきました。しかし、塗り子が減少した今、その伝統的な生産体制も危機を迎えようとしています。
今学校で漆器を使っている子どもたちがいつか大人になり、買い求めようとした時、「作っていない!」という状況も十分に起こり得るのです。


会津喜多方漆器商工協同組合 理事長の佐藤多一さん(写真中央)

そうした状況の中、会津喜多方漆器商工協同組合理事長の佐藤多一さんはこう話します。

「会津漆器を未来へと残していくことは、組合員みんなで一丸となって一生懸命考えています。当然ながら若い方への技術継承は不可欠です。それができなければ無くなってしまう。ずっと続いてきた産業なわけですから、絶やしたくないという思いは強い。まずは喜多方まで足を運んでもらい、少しでも興味を持ってもらえたらと願っています」。

400年以上もの間、大切に受け継がれてきた会津喜多方漆器。その存続の危機を打開できるのは、もしかしたらこれを読んでいるあなたかもしれません。工芸品の制作経験がなくても構いません。この技術を守りたい・なんとかしたい、そんな気持ちが大切です。

伝統を継ぎながらも、自分のアイデアで新しい価値を築き上げていく。
そんな誇り高い仕事に、喜多方でチャレンジしてみませんか?

 

(文:竹谷純平 写真:木下真理子)

 

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